第2号以来、毎作異なるスタイル/新しいテーマでご寄稿くださる中野純さん。ホント、小誌の存在理由を楽しく理解してくれている、と心強いです。なにしろ小誌は小さくて新しいのでたとえば蜷川幸雄さんが灰皿を投げつけるような定番話ならなるべく大きくて歴史のある〝場〟...多くの人が「その話が聞けるから」と集う場がいいんじゃないかと思うのでして、これは私がものごころついた頃から「《歌うこと》についての歌」「《映画(を撮ること)》についての映画」などが退屈なのとも関係しているのかもしれず〜。
前作「つぶやかなかったこと」では果てしなくつぶやき続ける文体で独自のワールドを構築した中野さん。今号掲載作は一転、弾むように切れ味のいい作品ですが、しかしタイトルにもなっている「ナイトスキップ」が新しい...っていうか、このことについて書かれた文献を私は知りませんでした。なので、中野さんが以前から語り実践しているナイトハイクとの違いも、今回再認識。なんと、闇夜に歩くとの闇夜にスキップするのでは、少なくとも親子丼とフライドチキンくらいには異なっておりました!
作品冒頭しばらくは、これは小説!? といった趣き。そして<その昔、パソコン通信で友人たちと飛ぶ夢談義を少しした>といった逸話も挟みながら、話題はナイトスキップとはなにか、その魅力とはについてぐ———んと跳ね上がっていきます。そうか、昼間のスキップとは解放感と浮遊感が別物なのか、と誘われ始めるわけでして。
作中には舞踏家の菊地びよさん、音楽家のシューヘイさんも登場します。どんなスキップの仕方をしているのか、ぜひ本作でお確かめください。そして闇のスペシャリストである中野さんの世界に触れたければ、まずは既刊の『「闇学」入門 』(集英社新書) など、ぜひ。併せて、今年3月にスタートしたウィッチンケア文庫の中野さん作品「美しく暗い未来のために」にもアクセスぜひ、ぜひ!
私は夜間のスキップを「ナイトスキップ」と名づけ、菊地さんとナイトスキップの普及・発展に努めることに合意し、立て続けに集団ナイトスキップをやった。これが思ったとおり、とんでもなく楽しい。大島弓子の名作『秋日子かく語りき』のラストは、深夜の校庭に勝手に集まってフォークダンスをするのだが、ナイトスキップイベントはまさにその世界で、ちょっとわけがわからなくて、とてもワクワクする。
二〇一三年六月の埼玉県杉戸町では、四〇人近い参加者に光るブレスレットを着けてもらってスキップした。暗い田んぼ道を、狐火のような光が躍りながら進んでいった。
ナイトスキップイベントでは、みんなでさまざまなスタイルのスキップを楽しみ、新種のスキップを続々と開発して、スキップの世界がどんどん広がっていった。
私が好んでやる幅跳び系のスキップは「水切りスキップ」、菊地さんが好む高跳び系は「ハイスキップ」と名づけた。ほかに、後ろ向きの「バックスキップ」、横に進む「カニスキップ」、ねぶたの跳人のような「なんばスキップ(和式スキップ)」、二回ずつでなく三回ずつ地を蹴る「スススキップ」、インディアンふうの「地団駄スキップ」、足を交差しながらの「クロススキップ」、手足をピンと伸ばした「伸身スキップ」、フォークダンス的な「2人スキップ」、「回転スキップ」、「酔いどれスキップ」などなど。
ウィッチンケア第7号「金の骨とナイトスキップ」(P088〜P092)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/143628554368/witchenkare-vol7
中野純さん小誌バックナンバー掲載作
「十五年前のつぶやき」(第2号)/「美しく暗い未来のために」(第3号&《ウィッチンケア文庫》)/「天の蛇腹(部分)」(第4号)/「自宅ミュージアムのすゝめ」(第5号)/「つぶやかなかったこと」(第6号)
http://amzn.to/1BeVT7Y
Vol.14 Coming! 20240401
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