2015/05/20

vol.6寄稿者&作品紹介29 柳瀬博一さん

小誌前号では<三浦半島からはじまり、房総半島で終わる>国道16号線を基軸に日本の<文明の、文化の「かたち」>を考察した作品を寄稿してくださった柳瀬博一さん。掲載誌面がなぜか突然NHKの「ドキュメント72時間 に映し出されて驚きましたが、今号ではその三浦半島にある「小網代の谷」の保全活動について、ご自身の体験をもとに紹介してくれました。柳瀬さんはNPO法人 小網代野外活動調整会議」の理事として、母校である慶應義塾大学の岸由二教授等とボランティア活動を続けています。

小網代の谷の特徴は<「流域」がまるごと自然のまま残っている>こと。1960年半ばまでは地元民にとっての里山で、木道以外の人工物が一切なかった土地...それが時代の紆余曲折を経ても、そのままの姿をとどめていることです。写真等でもわかりますが、試しにGoogleマップで見てみると、小網代の森〜白髭神社のあいだは川が流れているだけで、他にはみごとに、なにもない! 寄稿作内ではこの土地が辿った数奇な歴史が詳しく記されていますが、「NPO法人 小網代〜」HPの<保全の歴史>の項にある年表を参照すると、企業や行政との関係もリアルに垣間見ることが...

個人的にもこの地域は若い頃によく遊びにいった場所。小網代から約2キロほど北西の三戸周辺は「彼女が水着にきがえたら」(ユーミンとスキーでヒットしたから二匹目はサザンとマリンスポーツ、というバブル時代の映画...)のロケ地だったはずで「サーフサイドビレッジ には私も泊まったことあったなぁ...なんて私の与太話はどうでもいいですが、しかし当時の実感覚からしてもあの一帯はまちがいなく「ドル箱リゾート」で、...よく残ったなぁと。いや、「残った」のではなくて、現在の姿に「開発」された、ということを、柳瀬さんの寄稿作で知りました。環境保全への取り 組みについて、示唆に富んだ、とても大事なことが書かれています。ぜひ本編を、多くのかたに読んでもらいたいと願います。

1月に「インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ を上梓した柳瀬さん(小林弘人氏との共著)。同書やSNSでの書き込みでは簡潔な文章に接することが多いですが、小誌では尺の長さを活かした、情報ととも に情緒も伝わるような文体で自然を描いています。<あなたが雨粒になって、この小網代源流部に降り注いだとしよう。あなたはマテバシイの葉の上で跳ね、幹を伝って地面につき、他の雨粒といっしょに急な斜面を流れ落ち、小さな川に注ぐ。川の水となったあなたは、くねくねと谷を下る。流れの中にはサワガニが潜 んでいる〜後略〜>と、まるでSFの加速装置がオンになったように、源流から海までの光景が切り替わっていく。本作を読んで小網代に魅せられたかたは、ぜひ毎月第3日曜日におこなわれるボランティアウォークにご参加を!

 
 このゴルフ場開発計画が、結果として小網代の自然を生み、そして守ることになる。リゾート開発が、ある意味で小網代の自然を保全したのだ。大規模 開発が計画された小網代の谷は、市街化地域にもかかわらず、数十年にわたってほったらかしとなり、一軒の家も路もつくられなかった。周囲の自然が次々と宅 地へと変貌していく中で。小網代の薪炭林は自然林へ、水田は湿地へと推移し、見事な「野生の自然」へと戻っていったわけである。
 そんな小網代の谷に、私が岸先生につれてこられたのは授業をとっていた1985年夏のことだった。偶然できあがった小網代の自然がゴルフ場に変貌するやもしれない直前である。
  オオバヤシャブシの枝から滴り落ちる樹液に、カブトムシやクワガタが群がる。川沿いの土手に堀った穴から真っ赤なハサミをふりかざす無数のアカテガニ。広 大なアシハラの緑を風が渡るのが見える。オニヤンマが悠々とその上を飛ぶ。広大な干潟には数千のカニたちがうごめき、満ち潮ともなればイワシの群れを追っ てスズキが入ってくる。河口のよどみには大きなウナギが顔をのぞかせ、頭上にはオオタカが舞い、鋭い声をあげカワセミが光の矢となって、湾を渡る。
 一目惚れだった。初めて出会った小網代の谷に。自分が小さな頃から図鑑で見てテレビで見て思い描いていた「理想の自然」がそこにあった。

ウィッチンケア第6号『ぼくの「がっこう」小網代の谷』(P172P181)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/115274087373/6-2015-4-1

cf.
16号線は日本人である。序論

Vol.8 Coming! 20170401

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