2024/09/30

「6」と「12」と期間限定と

 2024年のLong Hot Summerはホント身体に堪えましたが、それでも9月末、ようやく朝晩は秋っぽくなってきました。おかげさまで4月1日に発行した「ウィッチンケア」第14号の、取次会社様との精算も終わりまして...そろそろ先へ進むための準備に取りかかろうとしています。

まずはフィジカルな「本づくり」の基礎/土台まわりと、ビジュアルに関わる諸々から。そして、いくつか思案している「新しい試み」の具現化にも、手を付けていこうと考えています。



文芸創作誌「ウィッチンケア」はお取り扱いいただいているリアル&ネット書店で入手可能ですが、じつはSTORESにも発行人(多田洋一)が主宰する直販店(Witchenkare STORE)があり、毎年、新しい号は発行の半年後にこちらにもエントリー、バックナンバーと併せて販売しております。


                                             https://yoichi041.stores.jp/


現時点での最新号(第14号)も明日(10月1日)から販売。今年はこの機に合わせて、期間限定のバックナンバー・セール(20%OFF/在庫有りのみ)もおこなってみようと思います。


発行人という立場上、「とくにどの1冊(や作品)がお薦め!」みたいなことは言い(え)ませんが、2010年の創刊以来、個人的にちょっと心に引っ掛かっている「号」というのがありまして、それがタイトルにも記した「第6号」(2015年)と「第12号」(2022年)です。





・第6号は、主宰者としてわりと大きな決断をした1冊でした。最大の特徴は、第2号〜第5号まで表紙に掲げてきた寄稿者名をなくしたこと。このスタイルは以後も踏襲していて、いまでも「それでよかった」と考えていますが、発行当時は、まあ、多少混乱(というか「たいへんだった」w)しました。じつはこの号、紙質も「真っ白→ややクリームがかっている」/初寄稿の方が多い、等々、先を見据えてのチャレンジングな1冊だったんですよね。ここ数年で小誌を知った方などにも、ぜひ読んでいただきたいです。


・第12号は、長かったコロナ禍を抜け出して、ようやく関係者とのリアルな打ち合わせなども自由にできるようになった1冊。現在ADを務めてくださっているデザイナー・太田明日香さんとは、この号が初仕事。そして寄稿者数がついに40名を超えたり、とヴォリューム/ヴァラエティ感も満載。誌面では3段組のレイアウトも試してみたりして...と新境地を目指してみたのですが、mmm、いま振り返ると、本号のポテンシャルをもう少しうまく万人に伝える方法があったのではないか、と思ったりも(実際、次号からはSNSでの発信方法や書店営業を少し変えたりしているのです)。


ということで、明日10月1日から10月10日まで、Witchenkare STOREにて期間限定のSALEを開催します。あっ、BNの寄稿者などについては公式SNSの他、Wikipedeiaでも確認できますので、どうぞよろしくお願い致します。


以下、一部過去記事との重複になりますが、「6」と「12」の概要を。


Witchenkare vol.6




発行日:2015年4月1日
出版者(not社):yoichijerry(よいちじぇりー)
ISBN:978-4865380309
本体:1000円+税











【寄稿者/掲載作品】

002……【目次

004……仲俣暁生1985年のセンチメンタル・ジャーニー
008……西森路代壁ドンの形骸と本質
014……開沼 博ゼロ年代に見てきた風景 パート2
020……姫乃たま21才
026……武田砂鉄キレなかったけど、キレたかもしれなかった
032……宇田智子富士山
040……吉田亮人写真で食っていくということ
046……野村佑香今日もどこかの空の下
052……大澤 聡流れさる批評たち──リサイクル編
062……若杉 実マイ・ブラザー・アンド・シンガー
070……中野 純つぶやかなかったこと
076……谷亜ヒロコよくテレビに出ていた私がAV女優になった理由
080……東間 嶺ウィー・アー・ピーピング
086……小川たまか南の島のカップル
092……西牟田 靖「報い」
098……久保憲司スキゾマニア
106……藤森陽子バクが夢みた。
112……井上健一郎路地という都市の余白
116……我妻俊樹イルミネ
120……木村重樹40年後の〝家出娘たち〟
126……諸星久美アンバランス
132……大西寿男before ──冷麺屋の夜
142……辻本 力雑聴生活
146……友田 聡中国「端午節」の思い出
150……出門みずよ苦界前
154……荒木優太人間の屑、テクストの屑
160……山田 慎パンと音楽と京都はかく語りき
164……三浦恵美子子供部屋の異生物たち
172……柳瀬博一ぼくの「がっこう」小網代の谷
182……長谷川町蔵サードウェイブ
190……円堂都司昭『漂流教室』の未来と過去
196……かとうちあきのようなものの実践所「お店のようなもの」
200……須川善行死者と語らう悪徳について 間章『時代の未明から来たるべきものへ』「編集ノート」へのあとがき
206……後藤ひかり南極の石を買った日
210……武田 徹『末期の眼』から生まれる言葉
216……美馬亜貴子二十一世紀鋼鉄の女
222……多田洋一幻アルバム
234……【参加者のプロフィール】

