俳優・野村佑香さんのウィッチンケア第15号への寄稿作は、昨年の春、人生の転機となったあるものとの出会い、そしてその後の活動についての一篇です。あるものとは、「インプロ」。私(←発行人)はお原稿が届いて初めてその存在を知りましたが、野村さんも作中で、〈以前に舞台で共演をした俳優の友人の、あるSNS投稿〉が楽しげだったので知った。と。しかし、筆者は積極的でポジティヴ。〈どういうものかよくわからないけれど、自分の中のどこかが「これは良さそうだ」と、心のどこかがウルトラマンよろしく、ピカピカ光っているのを感じた〉...という直感を信じて、その友人が薦めてくれたIMPRO KIDS TOKYO(以下、IKT)のファシリテーター・プログラムに応募したのです。それで、私もインプロついてもう少し詳しく知りたいな、と思いIKTの公式サイトにアクセスしてみたら、良い感じの説明が掲載されていました。《インプロとは、improvisatipon(英語)の略称です。単語を分解して見てみると、im-(…でない)+pro-(前に)+visation(見る)で、「先を見ることをしない」。つまり、今この瞬間に在り続け、準備したものを実施するのではなく、今の目の前の相手と関わりながら一緒に予期せぬ物語を作っていく過程です。》...なるほど、こういう概念での即興演劇のことなのか!
作品の前半部分では、俳優である野村さんの、「即興」に対する事前の考察も記されています。〈俳優として出演する際には、台本は始めから手元にあり、台詞は決まっていて、出演者と稽古を重ねることで作品が完成していく。そのプロセスが「舞台のお芝居」だと思っていた。だからこそ、芸術という面で「インプロ」を捉えたとき、最初に抱いたのは戸惑いだった。即 興劇? 台本がない? それで面白い芝居になるのだろうか?〉という一節は、人が新しいことに挑戦する時の期待と不安...二律背反な気持ちがよく伝わってきます(後半は、それに対する答えのような展開)。
インプロを始めたことでの「自身についての新たな発見」や、「仲間」として人と繋がっていく楽しさについても活き活きと語られています。私は演劇の経験はありませんが、音楽はちょっとものしたりするので、おー、これは事前に演る曲を決めてスタジオ入りするのと、ライヴハウスなどで始まっちゃったジャム・セッションみたいなものとの違いかな、などとも思ったのですが、果たして!? みなさま、ぜひ小誌を手にして、野村さんの「はじめの一歩」の様子を共有してみてください!
シンプルなゲームを通じて、私は自分が人と話している時に思考に入りがちである癖に気付いた。ついつい、仕事でも取材時などでも「先に何を聞こうか?」とか、次に質問できるフックとなるものを見つけたくて他のことを観察してしまったり……という自分の癖と繋がった。今ここにいるということは、きちんと相手を見て、相手の言葉に集中して、漏らすことなく聞くこと。自分の瞬間瞬間の「今の気持ち」に正直でいることのなのだ、と思った。この気付きから、リポーターとしての取材や生放送において「その場にいて」「相手と遊ぶ」ことができるようになり、これがとてもプラスになったと感じている。インプロは舞台上だけのものではなく、日常にも繋がっている。そう実感した二つの出来事だった。
~ウィッチンケア第15号掲載〈はじめの一歩〉より引用~
野村佑香さん小誌バックナンバー掲載作品:〈今日もどこかの空の下〉(第6号)/〈物語のヒツヨウ〉(第7号)/〈32歳のラプソディ イン マタニティ〉(第8号)/〈二人の娘〉(第10号)/〈渦中のマザー〉(第12号)/〈おしごと ~Love Myself~〉(第13号)〈地中海の詩〉(第14号)
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