ウィッチンケア第13号からの寄稿者・コメカさん...初寄稿作〈さようなら、「2010年代」〉は批評的エッセイだったものの、その後は小誌を小説発表の場にしておられまして、今号への寄稿作〈ゲームセンター〉でも独自の作風が際立っています。私(←発行人)はコメカさんのことを、TVOD(バンスさんと共同名義のテキストユニット)での評論活動で知りましたが、最近は、とくにXを拝見しているとニューウェーブ/テクノポップバンド「MicroLlama(マイクロラマ)」のメンバーとしてのポストが多く...コメカさんって、もしかすると、本質的にはクリティック<クリエイティヴ志向なのではないかな、なんて思ったりもしているのですが...いや、これは勝手な憶測ですね(スイマセン)。

〈ゲームセンター〉の主人公・「おれ」は、仕事後の終電での帰宅途中、〝普段は気にも留めていなかった雑居ビルの一階シャッターが、半分ほど開いてい〟ることに気付きます。覗き込んでみると、真っ直ぐな通路が伸びていて、かすかに〝ピコピコとした20世紀っぽいレトロな電子音〟が漏れ聞こえてくる。このあたりからもうしばらくは現代の話かな、と思って読んでいると、あっ、違うんだ。筆者がどの時代に設定して物語を構築したかは、ぜひ小誌を手にしてお確かめください(ネタバレ自粛/ヒント:このゲームセンターは現金のみで喫煙可能です/これ、ヒントになってるのか?)。「おれ」以外の登場人物としては、まず本作での狂言回しとも言えそうな、ゲームセンターの店主と思しきツナギ姿の小柄な中年男。他には「おれ」よりあとに店に入ってきて、先にシューティングゲームを始めた〝全身黒ずくめの小柄な女〟とか〝チンピラ風の若い男〟とか〝どう見ても小学生にしか見えない少女〟とか〝おれとおなじようなスーツ姿の恐らくサラリーマン〟とか〝やけに派手な格好をした老婆〟とか、どういう脈絡で集まってきたのかわからない人々が出てきますが...いや、脈絡(共通点)はあるのです、たぶん。そこでゲームに興じている人はみんな、ツナギの男が言うところの「そういう人」。そういう人、って!? 本作を読み終えると、きっとあなたの脳裏でもピコピコ音が鳴り始めますよ。

ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税)
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E
またいつの間にか近づいてきていたツナギの男が、おれの筐体を覗き込みながら言う。
「そういう人が、口コミ伝いでも無しに偶然ここに辿り着いたのは、運が良いですよ」
ニヤニヤしながらそう言って、画面の数字をメモ帳に書き留めている。
「そういう人って?」
「まあ、これから通ううちにわかりますよ」
男はメモ帳を片手に店の中央にある柱に向かって歩いていき、かけられていたいくつかのホワイトボードのひとつに、なにか数字を書き入れ始めた。男が言う。
「なんでもいいから、名前を言ってください」
「は?」
「あんたが出したスコア記録ですよ。なんでもいいから、プレイヤー名を決めてください。そのゲームだと、この店で歴代第九位の記録。あんたそのゲーム、たぶんはじめてプレイしたんでしょ? すごいことですよ」
~ウィッチンケア第16号掲載〈ゲームセンター〉より引用~
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