前回はウィッチンケア第14号に〈ウルフ・オブ・丸の内ストリート〉という、ハードボイルド小説のような切れ味のエッセイをご寄稿くださった九龍ジョーさん。同作はのちに九龍さんのZINE「マネーチェンジエブリシング」に収録され、神保町のシェア型書店 PASSAGE by ALL REVIEWS「九龍ジョーの本棚」 などで販売中です。そんな九龍さんの小誌第16号への寄稿作は、〈ホットケーキ〉と題された掌編小説。タイトルだけだとふんわりしたお話のようにも感じられますが、そんな甘口ではありません。むしろ、修羅場。
主人公の奈緒は三人姉妹の長女。彼女の住む西大島のアパートにある日、週末になると宇都宮から上京して、アイドルの真似事のようなことをしている次女のゆかりが訪ねてきます。この二人と、奈緒の恋人・ソウ、奈緒とソウの共通の友人・片山で物語は展開するのですが...これが、けっこう目まぐるしくて。世間知らずの妹に対して本音では〝なによりゆかりの活動がうまくいけばいいと心から願って〟いる姉の複雑な心情が、ドライな筆致で描かれています。 それにしても、ゆかりはこの先どうするつもりなのでしょう。奈緒とソウの今後も、ややこしいことになりそうだし。そして筆者はなぜこの一篇に「ホットケーキ」という一語を冠したのか? じつは、作中ではゆかりの口から出た言葉なんですが...ぜひ小誌を手にとってお確かめください。 ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日 出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号) A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税)
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E
朝、コーヒーを入れてやると、「喫茶店で働いてるのに、インスタントしかないんだ」と小言をいう。高二の分際で仕事に対するプロ意識みたいなものをちらつかせてくるのはうざったいが、同時にかわいらしくも感じた。 ある夜、バイトから帰ると、リビングにソウがいた。ゆかりと並んでソファに座り、テレビを見ている。そう思ったが、実際にはゆかりの膝の上にソウのスマホが載っていて、画面を二人で覗き込んでいた。奈緒が入ってきたとき、ソウは素早くスマホをポケットに戻した。 「なに見てたの」 「ゆかりちゃんの出てる動画」ソウが言った。 ゆかりは黙って冷蔵庫に向かい、お茶を出してきた。奈緒はソウの顔を見たが、ソウはテレビに目を戻していた。 数日後、バイトから帰って夜、奈緒がテレビを見ていると、片山から電話があった。
ソウが警察に捕まったという。
~ウィッチンケア第16号掲載〈ホットケーキ〉より引用~
九龍ジョーさん小誌バックナンバー掲載作品: 〈 ウルフ・オブ・丸の内ストリート 〉(第14号)
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