今回が初寄稿のすずめ園さんは、出雲にっきさんとともに自由律俳句のユニット「ひだりききクラブ」を主宰。自由律俳句とは有季定型(季語と五七五)に縛られず、自由に感情を表現しようとする俳句のこと。歴史を遡れば河東碧梧桐、種田山頭火、尾崎放哉といった我が国の文学史のビッグネームにまでいきつく詩歌/韻文のジャンルでして、誰もが知ってる尾崎放哉の「咳をしても一人」なんて、せきを/しても/ひとり(3×3=9文字)でものすごく孤独な情景が浮かんできます(ちなみにすずめさんのTwitterによると、“こっそり応募していた「第5回尾崎放哉賞」でわたしの作品が敢闘賞をいただきました”とのこと。おめでとうございます!)。「ひだりききクラブ」のお2人はほぼ同時期に、お笑い芸人・かが屋の加賀翔と放送作家白武ときおによる「エロ自由律俳句」、又吉直樹とせきしろによる自由律俳句集(「カキフライが無いなら来なかった」等)に出会ってその魅力に惹き込まれ、noteを利用して交換日記形式でみずから創作活動をスタート。なお、2020年7月からの作品は〈#ひだりききクラブの自由律俳句交換日記〉にまとめられています。
すずめさんの今号への寄稿作は「ひだりききクラブ」の誕生前史というか、短くもなく封印していた「俳人・すずめ園」誕生以前の、ご自身についての総括というか...とにかく、率直な語り口で、“ある時代”のことを文章として残した一篇。小誌発行後、SNSに「そうだったのか!」みたいな感想がいくつかアップされているのを拝見して、すずめさんが“ある時代”、ファンにとってとても大切な存在だったことがリアルに伝わってきました。あっ、もちろん私はすずめさんを木村重樹さんからご紹介いただくさい、どのような方か伺ってはいたのですが、掲載後の反響を目の当たりにして、あらためて燃焼の残像が見えた、というか。
ある特定の分野の話ということではなく、2020年代に人生の転機を迎えた人なら、誰でも共感を覚えそうな事柄がぎっしりと詰まった作品です。タイトルになっている「人間生活」という言葉に込められた筆者の思い、ぜひ多くの読者に届いて欲しいと願っています。そして「ひだりききクラブ」の活動や小誌への寄稿がきっかけとなり、すずめさんの表現者としての幅が、より多彩なものになりますように!
いつも通りヒルナンデスを見ていると、その日はお笑い芸人の「かが屋」が出演していた。即興で俳句を披露する加賀さんを見て、すごくかっこいいなと思った。放送後にかが屋のことを調べていると、「エロ自由律俳句」というワードが目に付いた。
〜ウィッチンケア第12号〈人間生活準備中〉(P058〜P061)より引用〜
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