2025/05/10

VOL.15寄稿者&作品紹介17 佐々木敦さん

 今回が「ウィッチンケア」への初寄稿となる佐々木敦さん。私(←発行人)は今はなき音楽雑誌「クロスビート」(1998〜2013/シンコーミュージック刊)の創刊号からの読者でしたので、佐々木さんの署名記事はよく読んでいましたし、「映画的最前線 1988-1993」(水声社/1993年)も、当時はレオス・カラックスにかなりハマっていたので、刊行後すぐに入手していました。そんな私は、佐々木さんとはかろうじて面識があり、多少言葉を交わしたことがある程度でしたが、昨年の夏、SNS上で佐々木さんが小誌についてちょっと言及。それを小誌寄稿者(&元「クロスビート」編集者)・美馬亜貴子さんもチェックしていて私に連絡をくださり、その後のメールでのやりとりを経て、ご寄稿いただけることになったのでした。そして...小誌第15号が無事正式発行された後のSNSにて、寄稿者・絶対に終電を逃さない女さんが、じつは佐々木さんの大学での教え子だったことが判明したり、といろいろな縁が繋がっていくのも、雑誌というメディアがあるからこそ、とも。




佐々木さんの寄稿作には〈おそらく実現されることはないであろうわたくしの夢のひとり出版社の、もしも実現したとしてもおそらく実現できることはないであろう、夢の刊行予定リスト〉という長〜いタイトルが付けられており、その内容はというと、筆者が現在ドリーム・ラインナップだ、と考えている刊行リスト(とそれに関する個人的な思い)が記されています。名前が挙がっているのは、たとえば小島信夫、蓮實重彦、等々(すべては小誌を手にしてお確かめください!)...mmm、「抱擁家族」はうっすら内容を知っている。「凡庸さについてお話させていただきます」は、持ってはいる。本作のドリームさを実感するには、私はちょっと赤子のようでお恥ずかしい。。。


あらためて、私は佐々木さんの膨大な仕事について、ほんの「自分のわかるところ」(おもに音楽、映画)だけを学ばせてもらってきたのだなぁ、と思いました。あっ、そうだ。明日の文学フリマ東京40には佐々木さんも出店なさる、とのことですので、小誌をすでに読んで参加する方がいらっしゃいましたら、ぜひ直接、本作について語り合っていただければ、発行人として嬉しく存じます!


ウィッチンケア第15号(Witchenkare VOL.15)
発行日:2025年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:276ページ/定価(本体2,000円+税)
ISBN:978-4-86538-173-3  C0095 ¥2000E



(5)蓮實重彦『大江健三郎論』
 
1980年に青土社より刊行された長編の大江論。同じ版元から2年前に出た『夏目漱石論』や3年後に筑摩書房から出る『監督小津安二郎』と同様に(それ以上に)バリバリのテマティスム批評であり、発表時には大江の不興を買ったとか買わないとか。蓮實の初期の映画/文芸批評も文庫化や再刊が続いているが、これが絶版のままになっているのは批評対象への「遠慮(忖度?)」が(蓮實ではなく出版社側に)あったのかもしれない。蓮實の大江評価は時期や作品によって是々非々であり、両者の距離感には微妙な(というか歴然とした)緊張が感じられる時期もあったと思うが、大江は2023年に亡くなり、蓮實はやはり長らく(大江以上に)妙過ぎる関係だった筒井康隆との対談本『笑犬楼 vs.偽伯爵』では大江を大いに讃えている。私はこの本を蓮實の仕事の中でもとりわけブリリアントなものだと思っているが、ご本人としては若気の至り(といっても当時すでに四十代だが)と感じているのかもしれない。ちなみに私は「小説家蓮實重彦、一、二、三、四、」(『私は小説である』所収)という批評文で、この本で蓮實が大江作品にしたのと同じことを蓮實の三作の小説『陥没地帯』『オペラ・オペラシオネル』『伯爵夫人』に対してやってみたことがあるのだが、いつものことだがほとんど読まれることがないまま現在に至っている。
懸念事項:著者の許可が絶対下りないと思う。

~ウィッチンケア第15号掲載〈おそらく実現されることはないであろうわたくしの夢のひとり出版社の、もしも実現したとしてもおそらく実現できることはないであろう、夢の刊行予定リスト〉より引用~



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Vol.15 Coming! 20250401

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