2026/05/12

vol.16寄稿者&作品紹介23 野村佑香さん

 女優業と子育てを両立させつつ、最近ではテレビ東京夕方の生活情報番組『よじごじDays』でも、工場直売ハンター(リポーター)としてのご活躍をお見かけする野村佑香さん。ウィッチンケア第16号には〈からだは覚えている〉と題された、ちょっと不思議なテイストの一篇をご寄稿くださいました。登場するのは「わかめ」と「たらこ」と、グレゴール・ザムザとシヴァ神!? なんだか『マルドロールの歌』(「解剖台の上でのミシンと雨傘の偶然の出会いのように美しい」by ロートレアモン伯爵)みたいな展開なのかも、と思える...いやいや、本作は筆者の暮らしの中でのできごとを描いた、きわめて日常的な身辺雑記でございますが、でも、その読み心地は、やはりいささかシュールレアリスティック。


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小誌の巻末にある《参加者のVOICE》で、野村さんは〝この話を書こうと思ったのは、インフルBに罹り、身体が動かなくなった日々が4日ほど続いたからでした〟と記しています。ネタバレになっちゃいますが、本作中の「わかめ」とはインフルBのせいで高熱にうなされている野村さんご本人のこと。とても苦しかったであろうと想像するのですが、その時の自分のことを、味噌汁の椀の内側に貼り付いて〝ただ、ここでこれから乾いていくのを待つだけの存在〟だと。そして筆者はさらに、そのご自身の置かれた状態からフランツ・カフカの小説の主人公に思いを馳せて...。



では、それでは、「たらこ」とは? こちらはぜひ、小誌を手にしてお確かめください。比喩の面白さは「わかめ」に負けず劣らずですが、「たらこ」にまつわる野村さんとお嬢様との関係性、と言いますか、母親が成長過程の子供に向ける眼差しが、細やかな描写から、じんわりと伝わってくるのです。〝創造と破壊はいつもセットだ。シヴァ神と毎日踊り続ける〟...ほんと、毎日身近に接しているからこそ生まれてきた一節だと感じました。


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ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税) 
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E

 熱に浮かされたまま、自分の輪郭が溶け、言葉が通じなくなり、意思とは関係なく別のものになってしまうあの感じ。もしそれが、成長期のある一時期に、ふいに訪れるものだとしたら、彼が虫になったのも、私がわかめになったのも、そう遠くない関係にある出来事なのかもしれない。

 成長といえば、毎日ミシミシと音を立てて成長をし続ける身体が我が家には2つある。娘たちをみていると、身体は、成長の途中で、勝手に何かを生み、また勝手に手放していくものなのだ、ということをまざまざと感じる。そして、私が忘れ去っていた身体の不思議を、ぎょっとする形で思い出させてくれる。蛹から蝶が生まれる前に血のような液体を出すことや、植物が花開く瞬間が、美しくもありグロテスクでもあるように。長女に奥歯が生えてくる前のことだ。

~ウィッチンケア第16号掲載〈からだは覚えている〉より引用~

野村佑香さん小誌バックナンバー掲載作品:〈今日もどこかの空の下〉(第6号)/〈物語のヒツヨウ〉(第7号)/〈32歳のラプソディ イン マタニティ〉(第8号)/〈二人の娘〉(第10号)/〈渦中のマザー〉(第12号)/〈おしごと ~Love Myself~〉(第13号)〈地中海の詩〉(第14号)〈はじめの一歩〉(第15号)

 ※ウィッチンケア第16号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!
 

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2026/05/11

vol.16寄稿者&作品紹介22 渡辺祐真さん

 前号(第15号)には〈無益評論家として生きていく〉という、書評家としてのご自身のスタンスについての一篇をご寄稿くださったスケザネさん、こと渡辺祐真さん。今回のウィッチンケア第16号への寄稿作は〈まさか空海にハマるとは思わなかった〉...じつは渡辺さん、昨日(5月10日)のXで〝『中央公論』6月号の特集「令和に読み直す司馬遼太郎」に寄稿しました!/テーマは、『空海の風景』!〟との告知。さらに、続けて〝ちょうど空海に関する本を出すので、本当に嬉しい仕事でした。(詳細はそろそろ出るはず)〟とも。じつは筆者と今号への原稿打ち合わせ段階で「空海に関する本を出す」とのお話は少しだけ伺っておりました。ある意味、今後さらに情報解禁されるであろう新しいご著書の、映画で言うところのtrailer? いや、きっと膨大な情報量の1冊になりそうなので、小誌寄稿作はそれよりもさらにサワリ的なteaser作品なのだと思います。そうだ、本作の冒頭近くにも〝空海や仏教に関連した本は百冊以上読み、高野山と海岸寺(香川県にある空海ゆかりの寺)に一週間ほど泊まり込んだ。現在それらの成果を生かして、空海に関する著書も準備中だ〟との一文がありましたね!


