2026/05/08

vol.16寄稿者&作品紹介18 綿野恵太さん

 今年1月に増補改訂版『「差別はいけない」とみんないうけれど。』(朝日文庫)が発売になった綿野恵太さん。今週月曜日(5月4日)に開催された文学フリマ東京42にも出店なさっていて、私(←発行人)はコピー本『自炊とメシと酒の話』をゲット。当日の綿野さんはネットショップ(BASE)「わたの商店」でも販売している〈おなか吹田市〉Tシャツを纏っていまして...この〈おなか吹田市〉というのは綿野さんのXでよく放たれるフレーズでして、もうひとつ〈銀だこは許さない〉というのもあって、私はなぜ許さないのか不明なのですが、Gemini曰く“大阪生まれの綿野氏はたこ焼きへの愛が深く、銀だこの揚げ焼きを「たこ焼きの歴史の歪曲」と批判。外が柔らかく中がトロトロな伝統的スタイルを理想とし、自ら焼く配信等でその美学をユーモア交じりに発信しています”と。...御本人に直接尋ねてみればよかったな、文フリで。


画像




さて、綿野さんが今号にご寄稿くださったのは〈会津、天空橋、丸の内〉と題された日記形式の一篇。「革命ってなんだったのかを考える本」という出版企画の下取材で訪れた場所での見聞が、時系列でまとめられています。【二〇二五年二月一〇日】には天空橋で1967年10月8日の第1次羽田事件(佐藤栄作首相の南ベトナム訪問阻止運動)の痕跡を発見するなど。【二〇二五年二月一二日】には丸の内で、さらに2つの大きな事件にまつわる場所を...それについては、ぜひ小誌を手にとってお確かめください。

3つの事件に関して、本作においては筆者の感情や意見が、ほぼ封印されているように読めます。下取材の日のできごとを淡々と綴り、それらの場所の、いまでは何事もなかったかのような様子を丁寧に描写。それでも、綿野さんの視点というか、この下取材の角度、みたいなものは、それとなく伝わってくるような気がしました。そう遠くない未来、世に出される「革命ってなんだったのかを考える本」がどんなものになるのか? とくに3つ目に扱われている事件、私はリアルタイムでニュースに接し「なぜこんなことをする人がいるのか?」と当時は理解できなかった案件なので、どのような論考になるのか、大いに興味があります。


画像
ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16) 発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税) 
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E


 弁天橋のすぐ近くに、護岸からかんたんな桟橋が伸びていて、コンクリートで固められた浮島のようなところに、水難者を供養するお堂がある。そのわきに、ちょうど弁天橋の方向を拝むようにしてお地蔵さんが立っている。毛糸で編まれた赤い帽子をかぶり、ベージュのマフラーを巻いている。台座の正面には「平和地蔵」とあり、しゃがみ込んで側面をのぞくと、「山崎博昭没後五十年二〇一七年十月八日建立」とあった。
 もう一つの記念碑は、橋から離れたお寺にあった。墓地のあいだを歩き回り、ちょうど一周したところで、入り口近くにあったお墓が記念碑だと気付いた。石碑には山崎博昭とだけ刻まれ、墓誌には「反戦の碑」とあるが、白い文字はかすれて読み取ることが難しい。
 弁天橋あたりを見終わって、記録用の写真を撮ろうとしたところ、Nさんが「あっ」と声を上げた。橋の欄干にある「辨天橋」というプレートに、ペットボトルが針金で巻きつけられている。それを花瓶替わりにして、二輪の花が供えられている。すでに茶色く枯れて、中の水も濁っていた。その横には、養生テープで貼り付けられた紙片があり、マジックで書かれた「10」という数字が見えた。

~ウィッチンケア第16号掲載〈会津、天空橋、丸の内〉より引用~

綿野恵太さん小誌バックナンバー掲載作品:ロジスティクス・ディストピア〉(第15号)

 ※ウィッチンケア第16号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!
 

 

 【最新の媒体概要が下記で確認できます】
 https://yoichijerry.tumblr.com/post/810515107182460928/

 


 

Vol.16 Coming! 20260401

自分の写真
yoichijerryは当ブログ主宰者(個人)がなにかおもしろそうなことをやってみるときの屋号みたいなものです。 http://www.facebook.com/Witchenkare