「ウィッチンケア」には第5号からご寄稿くださっている写真家の吉田亮人さん。コロナ禍が明けて、また世界を股に掛けての仕事に奔走なさっているようです。思い返せば、第11号(2021年4月刊行)への掲載作〈対象〉のような、写真についてある意味哲学的に論考した吉田さんの文章もおもしろいのですが、今作〈そこに立つ〉は取材旅行の躍動感とそこでのエピソードが、「ステイホーム」を推奨されていたあの頃じゃ決して経験できないもので、ああ時代がまた変わったのだな、と実感しながら拝読しました。韓国...近年はショッピングビルなどを覗くと、ワンフロア丸々韓流グッズの売り場だったりすることもあって驚いちゃうし、私(←発行人)もBTSの「Dynamite」とNewJeansの「OMG」「Ditto」はApple MusicでDLして聴いていたりするのですが...いやそういう話ではなくて...吉田さんの作品で取り上げられているのはザ・フォーク・クルセダーズの楽曲として世に知られている「イムジン河」です。フォークルは、リアルタイムに「帰って来たヨッパライ」が流行っていたころの記憶がかろうじてあって、同じころにザ・ダーツの「ケメ子の歌」というのも流行ってて、両曲とも〝おもしろい歌〟だとしか思っていなかった(小学校低学年ですから)。でっ、そのフォークルなんですが、Wikipedeiaには“1967年、アルバム『ハレンチ』を音源として、フォークルの歌がラジオでさかんに取り上げられるようになった。京都では『イムジン河』、神戸では『帰って来たヨッパライ』が頻繁にラジオで流されるようになった”との記述があり...そうか、京都では初期からよくオンエアされていたのか。。私の認識では、「平凡」「明星」(芸能本)の付録の歌本には載っているけど、テレビラジオでは聞けない曲、だったな。
作品終盤に登場する北朝鮮の監視塔、そして白い花と蝶の話。“書いてしまえばそれまでだが、決してそういうことでもない”という、吉田さんの胸中を覆った言葉にできない感情が印象的です。タイトルの〈そこに立つ〉は「現場に立ってみる」という意味と「その現場でこそ沸き立つものがある」のダブルミーニングかな。ぜひ小誌を手にして、吉田さんの現場での思いに寄り添ってみてください。
陽光が川面に反射してキラキラ光っている。その両岸を黄金色に染まった稲穂畑が埋めつくしている。
つい70年程前この場所が焦土と化していたなどとは想像もつかないほどその光景はとても美しく、平和そのものだった。
~ウィッチンケア第14号掲載〈そこに立つ〉より引用~
※ウィッチンケア第14号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!