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空海。弘法も筆の誤りの、弘法大師様。NHKの大河ドラマでもまだブルーオーシャンな奈良〜平安初期時代のお方で、そんないにしえの偉人にスケザネさんはなぜ〝取り憑かれたのか〟? 筆者は、まず空海を〝「日本最古の哲学者」〟と捉え、そのめざましい功績として「即身成仏」という思想=〝この世に存在するあらゆる生命を救うこと〟に言及。そのうえで、空海の波乱万丈な人生について、独自の語り口で紐解いてくださるのですが...本作のおもしろさの核は、歴史の教科書などからでは伝わらない空海の人としての魅力を、スケザネさん語法で、スーパーヒーローのように描いていること、と私(←発行人)は感じました。



《熱意と才能と運に恵まれた空海の生涯》という小見出しを立てた章で、筆者は〝空海はすべて満点だ〟と述べています。満点、とは? 満点だと、なにが起きる? この、読書家ならではの満点評価については、ぜひ小誌を手にとってお確かめください。また作品後半では、空海とセットで学校の教科書に登場した、最澄についても触れられています。この2人の関係性などまったく忘れ果てていた私...あらためて勉強になりました。そしてそう遠くなく上梓されるであろう渡辺さんの新刊、ぜひ読んで、さらなる精進を思うのでありました。


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ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税) 
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E

 まず、最古の哲学者という点である。あまり知られていないが、空海は膨大な著作を残している。筑摩書房から刊行されている『弘法大師空海全集』という著作集は全八巻で、ページ数は五千を超える(現代語訳、注釈など含む)。しかも仏教から、漢詩の実作、漢文や漢詩の執筆術、日本初の辞書など、ジャンルは広範。中国思想やインド思想の養分もたっぷりと吸収しており、極めて論理的に記述されている。だから語弊を承知ながら、「日本最古の哲学者」だと思う。
 最古とはどういうことか。空海は西暦774年に生まれ、835年に入滅した。つまり奈良時代から平安時代の初頭を生きた。紫式部や清少納言より百年程度、在原業平や小野小町より数十年は年長だ。同時代には初代征夷大将軍の坂上田村麻呂、平安京の遷都を行った桓武天皇らがおり、『万葉集』や『古事記』が成立した頃でもある。彼に先立つのは聖徳太子くらいだろうか。だがその仕事量に鑑みれば、空海が最古といってもいいと思う。

~ウィッチンケア第16号掲載〈まさか空海にハマるとは思わなかった〉より引用~

渡辺祐真さん小誌バックナンバー掲載作品:無益評論家として生きていく〉(第15号)

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2026/05/10

vol.16寄稿者&作品紹介21 オルタナ旧市街さん

 ウィッチンケア第14号からの寄稿者・オルタナ旧市街さん。noteの日記「4月の旧市街」を拝読するとたいへんお忙しかったようですが、それでも先日(5月4日)の文学フリマ東京42では、既刊『ポルトガル退屈日記』『something good』とともに冊数限定の新作『Romantic Escape(浪漫的大脱走)』も揃えて出店なさっていて。今回の文フリ、ウィッチンケア書店とオルタナさんのブースは同じ「L」列だったので、私(←発行人)は午前中にご挨拶に伺い、新作も無事ゲットすることができました。そんなオルタナさんの小誌今号(第16号)への寄稿作は〈ファッションとくらしのフロア〉と題された掌編小説。タイトルの印象だと長閑な日常の生活を連想しそうですが...これがけっこう怒涛の展開なのです。


