小誌前号には「工場」という、ご自身初の小説作品をご寄稿くださったコメカさん。私(←発行人)はその後、昨年10〜12月に町田市民文学館ことばらんどで開催された《森村誠一展》での関連イベント(座談会)「森村誠一のいた1970から1980年代 角川文化をめぐって」でご一緒する機会があり、コメカさんのテキストユニットTVODでのパートナー・パンスさんも交えて楽しい時間を過ごしました。座談会での私の立ち位置は、いわゆる角川商法勃興時の生き証人的な...あのころ感じ取ったキワモノ感を説明しようとしたのですが、もしかすると「原田知世は可愛い」しか伝わらなかったかもしれず...スイマセン。会場には小誌寄稿者・円堂都司昭さんもいらっしゃっていて、角川映画のポイントを体系的に説明してくださったり(大感謝!)。今年1月、円堂さんの「坂本龍一語録 教授の音楽と思考の軌跡」(ぱる出版)刊行記念イベントが新宿ROCK CAFE LOFTであってTVODのお二人が登壇されましたが、ことばらんどでのイベントが共演のきっかけになったのだとしたら、発行人として嬉しい限りであります。
コメカさんの小誌今号への寄稿作は、再び小説で「カニ人間」。鋭い切り口でサブカルチャー批評などを繰り広げるコメカさんが、なんと、サブカルっぽい作品(...と評して良いのかな?)の作り手として世に送り出した、異色の一篇でございます。コメカさんはTVOD以外にも、早春書店の店主、テクノポップバンド・MicroLlamaでの活動と多彩な面をお持ちですが、本作もさらなる新生面というか...↑のほうで自分のことを「角川商法勃興時の生き証人」なんて書きましたが、そういう意味合いでは私、家のモノクロテレビでTBSのタケダアワーをリアルタイムで見た記憶があったりするので、そんな人間としては「カニ人間」を読み、これは令和の「ウルトラQ」か「怪奇大作戦」か、なんて思ったのでした。
「ぐちゃ。ぼきぼき。べちゃちゃ」...こんなOnomatopoeiaで描かれるシーンがある「カニ人間」。みなさま、ぜひ心して小誌を手に取り、本作を熟読し、そして、どうぞご無事でご帰還くださいませ。
「……さばきでお願いします」
あまりに声が小さくてはっきりしなかったが、良平の耳には、健太がそう呟き続けているように聞こえた。さばき? なんのことだかわからず、良平は健太の顔を見る。充血した目の瞳孔が開き、表情のない顔つきで、健太はカニ人間をじっと見ている。
~ウィッチンケア第15号掲載〈カニ人間〉より引用~
コメカさん小誌バックナンバー掲載作品:〈さようなら、「2010年代」〉 (第13号)/〈工場〉(第14号)
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