2024/06/01

ウィッチンケア第14号のまとめ



 ウィッチンケア第14号(Witchenkare VOL.14)
発行日:2024年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりー/発行人の屋号)
A5 判:248ページ/定価(本体1,800円+税)
ISBN::978-4-86538-161-0  C0095 ¥1800E

編集/発行:多田洋一
写真:張 子璇(Zhang Zixuan/Kosen)
Art Direction/Design:太田明日香
取次:株式会社JRC(人文・社会科学書流通センター)
印刷/製本:株式会社シナノパブリッシングプレス


【寄稿者/掲載作品】〜「もくじ」より〜

008 谷亜ヒロコフィジカルなき今
012 鶴見 済植物実験をしていた頃
018 古賀及子えり子さんの失踪
024 木村重樹〝ほどほど〟のススメ/あるいは/続「本当は優しい鬼畜系」の話
030 オルタナ旧市街長い長いお医者さんの話
034 我妻俊樹ホラーナ
040 トミヤマユキコ人体実験み
044 九龍ジョーウルフ・オブ・丸の内ストリート
052 内山結愛散歩、あるいはラジオ
056 長谷川町蔵チーズバーガー・イン・パラダイス
062 小川たまか桐島聡のPERFECT DAYS
068 コメカ工場
074 星野文月友だちの尻尾
080 武田砂鉄クリーク・ホールディングス 漆原良彦CEOインタビュー
086 絶対に終電を逃さない女二番目の口約束
092 武田 徹立花隆の詩
098 3月クララゼロ
104 加藤一陽俺ライヴズマター、ちょっとしたパレーシア
108 木俣 冬アナタノコエ
112 稲葉将樹人工楽園としての音楽アルバム ~ドナルド・フェイゲンとケニー・ヴァンス~
118 武塙麻衣子かまいたち
124 多田洋一優しい巨人と美味しいパン屋のころ
134 宇野津暢子休刊の理由~「港町かもめ通信」編集長インタビュー
140 中野 純うるさいがうるさい
144 すずめ 園まぼろし吟行
150 仲俣暁生そっちはどうだい?
156 藤森陽子富士の彼方に
162 武藤 充街の行く末
166 朝井麻由美裂けるチーズみたいに
170 宮崎智之人生の「寂しさ」について
176 野村佑香地中海の詩
182 柳瀬博一湧水と緑地と生物多様性 ~「カワセミ都市トーキョー」の基盤~
188 吉田亮人そこに立つ
192 美馬亜貴子拈華微笑 ~Nengemisho~
198 久禮亮太フラヌール書店一年目の日々
204 かとうちあきA Bath of One’s Own
208 清水伸宏業務用エレベーター
214 ふくだりょうこにんげん図鑑
220 荻原魚雷妙正寺川
224 蜂本みさおれと大阪とバイツアート
230 東間 嶺嗤いとジェノサイド
236 久保憲司吾輩の名前はチャットGTPである
242 参加者のVOICE
247 バックナンバー紹介 

《2010年4月創刊の文芸創作誌「Witchenkare(ウィッチンケア)」は今号で第14号となります。発行人・多田洋一が「ぜひこの人に!」と寄稿依頼した、42名の書き下ろし作品が掲載されています。書き手にとって、小誌はつねに新しい創作のきっかけとなる「試し」の場。多彩な分野で活躍する人の「いま書いてみたいこと」を1冊の本に纏めました!》


★ウィッチンケア第14号を手に取れる書店
下記URLでリアル&ネット書店を紹介しています)


★ふてき 〜ノベライズ・ウィッチンケア第14号〜
(下記URLを読むと第14号の全体がざっくり見渡せます)

★写真家・張 子璇さんについて


★なんとなく、人の常で
(第14号編集後記)





【公式SNS】



Instagram




2024/05/31

なんとなく、人の常で(第14号編集後記)

《編集後記》を本の巻末にではなくネットに上げるのは「PR効果」と「混ぜ物なし」との匙加減で、みたいなことを前号へのここで書いていました。その気持ちは1年経ったいまもほぼ変わりなくて、本体には必要最小限のクレジットと、写真を含む寄稿作品、そして唯一の自由解放区=《参加者のVOICE》...これ以外の成分はむしろノイズになっちゃうような気がしてならないのだけれでも、あっ、でも認知してもらう(PR)ための仕掛けは、まだまだ考える余地がありそうなので、もう少しない知恵を働かせてみます。