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ある日、鍋の材料を買おうと子どもの頃から通い慣れたショッピングセンターに来た「わたし」。店内の生鮮食品売り場を目指したものの、なぜか、ファッションとくらしのフロアから抜け出せなくなってしまい...この先の展開、発行人的立場としてちょっとネタバレ厳禁! なラビリンス状態なのですが、フロア内の構造や商品の配置などがじつに込み入って描写されておりまして、ほんと、「神は細部に宿る」だなぁ。と。
物語の後半で、「わたし」は「田沢さん」という女性と巡り合うことになります。田沢さんと行動をともにしながら、ある瞬間に「わたし」は〝ガラスに映るじぶんの姿をみ〟て、〝カップのお茶を飲み干した瞬間、底に反射するじぶんと目が合った時のような感覚〟に囚われます。このあたりもネタバレ厳禁! なのですが、「わたし」が田沢さんに対して抱いた、直感というか、予感というか、天啓とでも言うものなのかの〝おそらく〟...これは、“正解”なのだと、拝読していて強く思いました。みなさま、ぜひ小誌を手にとって、「わたし」のとんでもないけれどもノスタルジックな邂逅を、追体験してみてください。


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ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税) 
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E

 そう広くもないフロアを見回してみてもわたしのほかに人の気配はなく、ただそのかわり、ショッピングセンターに特有のBGMだけがもったりと鈍い音を奏でていた。耳鳴りに似た少しだけざらつくサウンド。ここでしか聞くことの出来ない音楽が、今日はやけに緊張感をもって脳内に響いた。

 つるりとした床が続いている。売り場には他のあらゆるショッピングセンターと同様に、紳士用肌着や婦人服や靴下や寝具やスヌーピー柄のエプロンなんかがこまごまと陳列されていた。じぶんの意思では買った記憶がないはずなのに、どこかで見覚えのあるようなものばかりである。たとえば実家とかで。


~ウィッチンケア第16号掲載〈ファッションとくらしのフロア〉より引用~


オルタナ旧市街さん小誌バックナンバー掲載作品:長い長いお医者さんの話〉(第14号)〈氷を踏む〉(第15号)

 
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2026/05/09

vol.16寄稿者&作品紹介20 竹永知弘さん

 ウィッチンケアには今号(第16号)が初寄稿となる日本現代文学研究者/ライターの竹永知弘さんとは、昨春の文学フリマ東京40の会場でご縁ができました。文フリ...小誌は毎回、春だけ東京で出店していますが、この場所が新たな寄稿者との出会いのきっかけになること、少なくなかったりします。竹永さんとも、昨秋あらためて連絡を取り合って、では第16号に、と話がまとまり...そんな竹永さんは現在、『文學界』「新人小説月評」を担当なさっていまして、じつは小誌寄稿者には、なぜかこの役割を担った方が数名いらっしゃるのです。矢野利裕さん、荒木優太さん、宮崎智之さん、そして竹永さんで4人目なのでありました。


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〈幽霊と踊る男〉と題された竹永さんの寄稿作は、20世紀末〜21世紀初頭にかけて『週刊少年ジャンプ』に連載されたマンガ『シャーマンキング』についての、極私的なエッセイ。同作の連載期間は〝自分の小学生時代とほぼ重なっている〟とのことでして、そうした体験って私(←発行人)にとっての、『週刊少年マガジン』での『ゲゲゲの鬼太郎』みたいなものなのか...などと年齢差も感じつつ、ネットで公開されている同作品(の一部)とともに拝読しました。なにしろ寄稿作の冒頭、筆者は〝麻倉葉になりたかった。いや、正直いうと今でもなりたいと思っている〟と、『シャーマンキング』の主人公への憧れを表明していまして、これは想像するに、おそらく小説月評などでのご執筆とは異なるモードでのアプローチ。それでも、たとえば〝本作の「古い想像力」は、むしろ新自由主義的な価値観が支配的になった見通しの暗い現代のその先を、ささやかに照らしてくれる「星」になってくれるかもしれない〟といった論考は、やはり日本現代文学研究者ならではのものだなぁ、と。
本作の終盤で、竹永さんはご自身の現在の仕事についても触れていまして、それが冒頭(や表題)と三つ巴で括られていて、ちょっと痺れた。麻倉葉にはなれなかったけれど、〝シャーマンと研究者はちょっとだけ似ていると思う〟...『シャーマンキング』を筆者とリアルタイム共有をできなかった私ではありますが、ここで語られている「日本現代文学研究者としての矜持」には、深く深く肯いてしまったのでした。みなさま、ぜひ小誌を手にとって、私のように肯いてくださいませ。

