「ウィッチンケア」創刊号からの寄稿者である多田洋一さん(←私/発行人)は...って、今号でもまた「だれか紹介文を書いてくれないかな」などと思っているうちに時が流れ自分の順番が回ってきてしまいましたので、粛々と進めます。本作を書く動機、みたいな要素はふたつありました。ひとつは自分にとって縁の浅くない町・東京都渋谷区西原/上原あたりの個人的な記憶を(忘却する前に)書いておきたかったこと。もうひとつは、まあ、煎じ詰めれば噂話について。作中に出てくる「山崎さんの事務所」というのは、1988年頃に私が借りていたワンルーム・マンションからの発想/創作。私は20代半ば、社会不適合で勤め先を辞めてプーになっちゃいまして、実家にもだんだん居辛くなり、えいやと一念発起して、代々木上原駅東口を出てすぐのマンションの一室(当時の家賃は9万円)を仕事場とし、椅子と机とソファーベッド、リコーのコピー/FAX複合機(リース代は月2万)、SONYの留守番電話とワープロ(PRODUCE PJ-100)を揃えてフリーランス業を始めたのです。当初はもらえた仕事ならなんでも、という感じだったので...煙草にまつわる逸話はほぼ事実で(実際の打ち合わせは広告代理店内)、のちにナントカ・ピアニッシモという名称で販売されていたようです。制服のポケットに入れてても目立たない、薄い箱で。

発行日:2025年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:276ページ/定価(本体2,000円+税)
ISBN:978-4-86538-173-3 C0095 ¥2000E
この手のことに僕が最初に気付いたのは、写真家の荒木経惟に対して執行された時だったように記憶している。元ファッションモデルの女性が自身の被害をネット上で語って……じつは、僕は以前、アラーキーとある女優の対談を短い雑誌記事にまとめたことがあって──その際には〝ほんとに規格外の人物なんだなぁ〞という印象があったのだけれども──トーク中にアラーキーが女優に対して「オシモも良さそうだね」と屈託のない笑顔で言って、でも女優が冗談っぽく受け流してくれたので、和やかなままその対談は終わった。
録音を聴き返してみて「オシモ」こそこの人らしき語感だ、と強い印象が残ったので、そのままテキストにして編集者に任せたが、書店に並んだ掲載誌に、その言葉は見当たらなかった。
~ウィッチンケア第15号掲載〈山崎さんの殺人事件〉より引用~
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