主人公の美佐枝の<稼業は地下アイドル>。本名をもじり、「ミサンガ」という呼称で活動しています。あるきっかけで、ファンの一人である秋山さんと直接連絡をとる関係になったミサンガさん。自分的には「私のストーカー」だと認識していた秋山さんの、連絡を取り合って以降の言動がよく理解できなくて悩んでいるのです。物語内では、この2人の意識のズレの綾が細やかに描かれていまして、さらに<美佐枝の母>や<友人のユミ>が第三者的な見解を示すことで、ミサンガさんの動揺は激しくなり、ついに...。《衝撃の結末》はぜひ、小誌を手にとってお確かめください!
お原稿を最初にいただいて、けっこう秋山さんの言い分に納得できた自分に困りました(苦笑)。いや、私のアイドル観は守旧も守旧(「笑顔ひとつで瞬殺してくれ」「トイレにいかないと信じさせてくれ」)なので、今世紀に入ってからはずっと《該当者なし》なんですが、いや、いや、そんなだから、秋山さんがミサンガさんではなく美佐枝にある一線を引こうとするアティチュードに「ちょっとわかる」って気分だったのかも? いや、だが、作者は秋山さんのミサンガさんへのつれない対応すら、<ファンがアイドルを「選び育てる」>ための一方法として描いているのかもしれず...とにかく、ミサンガさんには狼狽えず精進してほしいと思いました!
冒頭で美馬さんが<自分は元ドルオタ>と書きましたが、掲載までのやりとりで「初代の東京パフォーマンスドールにハマってエラいことになりました」と伺い、女性が女性グループにハマる...エラいことって...もしかして美馬さん、TPDに自分も入ろうとしてオーディション受けたとか!? と早とちりしてしまいました(恥!)。よく聞けば、メンバーの川村知砂さんに深く思い入れてファンレターを書いたとか。「二十一世紀鋼鉄の女」(第6号)のブラジリアンワックス以来、美馬さんには毎年認識をあらためさせていただいているようで、申し訳ないっす。あっ、そういえば、今号では小川たまかさんの作品にもローラに共感する一節があって印象的でした。私の場合だと、芸能人にそういう感情は湧いたことなかったな。むしろもっとデフォルメされた、アニメキャラ(矢吹丈とか流川楓とか)には、似たような思い入れをしたかも。
「ハッキリ言いますね。私、今回のことで〝ご縁〟っていうか、そういうのを感じているというか……」
「自分もそれは感じてます。とても」
「だから、本当のお友達になって欲しいんですね」
「……ミサンガと? 友達に?」
「はい。だからまずはミサンガじゃなくて〝みさえ〟って呼んでくれると嬉しいんですけど」
そこで再び途絶えた会話から、秋山が困惑していることが伝わってくる。
「……自分にとってミサンガはやっぱりミサンガでしかなく……〝みさえ〟だと、あ、呼び捨てにしてすみません……また別の話になっちゃうんですよね」
「別の話?」
「そういう繋がりを持ちたいわけじゃないんで。この間のことも、結果論ですけど、自分的にはちょっと近くなり過ぎちゃったかなと思ってて……アイドルがアイドルでなくなっちゃうのはむしろ嫌というか……自分はプロのドルオタでいたいので」
ウィッチンケア第9号「パッション・マニアックス」(P114〜P119)より引用
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美馬亜貴子さん小誌バックナンバー掲載作品
「ワカコさんの窓」(第5号)/「二十一世紀鋼鉄の女」(第6号&《note版ウィッチンケア文庫》)/「MとNの間」(第7号)/「ダーティー・ハリー・シンドローム」(第8号)
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