朝井麻由美さん原作のテレビ東京【水ドラ25】「ソロ活女子のススメ」、先月よりシーズン5に突入! このシリーズドラマ、主演の江口のりこさんの出世作にもなっているのがすごいことだと、しみじみ。WIkipediaには、同作が江口さんにとっての〈民放の連続ドラマ初主演〉作だとありまして、たしかに2010年代の彼女は、作中のスパイス的というか、妙な印象を残すバイプレーヤーだったような記憶があるのですが...現在放映中の朝ドラ「あんぱん」でも主人公の母親役として堂々たる存在感だしなあ。俳優とともに大きくなっていく(そしていずれ普遍化=時代のスタンダード)原作だなんて、そんな作品を生み出せる書き手はめったにいないと思います。...そしてもうひとつ、朝井さんのすごいところを。小誌前号での寄稿作「裂けるチーズみたいに」が、年初からのいわゆるフジテレビ問題を先取りするような一篇だったこと。そんな朝井さんは今回、未来小説を書いてくださいまして、この作品もまた、今後「予言の書」のようになっていくのではないかと思うとゾクゾクします。
物語の舞台は西暦2154年の、人類が「感情を制御した」世の中。21世紀に発展したSNSによって、人々は感情に支配されるようになり、人間社会の存続が脅かされる事態となった。感情抑制社会の実現を求める声が民意となり、紆余曲折を経て「感情制御チップ」なるものが人類には装備され...いやあ、なんたるディストピアなのでしょう、冗談じゃないよ! と私(←発行人)は21世紀前半の感情を振り切って怒っていますが、しかし、なにしろ作者は時代の先取り実績のある方ですし、不肖私の現時点での生活感覚でだって、いまのSNSを放置していたら、関東大震災後の福田村事件みたいな惨事があちこちで勃発するかも、みたいな怖さは感じます。
作品の鍵を握っているのは、〈この理想社会を統括する〉ためにある〈「最適管理局(通称:局)〉に勤務する嘉島ハルカと、坂宮レイ。このものたちがどのような環境下でどんな任務を担っているのかは、ネタバレにも繋がるのでここでは解説致しません。とにかくすごい1作ですので、ぜひ、小誌を手に取ってお確かめくださいませ。