写真:徳吉久
アートディレクション:吉永昌生
校正:大西寿男
編集/発行:多田洋一




Witchenkare VOL.12




発行日:2022年4月1日

出版者(not社):yoichijerry(よいちじぇりー)

A5 判:252ページ/定価(本体1,500円+税)

ISBN::978-4-86538-128-3 C0095 ¥1500E
















【寄稿者/掲載作品】

006……トミヤマユキコわたしはそろそろスピりたい

010……矢野利裕時代遅れの自意識

016……ふくだりょうこ死なない選択をした僕

020……武田徹レベッカに魅せられて

024……長井優希乃牛の背を駆け渡る

030……カツセマサヒコ復路、もしくは、ドライブ・ユア・カー

040……インベカヲリ★希死念慮と健康生活

044……木村重樹2021年「まぼろし博覧会」への旅──鵜野義嗣、青山正明、村崎百郎

050……姫乃たまクランベリージュース

054……ジェレミー・ウールズィーPMCの小史

058……すずめ園人間生活準備中

062……武田砂鉄クリーク・ホールディングス 漆原良彦CEOインタビュー

068……青柳菜摘ゴーストブックショップ

072……長谷川町蔵Bon Voyage

080……スイスイわたしはその髪を褒めれない

086……仲俣暁生青猫

092……蜂本みさイネ科の地上絵

098……柳瀬博一2つの本屋さんがある2つの街の小さなお話

104……野村佑香渦中のマザー

108……長谷川裕ふれあいの街 しんまち

114……美馬亜貴子きょうのおしごと

120……多田洋一織田と源

132……はましゃか穴喰い男

140……武藤充日向武藤家の話

144……宇野津暢子秋田さんのドタバタ選挙戦

148……柴那典6G呪術飛蝗

154……山本莉会ゴーバックアゲイン龍之介

160……宮崎智之オーバー・ビューティフル

168……久山めぐみ壁の傍

172……吉田亮人撮ることも書くことも

176……藤森陽子おはぎとあんことジェンダーフリー

180……中野純完全に事切れる前にアリに群がられるのはイヤ

186……かとうちあき鼻セレブ

192……荻原魚雷将棋とわたし

196……東間嶺「わたしのわたしのわたしの、あなた」

202……我妻俊樹雲の動物園

208……久保憲司マスク

216……ナカムラクニオ妄想インタビュー 岡倉天心との対話──「茶の湯」という聖なる儀式について

220……清水伸宏つながりの先には

228……朝井麻由美ある春の日記

232……谷亜ヒロコテレビくんありがとうさようなら

236……小川たまか女優じゃない人生を生きている

246……参加者のVOICE

251……バックナンバー紹介


編集/発行:多田洋一

写真:白山 静 Instagram:https://www.instagram.com/oriondayo_/

Art Direction & Design:太田明日



2024/06/01

ウィッチンケア第14号のまとめ



 ウィッチンケア第14号(Witchenkare VOL.14)
発行日:2024年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりー/発行人の屋号)
A5 判:248ページ/定価(本体1,800円+税)
ISBN::978-4-86538-161-0  C0095 ¥1800E

編集/発行:多田洋一
写真:張 子璇(Zhang Zixuan/Kosen)
Art Direction/Design:太田明日香
取次:株式会社JRC(人文・社会科学書流通センター)
印刷/製本:株式会社シナノパブリッシングプレス


