2016/05/20

vol.7寄稿者&作品紹介20 久禮亮太さん

久禮さんは2015年1月まで「あゆみBOOKS小石川店」店長を務め、独立。現在は「久禮書店」と名乗りフリーランス書店員の活動をしています。私は小誌今号完成後の3月末〜4月上旬、いろいろな本屋さんに「取り扱いご検討ください」と〝営業〟しましたが「久禮さんが書いているのですね」と言われること、少なくなかったです。「久禮さんが颯爽堂の鈴木さん(鈴木孝信氏)について書いてるんですか!」とさらに突っ込んで驚かれたことも。

私は四半世紀以上本にまつわる仕事をしていますが、小誌を発行してみて、自分の居た(る)場所は川のダム近辺なんだな、と再認識しました。上流で生まれた企画を入稿締切までにまとまったデータにまとめて印刷工程へとバトンタッチするまでの、場所。そこから先は...通常業務(ライター/エディター)では、だいたいもう次の企画が上流から流れてきてるんで、そっちに掛かり切りになってるうちに「あ、もう発売ですね」と届いた掲載誌見たり(最近はアマゾンの告知見る、がリアルかな)。データは本になって海へと流れ込み...久禮さんはその大海をご自身のフィールドとしてキャリアを重ねている方。そして私は小誌を介して海での泳ぎ方を少しずつ身につけていますが(まだまだ!)...大海では、久禮さんの活動に多くの注目が集まっていることを実感しました。

作品内には<このごろの出版書店業界の話題といえば、出版不況だなんだと抽象的な大状況ばかり語られるか、町の本屋が閉店すればそれを惜しんでノスタルジックな思い出話ばかりされる>との一節。ニュースでも大型書店閉店などと。5〜6年前のレコード屋の状況に似ているように思えるな。20世紀末頃それまで「あそこに行かなければ!」という店が多店化、タワーレコードやHMVやWAVEやヴァージン・メガストアーズがいっぱいできたけど...個人的にはHMV渋谷の最期の頃、ONE-OH-NINE時代っぽいものは全部上の階にいっちゃって、井の頭通り側の路面から入ると「なんでここまできてハマサキとマライアキャリ〜ばっかなんすか?」って思い出があって、そこから何年で閉店だったんだっけ。いや、エジソンとグーテンベルクとしても歴史の重みが5倍くらい違う(!?)から、同じではないと思うけど。

<書籍を扱う新業態へのチャレンジ>と<一般的な新刊書店の現場実務を指導>が現在の久禮さんの仕事、その活動の原点が熱く綴られた小誌今号寄稿作を、ぜひ多くの方に読んでもらいたいと思っています。



 2014年の秋、鈴木さんはあゆみBOOKSを去り、颯爽堂の経営に専念することになった。そしてあゆみBOOKSは2015年11月に書籍問屋の最大手、日販に買収されて経営陣は一新され、颯爽堂も休業してしまった。ほんの1年半の間に、すっかり状況が変わってしまったのだ。このまま忘れてしまう前に、本屋の仕事として鈴木さんが実践してきたことをまとめておきたいと思っている。

 鈴木さんは30代前半を南阿佐ケ谷の書店「書原」で店長として過ごしたあと、あゆみBOOKSに転職してきた。1980年代の終わり、あゆみにはまだ4つの小さな店舗しかなかった頃だ。まだ会社としてこれといった手法を確立していなかったあゆみに、本屋の職人技の数々を持ち込んだ。書原の創業者、故上村卓夫さん譲りのテクニック、スリップとデータと観察に基づいた「書棚編集術」だ。

 スリップとは、書籍に挟み込まれている短冊のかたちをした紙切れのことだ。そこには題名や著者、出版社などが印刷してあり、本が売れるたびにレジで抜き取って、束にして集めておく。それを見ていくことで、お客さんの興味や欲望を読み取っていく。

ウィッチンケア第7号「鈴木さんのこと」(P122〜P127)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/143628554368/witchenkare-vol7
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Vol.14 Coming! 20240401

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