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ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税) 
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E




 いちおう触れておけば、「シャーマン」の語をタイトルに関する本作の背後に色濃く存在するのは、ヒッピー的な、ニューエイジ的な、スピリチュアル的な価値意識である(主人公の名前からして「麻」の「葉」なのだから、何をか言わんや、という感じではあるけれども)。この意味で本作は、1990年代にかろうじて配達され得た1960年代的なオプティミズム=ラディカリズムの残り香だったのかもしれない(初期の麻倉葉の口癖は「なんとかなる」だ)。ゆえに当然というべきか、物語は次第にスペキュレイティブなほうに、精神世界的な内側にむかって折り畳まれていく。とりわけ「やったらやり返される」という因縁が前傾化してくる中盤以降、主人公たちはつねに逡巡し、躊躇い、いかに戦わないかを考えるようになり、挙句、葉はあっさりとシャーマンファイトを降り、シャーマンキングを巡る戦いから身を引いてしまうのである。

~ウィッチンケア第16号掲載〈幽霊と踊る男〉より引用~

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2026/05/08

vol.16寄稿者&作品紹介19 星野文月さん

 昨年11月に「Personal matters -結婚のこと-」をZINE形式で発表した星野文月さん。ウィッチンケアの前号(第15号)には〈野良犬に月〉という旅行エッセイをご寄稿くださいましたが、第16号には〈裂け目〉と題された掌編小説を。小誌巻末の【参加者のVOICE】には“今年のはじめに入院したときに見た夢の話を創作にしてみました”とあり、たしかに過去の記憶らしき断片がカットアップで連なるような展開は、ご自身を日常生活に留めておけなくなった(入院)状態だからこそ、なのだろうな、と。じつは私(←発行人)も数年前に野暮な案件でICUに放り込まれまして、その時の「なんでこんな夢を見てるのか?」みたいな制御不能状態、眠って起きたら数分しか経っていない時間の歪んだ感覚、などを思い出してしまいました。


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冒頭近くにある〝首をつたう汗で目を覚まし、それが夢だと認識してから、もう一度目を瞑った。瞼の裏でおぼろげに揺れる残像のかたちを追いかける〟という箇所がとてもリアルに感じられました。いまのは夢、と現(うつつ)に戻って、そしてまた(連続性があるのかないのかわからない)夢に入っていく、の繰り返し。作中の「わたし」はどうやら「家」と「家族」の記憶に引き摺られているようで、夢のある部分だけが妙に具体的だったり...夢の中にいる「わたし」の心の揺れが、細やかに描写されています。
〝「あーあ」と言いながらけらけら笑って〟いる、不思議な存在感の「父」。かつて〝いちばんつながっていた〟と思っていた「妹」。そして物語の終盤では「母」との関係性が、幻想的な逸話に仮託して語られているように感じられたりして。そして、これは個人的な推察なのですが、本作には「本作内では明らかにはしていない、ある設定」がなされているのではないかな、とも思えたりして。みなさま、ぜひ小誌を手にとって、星野さんの小説世界に彷徨い込んでみてください。

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ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税) 
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E

 ある冬の日、屋根の端っこに、見たことのないほど巨大なつららができて、その重みで古い屋根がばきっと音をたてて割れた。そこからめりめりと木が裂けて、巨大な穴が広がった。木の屑がいっせいに風で舞い上がり、吸い込まないよう息を止めた。突出した木の先端は脆く崩れ落ちて、干からびた人間の細胞みたいだった。
 そうして裂けた屋根の隙間から、空が見えたのだった。冬のくっきりと晴れた空が、家の中から。
 妹は口を「あ」の形にまあるくひらいた。父は「あーあ」と言いながらけらけら笑って、母はそんな父をたしなめるようにその肩をびしっと叩いた。それから4人で、いっせいに笑った。びっくりして、おそろしくて、それからおかしくて、とにかく笑うしかなかった。


~ウィッチンケア第16号掲載〈裂け目〉より引用~


星野文月さん小誌バックナンバー掲載作品:友だちの尻尾〉(第14号)/〈野良犬に月〉(第15号)

 ※ウィッチンケア第16号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!
 

 

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Vol.16 Coming! 20260401

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