前号(第15号)での寄稿者&作品紹介で、私(←発行人)はふくだりょうこさんについて“号を重ねるにつれて作品内の毒素は強まっている”と記しましたが、あれから1年。ウィッチンケア第16号へのふくださんの寄稿作〈朝の温度〉は、まぎれもない修羅場小説です、修羅場。初寄稿だった第10号への寄稿作〈舌を溶かす〉の頃の作品は繊細な恋愛小説、という趣であったのに...なにが筆者をしてダークサイドに突き動かしているのか? とはいえ、今作で描かれている修羅場は、妙に落ち着き払っているというか、冷静というか、つまり切った張ったとか阿鼻叫喚的なことにはなっておらず、あくまでも会話と心理戦でことは運んでいます。


ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税)
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税)
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E
「じゃあ、なんのために私を連れてきたんですか」
女が問いかけた。そうそう。それ。私も聞きたかった。
「だって、君が比べろって言うから」
「比べろとは言いましたけど、並べろとは私は言っていません」
「う、うぅん……」
夫が指をくるくると回す。困ったときにやるクセだ。結婚式のスピーチでド忘れをし、ただ黙って指をくるくると回す謎の時間が生まれたことをふと思い出した。あのときは、この人が困っていたら私がサポートしてあげなくっちゃ、私がそばにいてあげなくっちゃ、と思った。懐かしい。残念ながら、今困っている夫をサポートすることはできない。もっと困らせることしかできない。
女が問いかけた。そうそう。それ。私も聞きたかった。
「だって、君が比べろって言うから」
「比べろとは言いましたけど、並べろとは私は言っていません」
「う、うぅん……」
夫が指をくるくると回す。困ったときにやるクセだ。結婚式のスピーチでド忘れをし、ただ黙って指をくるくると回す謎の時間が生まれたことをふと思い出した。あのときは、この人が困っていたら私がサポートしてあげなくっちゃ、私がそばにいてあげなくっちゃ、と思った。懐かしい。残念ながら、今困っている夫をサポートすることはできない。もっと困らせることしかできない。
~ウィッチンケア第16号掲載〈朝の温度〉より引用~
ふくだりょうこさん小誌バックナンバー掲載作品:〈舌を溶かす〉(第10号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈知りたがりの恋人〉(第11号)/〈死なない選択をした僕〉(第12号)/〈この後はお好きにどうぞ〉(第13号)〈にんげん図鑑〉(第14号)/〈お薬をお出ししておきますね〉(第15号)
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