品川区の東急目黒線「不動前」駅近くにあるフラヌール書店の店主・久禮亮太さん。ウィッチンケア第13号には同店がオープンするまでのことを〈フラヌール書店ができるまで〉という一篇にまとめてご寄稿くださり、以後も店でのお客様とのやりとりなどを、日記形式のエッセイで書き続けています。そんな久禮さんの今号(第16号)への寄稿作は〈ブックカルテはじめました〉。ブックカルテとは利用者の性格や読書傾向、ニーズに合わせて、プロの書店員が選書するサービスのこと。久禮さんのやりかたは作品冒頭で〝ご要望に合わせて、私が一万円分の本を選びます。毎月7人、これまでに40人ほどの方に、本に手紙を添えてお送りしました〟と説明されています。久禮さんは音楽にも精通していますが、なんだか「本のDJ」みたいだ、と私(←発行人)は思いました。


ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税)
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税)
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E
教育系の仕事に従事していて、ゲーム、本、映画、料理と食べ歩きが好きで、二次創作の同人活動をしている、昼夜逆転気味、潔癖症で「ゴミ捨て場の傍などは極力近寄りたくない」という女性は、20冊ほどの愛読書リストに添えて、こんなふうにカルテに書いてくれました。
家族の絆を無条件に賞揚する物語や「とんでもない悪人が謝っただけで許されるような話」は苦手。「血縁はただ血が繋がっただけの他人」、「自分に厳しく他人に甘く」、「期待しなければ落胆もしない」。ぼんやりものを考えるための時間を大切にしていて、「セルフネグレクトしている方が居心地がいい」と自嘲気味に綴ります。「美味しいもの食べてよく寝れば大概のことはなんとでもなる」と楽観的な一面もあって、「知識は人を裏切らない」と、学ぶことに積極的なのも印象に残りました。
一読して、ユーモアのある方だと感じました。家族愛を信じない、他人に期待しないとは言うけれど、友人の世話を焼くのが好きらしい。セルフネグレクトとは言うけれど、美味しい食事でセルフケアもしている。そんな矛盾したご自身の心情をカリカチュアライズしているように読めたからです。
しかし自嘲的な語り口とはいえ、その根っこにある思いを知ってほしいという気持ちは真剣なもののように感じました。セルフネグレクトは誰かをケアする、してきたことの反動かもしれません。それは家族への思いと関係があるのかもしれません。いや、ないのかもしれません。そもそも、そこまで読み取るべきなのか。読み取り方が私自身の経験に引き寄せすぎているのではないか。そんなふうに、相手との距離感に迷いながら数日間うっすらと考え続けます。
結局、私はこんなふうに手紙を書きました(一部省略しつつ引用。選んだ本のタイトルは伏せておきます)。
家族の絆を無条件に賞揚する物語や「とんでもない悪人が謝っただけで許されるような話」は苦手。「血縁はただ血が繋がっただけの他人」、「自分に厳しく他人に甘く」、「期待しなければ落胆もしない」。ぼんやりものを考えるための時間を大切にしていて、「セルフネグレクトしている方が居心地がいい」と自嘲気味に綴ります。「美味しいもの食べてよく寝れば大概のことはなんとでもなる」と楽観的な一面もあって、「知識は人を裏切らない」と、学ぶことに積極的なのも印象に残りました。
一読して、ユーモアのある方だと感じました。家族愛を信じない、他人に期待しないとは言うけれど、友人の世話を焼くのが好きらしい。セルフネグレクトとは言うけれど、美味しい食事でセルフケアもしている。そんな矛盾したご自身の心情をカリカチュアライズしているように読めたからです。
しかし自嘲的な語り口とはいえ、その根っこにある思いを知ってほしいという気持ちは真剣なもののように感じました。セルフネグレクトは誰かをケアする、してきたことの反動かもしれません。それは家族への思いと関係があるのかもしれません。いや、ないのかもしれません。そもそも、そこまで読み取るべきなのか。読み取り方が私自身の経験に引き寄せすぎているのではないか。そんなふうに、相手との距離感に迷いながら数日間うっすらと考え続けます。
結局、私はこんなふうに手紙を書きました(一部省略しつつ引用。選んだ本のタイトルは伏せておきます)。
表層的な感動や世間の「お約束」に懐疑的で、ご自身の思考が熟成することを大切にしていらっしゃるのですね。「ぼんやりものを考えるための時間」が大切で、「セルフネグレクトしている方が居心地がいい」のは、私もまさにそうです。きっとほとんどの時間、意識的にも無意識的にもたくさんのことを考えてしまう分、そういう余白が必要なのかもしれませんね。
家族愛に潜むある種の欺瞞や脆さを描きつつ、人とAIの間に心のつながりが生まれる奇跡とその儚さを描いた作品として『◯◯◯◯◯◯◯◯』をお薦めします。AI(作中では「人工親友:AF」)のクララは純真で感情豊かな眼差しで人間社会の機微を観察します。その透徹した視線は、読む私たちに哲学的な思考の糸口を与えてくれるようにも思います。
~ウィッチンケア第16号掲載〈ブックカルテはじめました〉より引用~
久禮亮太さん小誌バックナンバー掲載作品:〈鈴木さんのこと〉(第6号)/〈フラヌール書店ができるまで〉(第13号)/〈フラヌール書店一年目の日々〉(第14号)/〈フラヌール書店二年目の日々〉(第15号)
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