今回が初寄稿となった青柳菜摘さんとは昨年の秋、私が書店営業をしていた途中で知り合いました。「次号はもっと多くの本屋さんで扱ってもらいたい」と考えた私は、日頃なかなか廻れない地域へご挨拶ツアー。江戸川区の平井の本棚さん、墨田区の書肆スーベニアさんなどから始めてじょじょに土地勘のある町へと寄せてきて、その日の最終目的地は池袋のコ本や honkbooksさん。正直に告白しますと、店のURLだけチェックしていて入店方法など調べず、勝手知ったるブクロ(出身大学アリ)だしと、とにかく住所だけ当てにして日没後に到着。...でっ、ない!? ないんですよ、書店らしきものが。周囲をウロウロしても、そこには病院とクレープ屋さんしかない。帰ろうかと思ったけれどもまだ営業時間中のはずなので、電話してみました。「迎えに出ますので裏手に回ってください」と、感じの良い書店員さん。すぐに降りてきてくれて、案内された病院の2階には、とても個性的な品揃えの本屋があるじゃないですか。しばらく店内を回遊し、第11号を見本誌として渡し「次号のお取り扱いご検討ください」とお願いして帰路についたのですが、あまりにも不思議な体験だったのと、対応してくださった人物のただならぬ気配を受信してしまったので、直感で「コ本やさんのことでもなんでも、とにかく小誌になにか書きませんか」と翌日メール送信。腰が軽いというか、個人誌ならではの自由なフットワーク。
その書店員が青柳菜摘さんだったのです。10代前半から「だつお」名義でpixivにイラストなどの創作作品を発表、その後東京藝術大学に進み、虫の成長を観察する映像作品をはじめ、メディアを横断して表現の可能性を広げる活動をしています。だから、コ本や honkbooksも、もちろん書店ではあるけれど、青柳さんを始めとした主宰メンバーにとってはアーティストとしての活動拠点...いや活動そのもののひとつの“かたち”なのかもしれず(公式サイトでは「プラクティショナーコレクティヴ」と表記)、そう考えると私の「本屋が見つからず途方に暮れたブクロの夜」も、アートのギミックにまんまと取り込まれた表現の一端だったのかもしれず...まあ、愉快な体験でした!
青柳さんの寄稿作「ゴーストブックショップ」は、コロナ禍に見舞われたこ本やメンバーが、「客足が鈍った」という状況を逆手にとってスタートさせたプロジェクトの顛末記。具体的には、2つのキーワードをもとにした本のセット販売を始めたことで、すでに「本として存在する本」(!?)にどれだけ飛躍した意味(←かな、違うかも/ゴーストの意向、とか?)を上書きできるのかを試してみた、そのことの記録と雑感です。本作を読んでコ本や honkbooksに興味を抱いた方は、ぜひ池袋にGO!
本棚は、人の手が触れることで注目を浴びる。触れるというのは実際手に取るだけではない。視線を一瞥くれてやるだけで、誰かの意識に残った一冊が動き出す。本の多くは所有者が一人だけではなく、セカンダリーに流通することで生き生きした装いになり、「古書」というものが産まれる。それゆえに、客の来ない店内は未来に進むまいとガチガチに固くなっていってしまう。休業要請は店舗を構える書店にとってそういった時間停止宣告でもあった。
ではどうやって本を人に触れさせるか、と考えた時にメンバーで話し合って出てきたのが「BOOK PROJECT〈2 KEYWORDS 古書パック〉」だった。ネットショップを通して、客に2つのキーワードを出してもらう。それらを元に、コ本やが本を選ぶというものだ。