2025/05/07

VOL.15寄稿者&作品紹介11 加藤一陽さん

小誌第13号からの寄稿者・加藤一陽さんはカルチャー系コンテンツカンパニー「株式会社ソウ・スウィート・パブリッシング」の経営者です。昨年は『読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門』(ナージャ・トロコンニコワ/翻訳・野中モモ)を紹介しましたが、その後も好書を世の中に送り出し続けておられまして、昨年お目にかかったさいには、次は西寺郷太さんの『J-POP丸かじり』、みたいなことを話していた記憶が...こちらも無事刊行され、さらに先月には『読むラジオ屋さんごっこ』も、と怒濤のリリース攻勢。そんなお忙しいなか、小誌へもきっちりお原稿を届けてくださり、感謝致します。さて、そんな加藤さんの寄稿作「俺のヰタ・セクスアリス」なのですが、令和の金井湛(森鷗外)...もとい、加藤さんの性知識にまつわる来し方が自伝的に、かなり直截に語られています。なぜに!? それは本作の中盤以降を読めば明白なのですが、私(←発行人)はこの前半部分を「筆者は“土俵の外から物言いをする”みたいな態度を避けたのだろう」と読み取りました。 




芸能界のスキャンダル...一昔前までは、電車に乗ると中吊り広告が教えてくれる、といった感じでしたが、いまや各人のスマホに直撃弾が。作中には〈芸能事務所が潰れたり、時代の顔役のタレントが辞めたり、外国のメディアに詰められたり、バーベキューをした理由を説明させられたり〉という一節があり、まさにそういうことがメディア(ネット含む)で取り沙汰された2024~2025年の初春だったな、という記録にもなっていますが、でも同じような案件、その後もさらに続いていて、最近なら、なぜオレは新宿に向かう小田急線内で、アイフォーンに写し出された「手繋ぎ写真」を見せられ...いや見ているんだ、みたいな。


それにしても、筆者のテキストは含有成分(!?)豊かでして、それに気付けるとおもしろさが倍増するのです。たとえば〈性が絡むトラブルのニュースや万引きGメンの特集番組などを見ていると、加害者が自身の精神状況について「魔が差した」と解説することがある。ミシシッピの四辻で悪魔に魂を売ったブルースの神様 みたいな言い方に聞こえなくもないが〉...ここでの「神様」について多少でも知識があると、思わずニヤリ、みたいな。私としては、本作の中で、鷗外に匹敵する文豪を探してみるとか、ちょっとオススメしたく存じます。


ウィッチンケア第15号(Witchenkare VOL.15)
発行日:2025年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:276ページ/定価(本体2,000円+税)
ISBN:978-4-86538-173-3  C0095 ¥2000E



 テレビ局とX子の件で芸能界を辞めるタレントは50代だそうだ。その少し前に、性加害が告発されて話題を集めたお笑い芸人は60代だという。彼らが実際に何をやったのかはわからないし、そこに〝魔〞が携わっているかどうかも知らない。ただ彼らのニュースを見ていると、〝人間は50歳を超えても性欲から逃れられない〞という事実を突きつけられるから、それに対してうんざりしている。同じような話題の繰り返しに対する「もういいぜ」感もある。それプラス、「男=エロい」という印象が増幅されている気もして、それにも疲れる。エロ至上主義者がいても構わないし、悪いことをしなければそれは悪くはない。しかし、たぶんそれほどではない周回遅れの自分なんかでも、十把一絡げにされることがあるとしたら不本意だ。だからこそ「そんなにエロいことばっか考えてねえっつの」など叫びながら、異性との打ち合わせの際は会議室のドアを露骨に開け放したりしているのだが、その間にも、〝教え子の盗撮を繰り返した塾講師逮捕、組織ぐるみか〞とかってクソみたいな記事が次々スマホにデリバリーされてくるものだから、自分の主張は尻つぼみである。ただ声だけが空の裡(うち)に残るのだ。兎角に人の世は住みにくい。


~ウィッチンケア第15号掲載〈俺のヰタ・セクスアリス〉より引用~


加藤一陽さん小誌バックナンバー掲載作品:〈リトルトリップ〉(第13号)/〈俺ライヴズマター、ちょっとしたパレーシア〉(第14号)


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Vol.15 Coming! 20250401

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