今回が小誌への初寄稿となったふくだりょうこさん、noteでは“主に女性向け恋愛シミュレーションゲームのシナリオを書いているフリーライター”と自己紹介をしていますが、その“主”...以外でも広いフィールドでご活躍なさっていまして、ネットには対談構成や書評、コラムなどもたくさん。なかでも、NovelJam2018に参加して執筆した『REcycleKiDs』(リサイクル・キッズ)は同イベントでグランプリを受賞し、電子書籍&オーディオブック化。私はこの作品を拝読して、ふくださんに寄稿依頼しました。そうだ、NovelJamの主宰者でHON.jpの鷹野凌さん、そして『REcycleKiDs』を発行したBCCKSの山本祐子さんは昨年6月の小誌イベント〈ウィッチンケアのM&Lな夕べ〉にもいらっしゃってくださって、あのときはまだふくださんと知り合っていませんでしたが、私のようなアナクロ紙媒体発行人が、ふくださんを介して出版の最先端ともいえる活動をなさっているお二人とも関われたこと、光栄です!
さて、寄稿作の〈舌を溶かす〉。恋愛にまつわるさまざまな物語を紡いできたふくださんが、紙媒体の制約(字数制限etc.)を楽しみながらストーリーを磨いて「センターを狙ってきた」感のある一篇です。27歳の彩香と、30歳の翔太。この二人がラーメン屋に入って生ビール、さらに熱々の餃子が運ばれてくるまでのお話なんだけれど、しかしこの短い時間に、お互いの人生が凝縮されていています。付き合って6年目。二人のいまの状態は「最後に好きだのなんだのと愛を囁かれたのはいつだったか。昔みたいに足を絡め合いながら昼まで眠ることも減った」などと、さり気なくエロく語られているくらいで、あとは(物語上の)男と女の心理戦。唐突に座敷童が登場したりして、思わぬ展開へと迂回したりもするのですが...さて結末は、ぜひ小誌を手にとってお楽しみください!
彩香さん目線でしか語られていないので(つまり、彩香さんの語りに肩入れして読むことになるので)、翔太さんがちょっと不思議な存在というか、優柔不断というか...でも、そこがまた恋愛っぽくてぐっときました。まあいろいろあるでしょうけれど、相手にsomethingを感じなくなったら、色恋は終わり!? そして、熱い餃子を呑み込んだあと、彩香さんがどんな言葉を口にしたのか、個人的には、このさいだからちょっとこらしめのお仕置きをしてから、次の段階に進んでほしいなと思ったのでした。
いつ指輪の入った小箱が出てくるのだろう、それとも花束かしら。私が好きなのはチューリップなんだけど、今日はバラのほうがいい。あれはやめてほしい、フラッシュモブというやつ。絶対にプロポーズを受けなきゃいけない雰囲気にされるのは本意じゃないし、目立ちたいわけでもないの。
そんな妄想を膨らませていたら、いつの間にかレストランの外にいた。そして、ワインのボトルを空けてほろ酔いの彼は言葉少なにラーメン屋に入って行った。私はそんな彼の前に、一張羅のワンピースを着て座っている、今。
「私、おなかいっぱいなんだけど」
どうにかそう告げたものの、彼は分かってると頷きながら、餃子を二皿と生ビールを二つ頼んだ。全然、分かっていない。
ウィッチンケア第10号〈舌を溶かす〉(P093〜P098)より引用
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Vol.14 Coming! 20240401
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