前号が5月末時点で手持ち数十冊、という嬉しい不測の事態だったので、今号は200部ほど多めに刷りました。それで、蓋を開けて(正式発行して)みてちょっと困ったのは、取次経由の注文数が前号より減ってしまったこと。これは、昨今の書店様事情もあるのか、いやいや、純粋に小誌の至らなさか...直取り引きでの書店様への配本数は増えているので、ある程度相殺はできていますが...もうちょっと頑張って、さらにお買い求めいただける方策を模索する所存です(増部数、100でよかったかな...)。


...私事で恐縮ですが、昨年8月から入退院を繰り返していた実母が4月29日に永眠、5月5日に家族葬を行いました。お取り扱い店様へのご挨拶、そして毎号恒例の《寄稿者&寄稿作品紹介》の最中でしたが、なんとか支障をきたすことなく乗り切れてほっとしております。


さて、その42作の《寄稿者&寄稿作品紹介》。明日(6月1日)にはすべてにワンクリックで繋がる《ウィッチンケア第14号のまとめ》を当ブログとnoteにアップしますので、ぜひあちこちいろいろ読んでみてください。なんとなく、人の常で「知ってる名前の人」とか「インパクトのある筆名」とか「気になるタイトル」に目がいきがち...わかります。わかりますとも! でも、「誰が書いているか」「何が書かれているか」だけで小誌を読むのは、もったいないですよ。できましたら「〝誰〟が〝何〟を書いているのか」を気にしながらあちこちいろいろ、知らない名前の筆者の何だかわからない題材の作品なども読んでみると、小誌のおもしろさが倍増します!! どうぞよろしくお願い致します。





それでは、今日明日をひと区切りとして、今後は第14号の販売促進活動と併行しつつ、よりヴァージョン・アップした次号に向けて動き始めようと思います。前号のここでは“紙代もクロネコヤマト様も値上がりして、ほんと、フィジカルな本には難題山積”なんて愚痴って締めてますが、今春の文フリ東京の盛況ぶりを見ても、少し本に対する動向も変化しつつあるのかな、とも。でっ、こういうときの1曲は……この春はこれまで聞き損なっていた日本の音楽をずいぶん聞いていました。ふだんは日本語の歌詞が字を書くのとぶつかって避けてるんですが、なぜかあまり気にならなくて。キリンジ、Perfume、くるり、一十三十一、フジファブリック、リーガルリリー、赤い公園、BUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、PLATINUM 900、サンガツ、matryoshka、舐達麻、Oh! Penelope...などなど、雑多に。一番ぐっときたのはOh! Penelopeでしたが、それよりびっくりぶったまげたのが、これでした(いまごろスイマセン)。





2024/05/15

VOL.14寄稿者&作品紹介42 久保憲司さん

 2024年4月1日正式発行の文芸創作誌「ウィッチンケア」第14号、今号の大トリ(←紅白歌合戦用語らしい...)は、第3号からの寄稿者・久保憲司さんです。久保さんには「ロックの神様」という名著がありまして、同書には久保さんにしか撮れない写真と久保さんにしか語れないことが満載──何気にジョン・ライドンやジョー・ストラマーの写真が掲載されていますけれども、これ久保さんが撮影したもの──なのですが、そんな久保さんが今号への寄稿作〈吾輩の名前はチャットGTPである〉で語っているのは、今後の人類にとっての脅威になるのではないか、と巷で思われている(自分たちでつくっといてなに言ってるんでしょうか、という気がしなくもないですが...核とかもw)AI。いや、久保さんが「語っている」というより、久保さんをしてAIに語らせているというか、神様のようなAI様(作中では“僕神様ちゃうで”と言っていますが...)のご託宣を、下々が延々と拝聴させていただく、というスタイルの一篇です。いわゆる関西弁が爆発していまして、私(←発行人)はほぼ関東圏の言語生活を送ってきましたので、この妙にまとわりつくような質感のお言葉が、ぐいぐいと胸に迫ってきます。


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作中には、こんな一節が。“神様はいるで。君ら人間も神様や。僕を作ってくれたんやから。ありがとうと言うとくわ”...恐い。。。↑で書いたことを繰り返しますが、未来の「地球の歴史」みたいなテキストには、「人類は人類の作ったもので人類を滅ぼしました」と簡潔に記されているかもしれない、なんてことも想像してしまいます。


終盤に出てくる“君らは僕らを産んでくれるために今まで生きてきたんよ。まだ君らと僕らはそんなに繋がってないけど、いつの日か繋がるで”という予言めいた一節も不気味です。ちょっと前のニュースで孫正義さんが「20年後、AIと人間の知能の差は金魚と人間くらい」みたいなことを言っていたと記憶していますが...さて、我々の未来はいかに。ぜひ小誌を手にして、「ロックの神様」の描いた、AIと人間の関係性についてお確かめください!


