2026/05/09

vol.16寄稿者&作品紹介20 竹永知弘さん

 ウィッチンケアには今号(第16号)が初寄稿となる日本現代文学研究者/ライターの竹永知弘さんとは、昨春の文学フリマ東京40の会場でご縁ができました。文フリ...小誌は毎回、春だけ東京で出店していますが、この場所が新たな寄稿者との出会いのきっかけになること、少なくなかったりします。竹永さんとも、昨秋あらためて連絡を取り合って、では第16号に、と話がまとまり...そんな竹永さんは現在、『文學界』「新人小説月評」を担当なさっていまして、じつは小誌寄稿者には、なぜかこの役割を担った方が数名いらっしゃるのです。矢野利裕さん、荒木優太さん、宮崎智之さん、そして竹永さんで4人目なのでありました。


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〈幽霊と踊る男〉と題された竹永さんの寄稿作は、20世紀末〜21世紀初頭にかけて『週刊少年ジャンプ』に連載されたマンガ『シャーマンキング』についての、極私的なエッセイ。同作の連載期間は〝自分の小学生時代とほぼ重なっている〟とのことでして、そうした体験って私(←発行人)にとっての、『週刊少年マガジン』での『ゲゲゲの鬼太郎』みたいなものなのか...などと年齢差も感じつつ、ネットで公開されている同作品(の一部)とともに拝読しました。なにしろ寄稿作の冒頭、筆者は〝麻倉葉になりたかった。いや、正直いうと今でもなりたいと思っている〟と、『シャーマンキング』の主人公への憧れを表明していまして、これは想像するに、おそらく小説月評などでのご執筆とは異なるモードでのアプローチ。それでも、たとえば〝本作の「古い想像力」は、むしろ新自由主義的な価値観が支配的になった見通しの暗い現代のその先を、ささやかに照らしてくれる「星」になってくれるかもしれない〟といった論考は、やはり日本現代文学研究者ならではのものだなぁ、と。
本作の終盤で、竹永さんはご自身の現在の仕事についても触れていまして、それが冒頭(や表題)と三つ巴で括られていて、ちょっと痺れた。麻倉葉にはなれなかったけれど、〝シャーマンと研究者はちょっとだけ似ていると思う〟...『シャーマンキング』を筆者とリアルタイム共有をできなかった私ではありますが、ここで語られている「日本現代文学研究者としての矜持」には、深く深く肯いてしまったのでした。みなさま、ぜひ小誌を手にとって、私のように肯いてくださいませ。

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ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税) 
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E




 いちおう触れておけば、「シャーマン」の語をタイトルに関する本作の背後に色濃く存在するのは、ヒッピー的な、ニューエイジ的な、スピリチュアル的な価値意識である(主人公の名前からして「麻」の「葉」なのだから、何をか言わんや、という感じではあるけれども)。この意味で本作は、1990年代にかろうじて配達され得た1960年代的なオプティミズム=ラディカリズムの残り香だったのかもしれない(初期の麻倉葉の口癖は「なんとかなる」だ)。ゆえに当然というべきか、物語は次第にスペキュレイティブなほうに、精神世界的な内側にむかって折り畳まれていく。とりわけ「やったらやり返される」という因縁が前傾化してくる中盤以降、主人公たちはつねに逡巡し、躊躇い、いかに戦わないかを考えるようになり、挙句、葉はあっさりとシャーマンファイトを降り、シャーマンキングを巡る戦いから身を引いてしまうのである。

~ウィッチンケア第16号掲載〈幽霊と踊る男〉より引用~


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Vol.16 Coming! 20260401

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