2024/05/08

VOL.14寄稿者&作品紹介23 宇野津暢子さん

 前号では“佐々木智子”の奔放な恋愛を小説で描いた宇野津暢子さん。フリーランスのライター/編集者として女性誌等で活躍しつつ、ご自身が発起人となり、2015年4月から東京都町田市玉川学園地域のコミュニティペーパー「玉川つばめ通信」を発行しています。あっ、そうだ。宇野津さんからお声掛けいただきまして来月(6月8日)、小田急線「鶴川駅」近くの可喜庵にてイベントを開催することに。お時間の都合の付く方、ぜひご参加ください。それで、宇野津さんの今号への寄稿作...これが架空インタービュー形式でありまして、小誌でのそれと申しますとやはり武田砂鉄さんの〈クリーク・ホールディングス 漆原良彦CEOインタビュー〉が先駆なんですけれども、宇野津さん版のそれの末尾には武田さんのそれ“が好きで、体裁を真似しました。武田さん、無断ですみません”と、パスティーシュである旨のことわりが。こういう茶目っ気というか奔放さが、宇野津さんの魅力です。


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さて作品内容はというと、これがじつはなかなか深刻というか奥深いものでありまして、架空インタービュー形式だからこそ書ける、現実的な話。町内の個人商店がなくなって、気がつくとチェーン店(さらに無人店舗)ばかりになったら、地域コミュニティ誌をつくるモチベーションも萎えるだろうな、と。いや、もちろんチェーン店で働く人の様子とかを紹介する、みたいなやり方もあるかもしれないですけれども、でもチェーン一律同メニューの飲食店について「あそこがおいしい」とか、ちょっと、ねえ。

作品終盤、「筆者(同じくライターの宇野津暢子)」さんが“実は私も、最近自分のフリペ制作のモチベーションがかなり下がっていたんですが、井本さんと話をしていたら、ほかにやりようがあるかも、って思えてきました”と発言しています。架空と現実がごっちゃになってる感じがけっこうリアルで...ふと想像したのは、もしも「ウィッチンケア」への寄稿作品がすべて書き手 by AIになったら、それでも私(←発行人)は紙の本をつくり続けるだろうか、と。なんにしても、みなさまぜひ小誌を手に取って、「港町かもめ通信」編集長・井本さんの言葉に耳を傾けてみてください。

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私は書いたり読んだりするのが好きだから出版社に入って、バカだから勢いでフリーのライターになったけど、時間を重ねて、金銭的なこととか、次また仕事をもらうために、ってなったら、自由とはかけ離れていくわけですよ。どんな仕事でもそうでしょうけど、クライアントやスポンサーに気を使うし忖度するしね。特に雑誌なんて今や風前の灯火ですから、忖度っぷりは激しさを増すばかりです。雑誌を作るのは変わらず楽しいんだけれど、悲しくて苦しい場面に遭遇することが増えました。そもそも雑誌という存在自体が商業的にはもうきびしいでしょ。振り返ってみれば、大人向けの雑誌に、エコバッグだ、水筒だと、付録をジャンジャンつけ出したあたりから終わってたのよね。
 で、フリペの創刊です。せっかく仕事と関係ないフリーペーパーを作るんだから、人の顔色を伺いながらじゃなくて、好きにやろうって最初は思ってたの。でも、回を重ねるごとに、地域のフリペはフリペでこれまた自由じゃないんだと気づきました。だって、「新しくできたあの店の料理はどれもおいしくない」とか「行ってみたけどほしいものは何もなかった」なんてネガティブ情報は書けないじゃない。となると、「いい店だった」とか「また来たい」とか、毒にも薬にもならない、薄っぺらなことしか書けなくて。

 ~ウィッチンケア第14号掲載〈休刊の理由~「港町かもめ通信」編集長インタビュー〉より引用~

宇野津暢子さん小誌バックナンバー掲載作品:〈昭和の終わりに死んだ父と平成の終わりに取り壊された父の会社〉(第10号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈水野さんとの15分〉(第11号)/〈秋田さんのドタバタ選挙戦〉(第12号)/〈好きにすればよい〉(第13号)


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Vol.14 Coming! 20240401

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