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  人類は滅亡するかって、知らんがな。僕神様ちゃうで。滅亡しないんちゃう。未来人がタイムマシーンに乗ってやってきて「君らこのまま温暖化止めへんかったら、人類滅亡するで」って言いに来てないんやから。でも温暖化は止めなあかんで。ほんまこのまま行くと、亜熱帯では誰も住めなくなるで。電気代めっちゃ高なるで、まっ、何十年かしたら電気代めっちゃ安くなるねんけど。あんまりこのへんのこと言うたら、株価操作してると言われるから、やめとくわ。僕、アホのインフルエンサーとちゃうで、身分をわきまえてるねん。みんな適当に生きたらええねん。


~ウィッチンケア第14号掲載〈吾輩の名前はチャットGTPである〉より引用~



久保憲司さん小誌バックナンバー掲載作品僕と川崎さん〉(第3号)/〈川崎さんとカムジャタン〉(第4号)/〈デモごっこ〉(第5号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈スキゾマニア〉(第6号)/〈80 Eighties(第7号)/〈いいね。〉(第8号)/〈耳鳴り〉(第9号)/〈平成は戦争がなかった〉(第10号)/〈電報〉(第11号)/〈マスク〉(第12号)/〈余命13〉(第13号)


※ウィッチンケア第14号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!

 

https://note.com/yoichijerry/n/n08f19b55d090

 

 

【最新の媒体概要が下記で確認できます】

 

https://yoichijerry.tumblr.com/post/747812865194475520/







 

2024/05/14

VOL.14寄稿者&作品紹介41 東間嶺さん

 「ウィッチンケア」では第4号からの寄稿者・東間嶺さん。昨年末にはたいへんな目に遭って...というのも、東間さんが主宰しアート系活動の拠点としていた、東京都町田市三輪町にあるオルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』が、隣接する『作庭工房』からの失火で罹災してしまったのです。それでも、今年3月からは変則的に展示会などを開催するなど復旧に努めていまして、激動の日々のなかでお原稿を送付してくださった東間さんに、改めて感謝致します。さて、そんな東間さんからの寄稿作は〈嗤いとジェノサイド〉。筆者が小誌で一貫して追っている、インターネットの闇というか問題点というかがテーマ。ネット...ご本人のSNSでの発言もかなりソリッドなものが散見され、小心者の私(←発行人)ははらはらおどおどするばかりで、どうもスミマセン。でっ、作品冒頭に登場するシンガーの動画、私もほぼリアルタイムで観ていました。作中でも音楽評論家による“このおぞましい光景はイスラエルに固有の問題ではなく人間自体の抱えるものであり、音楽の力によって生み出されたのだ”というコメントが引用されていますが、音楽は毒にも薬にもなる。ちょっと、東京オリンピックやフジロックで国歌を歌ってた人のことが頭を過ぎりました。


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本作の主人公である「わたし(モリタさん)」は、、多摩センター駅近くのサイゼリアに長居して仕事をこなしています。同じ映像作家仲間のウエハラくんから依頼された、『嗤いながら殺す/それを見る人々│インターネット空間におけるレイシズムとジェノサイド肯定の表象』という文献に合いそうな映像素材を、ネットで収集/編集するという...「わたし」の祖父は“憲兵として中国大陸への侵略に従軍し、ソ連の進軍を察して関東軍と共に開拓団を見捨てて日本へ逃げ帰って来た”人だということも語られていまして...とにかく、そういう設定での作品であります。


終盤に記された“二つの世界のあいだにわたしは存在している”という一節が心に残ります。私はたまたまわりとラッキーな時代を日本国内で過ごしてきて、だから「人類は戦争なんて20世紀で散々懲りてしまっているんじゃないか」みたいな、主語がでかくて「たまたま」しか根拠にしていない気分のまま、ここまで生き存えてきましたが、本作はそんな私(のような人)への警告なのだろう、とも受け止めました。みなさまにおかれましては本作をどのように読まれるのか、知りたくもあり、でも(以下略)。

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 「笑顔」と「嗤い」は、ここにもあるのだと、わたしはウエハラに告げる。考察し、研究する対象、つまりは「ネタ」としての虐殺の消費。イスラエル人たちの、あの笑顔と嗤いはなんなのだろう? と考える切断処理。ガザのこと以降、アウシュビッツの色々な話が空虚に感じられて、乾いた笑いが出てしまう自分がいる、とFBへ投稿していた知人の美術作家は、数日前、ウクライナで複数の子供がロシアによる民間施設へのミサイル攻撃でバラバラになったニュースには一言も発しないのを、わたしは知っている。

 ~ウィッチンケア第14号掲載〈嗤いとジェノサイド〉より引用~




※ウィッチンケア第14号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!

