最近はテレビでお見かけすることも多い、朝井麻由美さん。たとえば「おしゃべりオジサンと怒れる女 」では古舘伊知郎さん、坂上忍さん、千原ジュニアさんといったトークの達人たちと「ぼっち」について論議。また「二軒目どうする?」にも出演して松岡昌宏さん、博多大吉さん等と飲み歩き...あっ、TOKIOは今年のGW前後、たいへんなことでしたが、松岡さんの立ち振る舞いは印象的でした。オールドな人間としては、彼が19歳で大河ドラマ「秀吉」の森蘭丸を演じたときの、あのキリッとした感じを思い出していました。
さて、朝井さんの今号への寄稿作。お話の舞台は東京・中央線沿線。語り部は、かつて毎週のように会っていた亜美ちゃんとのできごとを回想しています。<吉祥寺と西荻窪と中野の位置関係に、亜美ちゃんが気づかないことを願った>という一文からも察せられますが、亜美ちゃんにかなり気遣いしながら関係性を保っていたようで、その理由は終盤でぽつりと明かされているのですが...多感な思春期に時間を共有した<身長差が30センチもある上に、細身とぽっちゃりという真逆の体型>の2人の、外側からは窺い知れない心模様が不思議な余韻を残します。ふと思ったのは、もし亜美ちゃんがいま、語り部についての物語を書いたら、全然違うものになるんじゃないかな。語り部からは携帯メールに返信をくれない<筆不精な子だった>と描かれてますが、相手によってはまめに返信してたり...。いや、わからない。わからないままでいいんだと思います。
読んいてでいくつか心に浮かんでくる謎は、最後まで謎のまま。でも、語り部と亜美ちゃんの最新の関係(意外なような、順当のような)はしっかり記されています。でっ、最後まで読むとタイトルの秀逸さが際立ってくるのです。みなさま、ぜひ小誌を手にして、全篇くまなく目を通してみてくださいね。
前々作「無駄。」でも前作「消えない儀式の向こう側」でも感じましたが、朝井さんの作品には独自の「寸止めの美学」のようなものに貫かれていて魅力的です。今回は締め切りと出張が重なったうえに、インフルエンザも患われて(寒い冬でした...)。それでもきちっとこの一篇を仕上げてくださったこと、あらためて感謝致します!
それを亜美ちゃんに黙っていたのは、亜美ちゃんに遠慮させたくないという、自分なりの精一杯のカッコつけのようなものだろうと思う。それに、「帰り道だから」と軽快に始まったのだから、軽快なままでいなければならなかった。たまたま名簿の順番が隣で、たまたま一緒にいるだけ。たまたま帰り道が一緒だったから、じゃないと知られてしまったら、この集まりが終わってしまうかもしれない。「吉祥寺のマクドナルド」がなくならないように、吉祥寺と西荻窪と中野の位置関係に、亜美ちゃんが気づかないことを願った。
ウィッチンケア第9号「恋人、というわけでもない」(P134〜P136)より引用
goo.gl/QfxPxf
朝井麻由美さん小誌バックナンバー掲載作品
「無駄。」(第7号)/「消えない儀式の向こう側」(第8号)
http://amzn.to/1BeVT7Y
Vol.14 Coming! 20240401
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