かとうさんは今号、かなり爆発してます。こんなに饒舌でブラックな「わたし」が登場した寄稿作は、初めて!! ...それで、私はフィクションとして今作に感銘を受けたのですが、小誌制作関係の一人が「かとうさんの作品、エッセイですよね」と言いまして、えっ? と思ってそのつもりで読んだらそんな感じもしなくもなくなくってきてしまって...でもどちらにしてもこの怒りの洒落っ気というかかわいらしさ、かとうさんにしか書けない世界です!
「わたし」のデート相手の「その人」のセリフ(「帽子、似合うと思うよ」「かぶればいいのに」)が印象的なのですが、これってエヴァンゲリオンの「笑えばいいと思うよ」の本歌どりじゃないか? と私は思ったのですが、まさに「わたし」の対応は「ごめんなさい。こういう時どんな顔すればいいかわからないの。」...でも「私が守るもの」とは正反対の感情を持たれてしまってご愁傷様です、「その人」。
作中に「なにが楽しいのかわからないうぃんどーしょっぴんぐとかいうやつをするはめになっている」という一節が出てきます。平仮名で書かれていることでわかるように、「わたし」はウィンドウショッピングが全然楽しめない。でっ、かとうさんから最初に送られてきたテキストではこれが「うんどーしょっぴんぐ」だったんです。最初、誤植かと思った。しかし天才かとうさんなら<ウィンドウショッピング=(苦行のような)運動をさせられる買い物>として「うんどーしょっぴんぐ」という造語を主人公に言わせるかも!? そう思い至ったら、本作で一番含蓄のある箇所に思えたのですが...本人に確認したら「誤植です」と...ホッとしましたが少し残念。
そんなかとうさんが主宰する「お店のようなもの」は、横浜市南区中村町にあります。先日、小誌納品で近くの日ノ出町まで伺い、台湾料理「第一亭」でパタンとチートを食してきましたが、人気でびっくり! 他にも野毛や横浜橋商店街など、散策しがいのあるエリアがたくさんあるので、皆様、ヨコハマにお出かけのさいにはぜひ、訪ねてみてください〜。そして、かとうさんの小誌第3号掲載作「台所まわりのこと」は、ウィッチンケア文庫で全文読むことが可能、こちらもぜひ、ぜひ!
「見たい店ある?」「とくにないですね」「普段どういう店で服を買うの?」「もっぱらヤフオクですかね」とかいうまったく打てども響かない会話を交わしながら、その人にもとくに目的の店などなく目的なく歩くのが目的のようなので二人で歩いておりますと、ということはつまりぐるっと歩ききったら終わりなんじゃないかとここはぴゅーっと進みたいところ、一店一店もれなく覗いて回る展開でありまして、そしたら帽子しかないお店があって、「帽子、似合うと思うよ」「かぶればいいのに」だってさ。わたしは(とくに似合うと思わないし、そもそも……)と思ったので、
似合うとか似合わないとかじゃないんです、わたしが帽子をかぶるのは防寒のため、あるいは寝ぐせを隠したいときなんです。
そう答えたのですが、あとから考えるとすでにその人のその物言いに、いやなものを感じていたのかもしれない。しかしそれ以前から反感もあったのだと思います。だって(あ……)ってままわたしにとっては苦行のような煌びやかな空間にいて、10年ぶりくらいになにが楽しいのかわからないうぃんどーしょっぴんぐとかいうやつをするはめになっているんだからな。って、まあ、だからその人よりわたしのこういう物言いがやばそうだっていうのはわかってるんですけどね。
ウィッチンケア第7号「似合うとか似合わないとかじゃないんです、わたしが帽子をかぶるのは」(P110〜P114)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/143628554368/witchenkare-vol7
かとうちあきさん小誌バックナンバー掲載作
「台所まわりのこと」(第3号&《ウィッチンケア文庫》)/「コンロ」(第4号)/「カエル爆弾」(第5号)/<のようなものの実践所「お店のようなもの」>(第6号)
http://amzn.to/1BeVT7Y
Vol.14 Coming! 20240401
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