 

https://note.com/yoichijerry/n/n08f19b55d090

 

 

【最新の媒体概要が下記で確認できます】

 

https://yoichijerry.tumblr.com/post/747812865194475520/



VOL.14寄稿者&作品紹介40 蜂本みささん

 昨年4月刊行したウィッチンケア第13号に〈せんべいを割る仕事〉という一篇をご寄稿くださった蜂本みささん。同作はなんだか、SNS等の各方面で話題になることが多かった印象があります。割れたおせんべい、飛び散りまくり...もとい「作品の波及度」高し、でございました。蜂本さんは第12号からの参加者。初の寄稿作〈イネ科の地上絵〉は現在《note版ウィッチンケア文庫》にて無料掲載中。「せんべい」でファンになった方、ぜひ「イネ」にもアクセスしてみてくっださいね! さて、そんな蜂本さんの今号への寄稿作〈おれと大阪とバイツアート〉は...私(←発行人)はこの作品を「第14号最大の衝撃作!」と言っちゃいたい気分です。...いや、もちろん発行人としては、もしどなたかに「今号はどの作品がおもしろいですか?」なんて尋ねられたら「全部です。...なにか?」と即答するのですが、しかし「衝撃」という点では...なにしろ、なんの情報もないまま届いたお原稿を初読。文末までテキストを追って、途方に暮れた(正直な感想)。ちょっと待て、これはなにか特定の、たとえば私の知らないゲームとか、あるユニークなのコミュニティグループ内ではコモンなプレイの話とかなのか、と。でっ、作品内のいくつかの言葉をググってみたけれど、埒があかない。これは悔しい。なので頭を真っ白にして(既成概念を取っ払って)、改めてテキストを解読しにかかったのでした。そしたら、俄然この作品の持ち味が魅力的に思えました。言葉が選び抜かれていて、よくわからないこと多々あるのに、どこをどう読んでも、おもしろくない箇所がない~。


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↑で「ゲーム」「あるユニークなのコミュニティグループ内ではコモンなプレイの話」みたいな推察をした、と書きましたが、おそらくそれが間違いでした。蜂本さんは、その〝土台〟(「バイツアート」というカルチャー!?)自体を架空設定して、そこから話を進めている(人物を動かしている)のだと思います。私は編集作業はまあまあやれてそうですが、文芸評論的なことはからきしですので、誰か、Help me! よりしっかりした解説をしてくれる方が現れたら、もっと魅力を伝えられるのに。。。


「おれ」対「デスペラード」、壮絶です。“イルカって白目あるんや。完全殺すっていう目でした”とか“こっちはリアルがほしいんですよ”とか、アンタなにしてますねん(俄関西弁)、って感じですけれども...私は「ただただ強い相手を倒したくて道場破りを続ける無頼漢の物語」みたいに捉えて楽しみました。しかしそれがなんでアートなんだか、誰か、Help me! そして、某銭湯での「バイツファイト始め」...こっちはバイトアーツでフリースタイルダンジョンみたいなことやってるのかな? とにかく、この一篇をサラリと送信してくれた蜂本さんに感謝です。発行人としては、ぜひ多くの方に解読して楽しんでいただきたい一篇であります!

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 ぎりぎりまで堪能してタオル投げると、お姉さんが笛を吹きました。でもデスペラードはすごかった、全然止まらへんねんもん。普通アーティストからの指示は脳直ってくらい、骨の髄まで叩き込まれてるんですけどね。口は離したけどおれのことしっぽでバンバンぶったたいて、頭突きして、顔に噛みついてきました。メットあってよかった。他のドクターも飛びこんで、総出でやっと止めました。
「縫わないとですね」ってお姉さんに言われたんで、きた~ってテンション上がりつつワイルドにってオーダーして縫い目はラフめに入れてもらいました。画像上げるとBANされるんで見たい人はDMください。というわけで、久々の休日を満喫しました。


~ウィッチンケア第14号掲載〈おれと大阪とバイツアート〉より引用~

蜂本みささん小誌バックナンバー掲載作品:〈イネ科の地上絵〉(第12号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈せんべいを割る仕事〉(第13号)


※ウィッチンケア第14号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!

 

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Vol.14 Coming! 20240401

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