今年2月に「なぜかどこかに帰りたい」を上梓した姫乃たまさん。ウィッチンケアには掌編小説〈クランベリージュース〉を掲載した第12号以来の登場でして、おかえりなさい。じつは姫乃さん、小誌第6号と第7号にも小説をご寄稿くださっていまして(下記《姫乃たまさん小誌バックナンバー掲載作品》欄ご参照)、いまではめったに書店に出回らないその2冊、発行人直営のBASEとSTORESでなら残部少ですが入手可能。もちろん、某マーケットプレイスみたいなことはなく、定価/新品でございます。両作品とも時流に左右されない名作なので、ご存知なかった方はぜひぜひ!


出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税)
8月4日
デイルームのほうから患者さんたちの賑やかな声や、テレビの音が遠くに聞こえてくる時は、病室のベッドでうとうとしているのだけど、消灯時間が近づいて21時に廊下の電気が消え、22時にデイルームの電気が消え、さあ寝ましょう! となると緊張してしまって、同じベッドの上で完璧に目が覚めてしまう。
病室には時間を知る道具が無いのでわからないけど、毎晩電車の音がしなくなった後まで、だいたい二時間くらいは猫のぬいぐるみを抱いて、暗闇で目を閉じたまま寝返りを打っている。時折泣いてしまう。
こんな弱虫でよくいままで働いてこれたなと思う。同時に、こんなに弱虫だから働いてきたのだとも思う。
子どもの頃、時折訪れる眠れない夜の恐怖は今でも鮮明に覚えている。
いつもは起きている家族たちが眠っていて、窓明かりに照らされたシーツの影が皺だらけの老婆に見えて恐ろしかった。夜は私が眠らなければ、永遠に続くように感じられた。
あの夜の恐怖を踏みつけるように、たくさんの夜を遊び、働いて、生きてきた。
そしていま、またあの夜の中にいる。
~ウィッチンケア第16号掲載〈負けないで 〜閉鎖病棟入院日記〜〉より引用~
【最新の媒体概要が下記で確認できます】https://yoichijerry.tumblr.com/post/810515107182460928/






