前回寄稿作では大学生男子が主人公だった谷亜ヒロコさん。今回の主人公はタレント事務所所属女子・20歳。作品タイトルは「よくテレビに出ていた私がAV女優になった理由」。もう、週刊誌の見出しみたいな破壊力ですから、そりゃ「理由知りたい」ってなります。このタイトルに続けて<小向美奈子衝撃の告白!>とかきても...と書いていて、小向さん。。。21世紀になったばかりの頃、偶然見てたテレビで名前覚えました。町歩き番組みたいなのでお笑いさんと一緒にアイスクリームかなんか食べてうろうろしてただけでしたがこれでサマになっちゃうのかとびっくりした記憶。
作品は「私」のモノローグで語られていまして、全体を通して微妙にもの悲しくて、そこがおかしい(思わず笑ってしまう)。「私」が真剣で必死な感じは痛々しいほど伝わってくるのですが、空回りしているというか、「そもそもさーっ!」と気づかせてあげたいというか。冒頭でいきなり待ち合わせの場所(飯田橋東口)を間違えているエピソードが出てきますが、万事こんな調子で人生を突っ走ってます、「私」。<なんかうまく行かない。タレントとしてテレビに出ていた時から感じていた>...そりゃ、そうだろうなぁ。
もし三人称で書き直したとすると、「私」の魅力はすっかり薄まって、世間知らずの女の子が〝大人〟に翻弄されるだけの話になってしまうかもしれません。しかしこの作品は剛速球で一人称。目に映る景色も聞こえる言葉も「私」というフィルターを通してのもの。鈴木さんが褒めてくれたから<調子に乗って、ライターの名刺まで作った>のにうまくいかない。カメラマンに「カワイイ、カワイイよ〜。もうちょっとだけ胸見せてみよっか」とか言われて<ほとんど水着を取ってGカップ手ブラの状態>になったのに<20歳超えたらぱたっと仕事がなくなった>...そりゃ、そうだろうなぁ。
...なんて、「私」に対して意地悪なこと書いていてますが、でもこの人の抱えているイライラ感、わからないわけではないんです。「あなたはなにがしたいの?」「あなたはなにが好きなの?」「あなたはこれからどうするつもり?」みたいなことを人はごく当たり前のように尋ねたり尋ねられたりしていますが、極私的には「べつになんにもしたくないし世の中キライだし今後もどうだっていいけどとにかく私の思い通りになればいいだけで邪魔するやつは憎い」みたいな発想、感情がマイナススパイラルしている時期には全然普通だと思うし〜。谷亜さんが「私」を愛ある描き方しているところが、私はおもしろかったです。とくに最後の<東京に埋もれていくんだったら〜>のくだりは、ちょっと泣けた。
鈴木さんは、私がアメブロに書いた美容の記事を褒めてくれた。「こういうのって女性向けサイトで書いたら、ギャラもらえるよ」というから、調子に乗って、ライターの名刺まで作った。
さらに今日は、この前買ったばかりのブレザーに張り切って袖を通してきた。OLっぽいブランドだと思って敬遠していたNOLLEY'S に入って初めて買ったブレザー。これを着たらなんだかとてもまともな人間になった気がしてうれしかった。そうだ、私は今までまともじゃなかったよ。おっぱいの先だけがかろうじて出ない写真を撮って、水着でテレビに出る。多分、写真の中には、ぽろりしているものもあるだろう。いつもカメラマンに「カワイイ、カワイイよ〜。もうちょっとだけ胸見せてみよっか」とか言われて……ほとんど水着を取ってGカップ手ブラの状態で撮った写真がたくさんある。すっぽんぽんで、椅子に座って、椅子の背でおっぱいと局部を隠している写真もある。絶対乳首が見えてる写真だってあるはずだ。これだけやっても、20歳超えたらぱたっと仕事がなくなった。
ウィッチンケア第6号「よくテレビに出ていた私がAV女優になった理由」(P076〜P079)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/115274087373/6-2015-4-1
cf.
「今どきのオトコノコ」
Vol.14 Coming! 20240401
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