2026/05/10

vol.16寄稿者&作品紹介21 オルタナ旧市街さん

 ウィッチンケア第14号からの寄稿者・オルタナ旧市街さん。noteの日記「4月の旧市街」を拝読するとたいへんお忙しかったようですが、それでも先日(5月4日)の文学フリマ東京42では、既刊『ポルトガル退屈日記』『something good』とともに冊数限定の新作『Romantic Escape(浪漫的大脱走)』も揃えて出店なさっていて。今回の文フリ、ウィッチンケア書店とオルタナさんのブースは同じ「L」列だったので、私(←発行人)は午前中にご挨拶に伺い、新作も無事ゲットすることができました。そんなオルタナさんの小誌今号(第16号)への寄稿作は〈ファッションとくらしのフロア〉と題された掌編小説。タイトルの印象だと長閑な日常の生活を連想しそうですが...これがけっこう怒涛の展開なのです。


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ある日、鍋の材料を買おうと子どもの頃から通い慣れたショッピングセンターに来た「わたし」。店内の生鮮食品売り場を目指したものの、なぜか、ファッションとくらしのフロアから抜け出せなくなってしまい...この先の展開、発行人的立場としてちょっとネタバレ厳禁! なラビリンス状態なのですが、フロア内の構造や商品の配置などがじつに込み入って描写されておりまして、ほんと、「神は細部に宿る」だなぁ。と。
物語の後半で、「わたし」は「田沢さん」という女性と巡り合うことになります。田沢さんと行動をともにしながら、ある瞬間に「わたし」は〝ガラスに映るじぶんの姿をみ〟て、〝カップのお茶を飲み干した瞬間、底に反射するじぶんと目が合った時のような感覚〟に囚われます。このあたりもネタバレ厳禁! なのですが、「わたし」が田沢さんに対して抱いた、直感というか、予感というか、天啓とでも言うものなのかの〝おそらく〟...これは、“正解”なのだと、拝読していて強く思いました。みなさま、ぜひ小誌を手にとって、「わたし」のとんでもないけれどもノスタルジックな邂逅を、追体験してみてください。


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ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税) 
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E

 そう広くもないフロアを見回してみてもわたしのほかに人の気配はなく、ただそのかわり、ショッピングセンターに特有のBGMだけがもったりと鈍い音を奏でていた。耳鳴りに似た少しだけざらつくサウンド。ここでしか聞くことの出来ない音楽が、今日はやけに緊張感をもって脳内に響いた。

 つるりとした床が続いている。売り場には他のあらゆるショッピングセンターと同様に、紳士用肌着や婦人服や靴下や寝具やスヌーピー柄のエプロンなんかがこまごまと陳列されていた。じぶんの意思では買った記憶がないはずなのに、どこかで見覚えのあるようなものばかりである。たとえば実家とかで。


~ウィッチンケア第16号掲載〈ファッションとくらしのフロア〉より引用~


オルタナ旧市街さん小誌バックナンバー掲載作品:長い長いお医者さんの話〉(第14号)〈氷を踏む〉(第15号)

 
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Vol.16 Coming! 20260401

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