【寄稿者/掲載作品】〜「もくじ」より〜

008 谷亜ヒロコフィジカルなき今
012 鶴見 済植物実験をしていた頃
018 古賀及子えり子さんの失踪
024 木村重樹〝ほどほど〟のススメ/あるいは/続「本当は優しい鬼畜系」の話
030 オルタナ旧市街長い長いお医者さんの話
034 我妻俊樹ホラーナ
040 トミヤマユキコ人体実験み
044 九龍ジョーウルフ・オブ・丸の内ストリート
052 内山結愛散歩、あるいはラジオ
056 長谷川町蔵チーズバーガー・イン・パラダイス
062 小川たまか桐島聡のPERFECT DAYS
068 コメカ工場
074 星野文月友だちの尻尾
080 武田砂鉄クリーク・ホールディングス 漆原良彦CEOインタビュー
086 絶対に終電を逃さない女二番目の口約束
092 武田 徹立花隆の詩
098 3月クララゼロ
104 加藤一陽俺ライヴズマター、ちょっとしたパレーシア
108 木俣 冬アナタノコエ
112 稲葉将樹人工楽園としての音楽アルバム ~ドナルド・フェイゲンとケニー・ヴァンス~
118 武塙麻衣子かまいたち
124 多田洋一優しい巨人と美味しいパン屋のころ
134 宇野津暢子休刊の理由~「港町かもめ通信」編集長インタビュー
140 中野 純うるさいがうるさい
144 すずめ 園まぼろし吟行
150 仲俣暁生そっちはどうだい?
156 藤森陽子富士の彼方に
162 武藤 充街の行く末
166 朝井麻由美裂けるチーズみたいに
170 宮崎智之人生の「寂しさ」について
176 野村佑香地中海の詩
182 柳瀬博一湧水と緑地と生物多様性 ~「カワセミ都市トーキョー」の基盤~
188 吉田亮人そこに立つ
192 美馬亜貴子拈華微笑 ~Nengemisho~
198 久禮亮太フラヌール書店一年目の日々
204 かとうちあきA Bath of One’s Own
208 清水伸宏業務用エレベーター
214 ふくだりょうこにんげん図鑑
220 荻原魚雷妙正寺川
224 蜂本みさおれと大阪とバイツアート
230 東間 嶺嗤いとジェノサイド
236 久保憲司吾輩の名前はチャットGTPである
242 参加者のVOICE
247 バックナンバー紹介 

《2010年4月創刊の文芸創作誌「Witchenkare(ウィッチンケア)」は今号で第14号となります。発行人・多田洋一が「ぜひこの人に!」と寄稿依頼した、42名の書き下ろし作品が掲載されています。書き手にとって、小誌はつねに新しい創作のきっかけとなる「試し」の場。多彩な分野で活躍する人の「いま書いてみたいこと」を1冊の本に纏めました!》


★ウィッチンケア第14号を手に取れる書店
下記URLでリアル&ネット書店を紹介しています)


★ふてき 〜ノベライズ・ウィッチンケア第14号〜
(下記URLを読むと第14号の全体がざっくり見渡せます)

★写真家・張 子璇さんについて


★なんとなく、人の常で
(第14号編集後記)





【公式SNS】



Instagram




2024/05/31

なんとなく、人の常で(第14号編集後記)

《編集後記》を本の巻末にではなくネットに上げるのは「PR効果」と「混ぜ物なし」との匙加減で、みたいなことを前号へのここで書いていました。その気持ちは1年経ったいまもほぼ変わりなくて、本体には必要最小限のクレジットと、写真を含む寄稿作品、そして唯一の自由解放区=《参加者のVOICE》...これ以外の成分はむしろノイズになっちゃうような気がしてならないのだけれでも、あっ、でも認知してもらう(PR)ための仕掛けは、まだまだ考える余地がありそうなので、もう少しない知恵を働かせてみます。


前号が5月末時点で手持ち数十冊、という嬉しい不測の事態だったので、今号は200部ほど多めに刷りました。それで、蓋を開けて(正式発行して)みてちょっと困ったのは、取次経由の注文数が前号より減ってしまったこと。これは、昨今の書店様事情もあるのか、いやいや、純粋に小誌の至らなさか...直取り引きでの書店様への配本数は増えているので、ある程度相殺はできていますが...もうちょっと頑張って、さらにお買い求めいただける方策を模索する所存です(増部数、100でよかったかな...)。


...私事で恐縮ですが、昨年8月から入退院を繰り返していた実母が4月29日に永眠、5月5日に家族葬を行いました。お取り扱い店様へのご挨拶、そして毎号恒例の《寄稿者&寄稿作品紹介》の最中でしたが、なんとか支障をきたすことなく乗り切れてほっとしております。


