前号では「水野さんとの15分」というエモい恋愛小説をご寄稿くださった宇野津暢子さん。この2人いったいどうなるんだ!? と密かにさらなる“危険水域”な続編を期待していた発行人でしたがぁ、……諸般の事情が重なりまして、今号では私のほうから「次作、秋田しづかさんの選挙戦について記録を残してもらえませんか?」とお願いしたのでした。ええと、寄稿作を読めばおわかりのように、発行人の政治的思想信条云々とかそういうことではなく、生活に身近な一般選挙(地方の議会)がどんなものなのか、宇野津さんならきっとわかりやすく書いてくださるんじゃないかな、と思いまして。秋田さんはFacebookの「友達」で、同SNS内のいくつかのコミュニティを介して活動の様子を拝見していました。立候補表明後は拙宅の近所の神社前で立ち会い演説しているところに「頑張ってください!」とお声がけしたり(作中にも描かれていますが、ほんとうに「ややアニメ声」w)。とにかく、市政にはいろんな立場の人の声が反映されればいいと思います。
秋田さんの選挙戦の話なのですが、宇野津さんのお人柄が伝わってくるのも、この一篇の魅力。「チラシ1000枚配ろう大作戦」の箇所に“(私はこういう「みんなで」みたいなのは大の苦手なので、応援演説をしました)”との一文が挟み込まれていて、個人的には「ですよね〜」と激しく共感しました。宇野津さんはフリーランス・ライターとして仕事をしていて、「玉川つばめ通信」という個人主宰メディアの発行人。私も20代半ばからプーで小誌発行人。このタイプの人間は“「みんなで」みたいなの”、ホントに苦手というか、こそばゆいというか、そんなことに参加すると自分が崩壊しそうな気がするというか(※多田個人の感想です)。20代のころ、某社で先輩フリーランスのかたから「フリーの立場を向上させるための組合があるから参加しないか」と誘われて、そのときはその《一匹狼の集団》的発想が理解できなかった。...いまはちょっと違う考えかたができますよ、はい。でも若かりし日のオレは「それって豚の群れじゃない?」と毒づきそうなのをぐっと堪えて黙ってた、みたいな性根の痕がまだどこかに残っているかもしれず...とにかくいまだに“「みんなで」みたいなの”は苦手。
冒頭に紹介されている〝2連ポスター〟など、たしかに選挙って謎なことが多いなと思いました。選挙のプロらしき人の、選挙カーや公選ハガキに関する発言も嫌な感じで、政治なんてできれば関わりになりたくないって気持ちになってきちゃいます。だけど、だからこそ、“でも、しづかちゃんはそんな世界に入ろうとしている。いろんな人の顔を思い浮かべて、「青いねえ」と言われようと純粋な気持ちで地域の役に立ちたいと思っている”という、宇野津さんの友人を思いやる気持ちに、ぐっときてしまいました。ちなみに本日のネット炎上トピックNo.1は細田博之衆院議長の「毎月もらう歳費は100万円しかない」発言。
「しづかちゃん、今じゃなく4年後じゃダメなの?」
「うん。Aちゃんの自殺のこともあったしさ。風化させないためには4年後じゃ遅いんだよ」としづかちゃん。
Aちゃんとは私たちの地域の小学校で亡くなった女の子。いじめだ、いやいじめじゃないと、多くのいじめ話と同様、今もすっきりしないままだ。しづかちゃんの荒削りな進め方は「ええ? そんなに直球で?」とハラハラしたりもするけれど、純粋で猪突猛進で実行力も共感力も持ち合わせているのは彼女の長所で、政治家向きだと私は思っている。
〜ウィッチンケア第12号〈秋田さんのドタバタ選挙戦〉(P144〜P147)より引用〜