ほんとうは...オオクボさんの今号寄稿作は、もとになった書き下ろし作品のエディットver.なのです。もし小誌にもっと《体力》があれば、原型のまま一挙掲載できたのですが、そのためにはあと30ページは必要でして。今作を読んだ各方面関係の皆々様、ぜひフル・レングスver.に興味津々になっていただければ、発行人として嬉しく存じます。
オオクボさんの著書「ストレンジ・ブルー」は、2002年河出書房新社刊。クールスのメンバーだった時代を描いた自伝的小説で、アマゾンの<商品の説明>には〝ある日、舘ひろし率いるバイク・チーム“クールス”のバンドのメンバーに誘われ、いつのまにかキャロルのジョニー大倉と矢沢永吉をスタッフにレコーディングがはじまっていた…〟と記されています。まさか「ぎんざNOW!」等で観ていた方と後年原稿やりとりするなんて、想像もしませんでした。そして同作は現在、中古価格が軽く1万円を超えていまして...もっと入手しやすくなること、切に願います。
主人公・研一の目を通して描かれる夏穂は魅力的。作品内では〝夏穂はブスの方だったけど明るくて、ムチッとした健康的な色気があった。本当は四人の中で一番美しい日香里(ひかり/原文ではルビ)に惹かれたのだが、その近寄りがたい冷めた美に怖じ気づいてやりやすそうな夏穂を選んだのだ〟なんて書かれていますが、いやいや、いや(研一くらいの年齢の男子って、いまはみんなもっと草食系なのかな?)。夏穂は研一に決定的な影響を与える存在です。
物語終盤、年を経た研一は「あの夏に流れていた凝縮されたエネルギー」を確かめたくて、今井浜海岸を再訪します。作品内に何度も登場した、セミの鳴き声の意味するものとは...ぜひ本作を手にとってお確かめください!
気がつくと太陽は山の彼方に消えていた。自然の中で育まれた発芽を見守るような好意的な空気の中で研一は自分を肯定した。純真な性欲に罪はなく、むしろ崇高な衝動と考えていいはずだ。日常の背後にある扉が静かにひらいた気がした。世界はあきらかにさっきと違っている。だが、その違いを自分のものにするには少し時間を必要とした。じわじわと胸に湧き上がる誇らしい達成感に浸って研一は夏穂を抱き締めた。
夕食の時間が近づいて二人は山を下りた。歩きながら夏穂が、「アソコがヒリヒリする」と言ったのには驚いた。女の子がアソコの話をするなんて想像を絶していた。「ほんと?」としか言いようがなかったけど、こんな会話ができる親しみを研一は嬉しく感じた。それに、指先についた夏穂の匂いがさっきからまとわりついて離れないのだ。
そして夜は訪れた。
ウィッチンケア第7号「まばゆい光の向こうにあるもの」(P078〜P086)より引用
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Vol.14 Coming! 20240401
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