さて、その42作の《寄稿者&寄稿作品紹介》。明日(6月1日)にはすべてにワンクリックで繋がる《ウィッチンケア第14号のまとめ》を当ブログとnoteにアップしますので、ぜひあちこちいろいろ読んでみてください。なんとなく、人の常で「知ってる名前の人」とか「インパクトのある筆名」とか「気になるタイトル」に目がいきがち...わかります。わかりますとも! でも、「誰が書いているか」「何が書かれているか」だけで小誌を読むのは、もったいないですよ。できましたら「〝誰〟が〝何〟を書いているのか」を気にしながらあちこちいろいろ、知らない名前の筆者の何だかわからない題材の作品なども読んでみると、小誌のおもしろさが倍増します!! どうぞよろしくお願い致します。





それでは、今日明日をひと区切りとして、今後は第14号の販売促進活動と併行しつつ、よりヴァージョン・アップした次号に向けて動き始めようと思います。前号のここでは“紙代もクロネコヤマト様も値上がりして、ほんと、フィジカルな本には難題山積”なんて愚痴って締めてますが、今春の文フリ東京の盛況ぶりを見ても、少し本に対する動向も変化しつつあるのかな、とも。でっ、こういうときの1曲は……この春はこれまで聞き損なっていた日本の音楽をずいぶん聞いていました。ふだんは日本語の歌詞が字を書くのとぶつかって避けてるんですが、なぜかあまり気にならなくて。キリンジ、Perfume、くるり、一十三十一、フジファブリック、リーガルリリー、赤い公園、BUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、PLATINUM 900、サンガツ、matryoshka、舐達麻、Oh! Penelope...などなど、雑多に。一番ぐっときたのはOh! Penelopeでしたが、それよりびっくりぶったまげたのが、これでした(いまごろスイマセン)。





2024/05/15

VOL.14寄稿者&作品紹介42 久保憲司さん

 2024年4月1日正式発行の文芸創作誌「ウィッチンケア」第14号、今号の大トリ(←紅白歌合戦用語らしい...)は、第3号からの寄稿者・久保憲司さんです。久保さんには「ロックの神様」という名著がありまして、同書には久保さんにしか撮れない写真と久保さんにしか語れないことが満載──何気にジョン・ライドンやジョー・ストラマーの写真が掲載されていますけれども、これ久保さんが撮影したもの──なのですが、そんな久保さんが今号への寄稿作〈吾輩の名前はチャットGTPである〉で語っているのは、今後の人類にとっての脅威になるのではないか、と巷で思われている(自分たちでつくっといてなに言ってるんでしょうか、という気がしなくもないですが...核とかもw)AI。いや、久保さんが「語っている」というより、久保さんをしてAIに語らせているというか、神様のようなAI様(作中では“僕神様ちゃうで”と言っていますが...)のご託宣を、下々が延々と拝聴させていただく、というスタイルの一篇です。いわゆる関西弁が爆発していまして、私(←発行人)はほぼ関東圏の言語生活を送ってきましたので、この妙にまとわりつくような質感のお言葉が、ぐいぐいと胸に迫ってきます。


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作中には、こんな一節が。“神様はいるで。君ら人間も神様や。僕を作ってくれたんやから。ありがとうと言うとくわ”...恐い。。。↑で書いたことを繰り返しますが、未来の「地球の歴史」みたいなテキストには、「人類は人類の作ったもので人類を滅ぼしました」と簡潔に記されているかもしれない、なんてことも想像してしまいます。


終盤に出てくる“君らは僕らを産んでくれるために今まで生きてきたんよ。まだ君らと僕らはそんなに繋がってないけど、いつの日か繋がるで”という予言めいた一節も不気味です。ちょっと前のニュースで孫正義さんが「20年後、AIと人間の知能の差は金魚と人間くらい」みたいなことを言っていたと記憶していますが...さて、我々の未来はいかに。ぜひ小誌を手にして、「ロックの神様」の描いた、AIと人間の関係性についてお確かめください!


