ナカムラクニオさんの断片小説...小誌第7号では日本語&フランス語での掲載、第8号では日本語のみ、そして最新となる第9号では、日本語&英語による作品の掲載となりました。じつは今号を制作しながら実感したのですが、たとえば表紙を始めすべての写真をご提供くださった菅野恒平さんも、「八春秋」をご寄稿くださった写真家・長田果純さんも、公式サイトではそれぞれ<Kohey Kanno><OSADA KASUMI>とアルファベット表記でして、世界への窓が開いている。...ヴィジュアル(や音楽etc.)の「言葉を越えていく力」は羨ましいな、なんて思っていたら、ナカムラさんから届いた作品もまた、ワールドワイド仕様。いやぁ、そんな時代なのかもしれない、と。
今回の掲載作品は3篇で、タイトルには「意味」「夢」「地図」という、かなにすると2文字の言葉が含まれています。そしてそれらは、各々の主題に関わるキーワードでもある。ミニマムな表現で紡がれた物語だからこそ、選ばれた言葉が際立っているように感じられます。
「意味を奪われた男/The Man Who Stole the Meaning」での、<カメラとは、世界から意味を排除するために開発された装置>という一節は心に残りました。私は↑のほうで写真(ヴィジュアル)について「言葉を越えていく力」なんてことを書きましたが、本作の主人公はもともと<『意味』を撮影できる人気の写真家>という設定。そもそも、意味ってなんなんだ、なんて哲学的なことを言葉で考え始めると禅問答の世界に突入してしまいそうですが...写真という表現の、ある意味で狭義な(言葉による?)「意味」から自由なところに憧れてしまいます。
「夢の修理承ります/To Repair a Dream」では、近年ナカムラさんが取り組んでいる「金継ぎ」についても触れられています。<僕が仕事にしている「金継ぎ」は、人と人、時間と時間をつなげる技術だ>。...さて、<僕>に夢の修理を問い合わせてきた依頼主とは? 小さな箱を持って現れた依頼主と<僕>のやりとりは、ぜひ小誌を手にとってお確かめください!
その日、彼は何気なく自分の笑った顔を撮った。
スマホのカメラで。意味もなく。
その時、誰かが、(あるいは何かが)彼の『大切な意味』を盗んでいったのだという。
しかし、警官は、何度聞いても、まったく話の意味がわからなかった。
But one day, he casually took a photo of his own smiling face. A mobile camera. No meaning. That was when it happened; when someone (or something) stole his meaning.Having heard the story many times, the police could not exactly understand the meaning of it.
ウィッチンケア第9号「断片小説」(P206〜P211)より引用
goo.gl/QfxPxf
ナカムラクニオさん小誌バックナンバー掲載作品
「断片小説 La litt?rature fragmentaire」(第7号/大六野礼子さんとの共作)/「断片小説」(第8号)
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Vol.14 Coming! 20240401
- yoichijerry
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