あの木俣冬さんが今回、ウィッチンケア第13号にご寄稿くださったこと、私(発行人)はとっても嬉しく思っています。「あの」...というのは、テレビドラマ好きのかたなら、いや、それほど好きではなくても、話題作が気になってネットで調べてみたことのある人だったら、きっと木俣さんのドラマ評に行き着いた経験が、あるはず(じつは私もその一人なのだ)。そんな木俣さんがなぜ、Witchenkareに? 話せば(書けば)長くなります。なので、かいつまんで説明します。...そもそもは、昨年の朝ドラ「ちむどんどん」。なにしろ流行語大賞に「#ちむどんどん反省会」がノミネートされたくらい“話題”になった作品でしたが、私、久しぶりに朝ドラにハマりました。前半、あまりの展開に2度挫折したものの、中盤以降はほぼリアルタイム・コンプリート。あまりにもつまらなくて出鱈目で、目が離せなかったのです。「なんでオレの受信料でNHKはこんなもんをつくってるんだ!?」みたいな憤懣を抱えて、ネットを彷徨う日々。
「ネットと朝ドラ」という著書もある木俣さんは「CINEMAS+」にて毎日毎話、冷静な視線で「ちむどんどん」評を続けていました。でっ、私、...納得がいくのです、木俣さんの解説なら。そんなこんなで、秋。ドラマの終盤、木俣さんは脚本家・羽原大介氏へのインタビューを《Yahoo!ニュース》に寄稿、さらに番組終了後の10月1日には《リアルサウンド》に、「『ちむどんどん』羽原大介が伝えたかったものは何だったのか 202X年の最終話を終えて」というエントリーを書いています。私はこの記事を読んでやっと、「ちむどんどん」とはなんだったのか、自分のなかで整理できたのです(とくに、羽原氏がつかこうへいの弟子筋であることを知って、霧が晴れるような気持ちになった)。もちろん、私の同作に対する「つまらなくて出鱈目」という評価は変わらないし、木俣さんが個人的にどう評価していたのかも...これはコワくてちゃんと伺ってないw。ただ、ライターとしてご自身の担当した作品をきっちり見届けた、その姿勢に感銘を受けたのです。
とにかく、約半年間も私のメンタルを支えてくださった木俣さんに寄稿依頼したい、と思ったのでした。見本誌を送付、などのやりとりの後に良いお返事が。そして年が明けて受け取ったのが、今号に掲載した「まぼろしの、」なのです。タイトルからは推察できませんが、本作は俳優・小栗旬についての評論...いや、私論的エッセイといったほうが適切かな。木俣さんはまだ二十代の小栗さんのイギリス公演に同行してルポを書いたり、というキャリアの持ち主。2022年、テレビでは「鎌倉殿の13人」での北条義時役が話題でしたが、木俣さんは同ドラマでの小栗さんのことも、舞台「ジョン王」に関するさまざまな逸話と絡めながら、独自の観点で語っています(ちょっと...世の中の小栗旬ファンは必読、の1篇ですよ!)。そんな木俣さんは現在、今年の大河ドラマ「どうする家康」のノベライズを執筆中。私もノベライズという仕事の経験者なので、ご多忙のなか本作を送ってくださったこと、あらためて感謝の気持ちでいっぱいです。
この数年、「鎌倉殿」のために筋トレにも励んでいたようで、そのせいか声が安定しているような……。へんに上半身を鍛えると声が出なくなるとある俳優から聞いたこともあるし、体幹を鍛えることで声が出るようになるとも聞く。いい筋肉が、舞台での安心感に繋がったのではないだろうか。そこでふと思い出したのは、その昔、英国公演に挑むとき、小栗さんがカラダを鍛えようとしていたことである。蜷川さんは「エアロン(そのとき演じた役の名前)の植物のような蒼さと強さをもったセクシーな魅力」を求めて筋肉をつけ過ぎることを好まなかった。思うようにできることはまだ少なく、届かない想いに揺れている若い俳優が、16年の時間のなかで、ようやく自分の望むようなカラダで舞台に立っている。その安定感のようなものが「ジョン王」から伝わって来るようだった。
〜ウィッチンケア第13号掲載「まぼろしの、」より引用〜
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