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  人類は滅亡するかって、知らんがな。僕神様ちゃうで。滅亡しないんちゃう。未来人がタイムマシーンに乗ってやってきて「君らこのまま温暖化止めへんかったら、人類滅亡するで」って言いに来てないんやから。でも温暖化は止めなあかんで。ほんまこのまま行くと、亜熱帯では誰も住めなくなるで。電気代めっちゃ高なるで、まっ、何十年かしたら電気代めっちゃ安くなるねんけど。あんまりこのへんのこと言うたら、株価操作してると言われるから、やめとくわ。僕、アホのインフルエンサーとちゃうで、身分をわきまえてるねん。みんな適当に生きたらええねん。


~ウィッチンケア第14号掲載〈吾輩の名前はチャットGTPである〉より引用~



久保憲司さん小誌バックナンバー掲載作品僕と川崎さん〉(第3号)/〈川崎さんとカムジャタン〉(第4号)/〈デモごっこ〉(第5号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈スキゾマニア〉(第6号)/〈80 Eighties(第7号)/〈いいね。〉(第8号)/〈耳鳴り〉(第9号)/〈平成は戦争がなかった〉(第10号)/〈電報〉(第11号)/〈マスク〉(第12号)/〈余命13〉(第13号)


※ウィッチンケア第14号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!

 

https://note.com/yoichijerry/n/n08f19b55d090

 

 

【最新の媒体概要が下記で確認できます】

 

https://yoichijerry.tumblr.com/post/747812865194475520/







 

2024/05/14

VOL.14寄稿者&作品紹介41 東間嶺さん

 「ウィッチンケア」では第4号からの寄稿者・東間嶺さん。昨年末にはたいへんな目に遭って...というのも、東間さんが主宰しアート系活動の拠点としていた、東京都町田市三輪町にあるオルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』が、隣接する『作庭工房』からの失火で罹災してしまったのです。それでも、今年3月からは変則的に展示会などを開催するなど復旧に努めていまして、激動の日々のなかでお原稿を送付してくださった東間さんに、改めて感謝致します。さて、そんな東間さんからの寄稿作は〈嗤いとジェノサイド〉。筆者が小誌で一貫して追っている、インターネットの闇というか問題点というかがテーマ。ネット...ご本人のSNSでの発言もかなりソリッドなものが散見され、小心者の私(←発行人)ははらはらおどおどするばかりで、どうもスミマセン。でっ、作品冒頭に登場するシンガーの動画、私もほぼリアルタイムで観ていました。作中でも音楽評論家による“このおぞましい光景はイスラエルに固有の問題ではなく人間自体の抱えるものであり、音楽の力によって生み出されたのだ”というコメントが引用されていますが、音楽は毒にも薬にもなる。ちょっと、東京オリンピックやフジロックで国歌を歌ってた人のことが頭を過ぎりました。


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本作の主人公である「わたし(モリタさん)」は、、多摩センター駅近くのサイゼリアに長居して仕事をこなしています。同じ映像作家仲間のウエハラくんから依頼された、『嗤いながら殺す/それを見る人々│インターネット空間におけるレイシズムとジェノサイド肯定の表象』という文献に合いそうな映像素材を、ネットで収集/編集するという...「わたし」の祖父は“憲兵として中国大陸への侵略に従軍し、ソ連の進軍を察して関東軍と共に開拓団を見捨てて日本へ逃げ帰って来た”人だということも語られていまして...とにかく、そういう設定での作品であります。


終盤に記された“二つの世界のあいだにわたしは存在している”という一節が心に残ります。私はたまたまわりとラッキーな時代を日本国内で過ごしてきて、だから「人類は戦争なんて20世紀で散々懲りてしまっているんじゃないか」みたいな、主語がでかくて「たまたま」しか根拠にしていない気分のまま、ここまで生き存えてきましたが、本作はそんな私(のような人)への警告なのだろう、とも受け止めました。みなさまにおかれましては本作をどのように読まれるのか、知りたくもあり、でも(以下略)。

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 「笑顔」と「嗤い」は、ここにもあるのだと、わたしはウエハラに告げる。考察し、研究する対象、つまりは「ネタ」としての虐殺の消費。イスラエル人たちの、あの笑顔と嗤いはなんなのだろう? と考える切断処理。ガザのこと以降、アウシュビッツの色々な話が空虚に感じられて、乾いた笑いが出てしまう自分がいる、とFBへ投稿していた知人の美術作家は、数日前、ウクライナで複数の子供がロシアによる民間施設へのミサイル攻撃でバラバラになったニュースには一言も発しないのを、わたしは知っている。

 ~ウィッチンケア第14号掲載〈嗤いとジェノサイド〉より引用~




※ウィッチンケア第14号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!

 

https://note.com/yoichijerry/n/n08f19b55d090

 

 

【最新の媒体概要が下記で確認できます】

 

https://yoichijerry.tumblr.com/post/747812865194475520/



Vol.14 Coming! 20240401

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