2019/05/13

vol.10寄稿者&作品紹介12 野村佑香さん

女優の野村佑香さんから最初にご寄稿いただいのは、2015年4月発行の小誌第6号。どんな年だったかというと、ザハ・ハディッド設計のヱヴァンゲリヲンみたいな新国立競技場のデザインが白紙撤回、それだけでなく、来年の東京五輪エンブレムにも盗作疑惑が持ち上がってこちらもリセット、という年でした。元号が改まり、オリンピックのチケットも発売された現在からすると、ずいぶんむかしのように感じられますが、この間に野村さんは二人のお嬢さまのおかあさまに。今号への寄稿作は、まさに二人目のお嬢さまが誕生する寸前という、とてもたいへんな時期に執筆してくださった一篇です。

編集者としては、いま思い返しても頭が下がる思い。「寄稿します」とのお返事は昨年中にいただいていたものの、メールで届いたお原稿(早め早めに進めてくださっていた)には「もう産まれそうです」との書き添えが! 原稿チェックをして、ゲラ(著者のための校正紙)をどのタイミングで送れば、ご負担が最小限に抑えられるのか...いや、そもそも、そんな人生の大事なときにこちらの都合でお願いごとなどする私は、人としてどうなの? 幸いなことに経過は順調で、数週間後のゲラ校正作業は、おそらく“新たな家族の一員”と寄り添ってなさってくれたのか、と。そして、テキストとして記録された寄稿作は、まさに出産直前の母親の、揺れる心情が描かれたものとなりました。月日は流れ、桜が咲き、小誌も予定どおり発行され...大型連休や母の日(昨日)には、野村さんが仲睦まじいご家族のスナップをSNSにアップされています。上のお嬢さま誕生の逸話も〈32歳のラプソディ イン マタニティ〉という作品でご寄稿いただきましたが、写真を見ると、その子がもうすっかり愛らしいおすましさんに育って、心なしか妹への気遣いをしているような立ち姿。いつの日か、ぜひ二人のお嬢さまに「母のエッセイ」を読んでもらいたいと、編集者として切に願います。

表題の〈二人の娘〉は、野村さんとご相談しながら決定しました。こどものいない私にとって、二人目が産まれるということは夫婦の問題だけでなく、ご長女の問題でもある、という視点が、お原稿を拝読するまで決定的に欠けていました(恥)。「私達夫婦は願えども、彼女が願ったわけではない第二子」...はっ! 二人の娘さんの母になるということは、出産のたいへんさだけでなく、将来の家族像を描きながら、いたわりあって日々の生活を送ることでもあるのか!! 野村さんの作品を通じて、私も学ぶことができました。みなさま、ぜひ小誌を手にして、「母親の思い」の繊細さや奥深さを感じてください!



 でも、何よりも長女の精神的ケアを優先しなければ、と心に決めている。私達夫婦は願えども、彼女が願ったわけではない第二子。なんせ彼女は、第一子にして初孫なのだ。周りから一身に愛情を受けて来た彼女が、第二子誕生後の日々にどんな気持ちを抱くのか、想像すると切なくなる。今では「ママのお腹のベイビーは〇〇ちゃん」「わたしの妹の〇〇ちゃん」「〇〇ちゃんが産まれて来たら、四人家族」と、自らお腹の子を話題にしてくれる彼女だが、こうして受け入れてくれるまでには、長い道のりがあった。
 実は、第二子が欲しいと願いながらも、三、四年上の子と歳の差があった方がいいよね……と思っていた時に、まさかのタイミングで来てくれた二人目の子。授かりものだとは頭で分かっていながらも、自分自身が戸惑ってしまい、受け入れるまでに少しかかった。

ウィッチンケア第10号〈二人の娘〉(P072〜P077)より引用

野村佑香さん小誌バックナンバー掲載作品今日もどこかの空の下(第6号)/物語のヒツヨウ(第7号)/32歳のラプソディ イン マタニティ〉(第8号)

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Vol.14 Coming! 20240401

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