2018/05/04

vol.9寄稿者&作品紹介04 長田果純さん

今回が小誌初寄稿となった写真家の長田果純さん。ファッション関係の仕事を多く手がけていますが、公式サイトには作家性の強い作品も数多くアップされており、また、サイト内のblogには写真とともに、印象的な文章が添えられています。そのサイトやインスタグラムを何度か拝見しているうちに、長田さんの世界引き込まれまして...まずフェイスブックに長田さんがいらっしゃるか調べてみたら、いらっしゃった。しかも幸いなことに、1人だけですが共通の「友達」も。その「友達」にご縁を繋いでもらい(感謝!)、その後に長田さんともメールのやりとりをして、ご寄稿いただけることになったのでした。

寄稿作の「八春秋」は8年前の6月のできごとと、現在の「散歩好きな自分」の生活雑感について綴ったエッセイ。どこか小説的な風合いも感じられて、なにより映像が目に浮かぶような筆致なのは、やはり写真家としてのビジュアル感覚なのかな、と。とにかく、散歩の光景が目に浮かんできます。<肉屋でコロッケなどをつまみ食いしながら>だったり、<鍵と小銭だけをポッケに入れ>てだったり。...おもしろいのは、長田さんにとっての散歩が気分転換や暇つぶしではなく、完全にミッションであること。<映画を観に映画館へ行くように、服を買いにお店へ出向くように>に散歩するのです。そして、そんな散歩の魅力に取り憑かれるきっかけとなったできごととは?

新宿の高層ビル群が見える場所にある歩道橋での、真夜中の思い出。読んでいて、自分の若かりし日のあれこれを、不覚にも思い出してしまった。いや私にも同じような素敵な体験があるってわけではないんですが、なんか、ひさしぶりに「オレも昔は若かったんだ...」みたいな感覚が甦ってきた。ええと、ぜひ小誌を入手して、長田さんの記憶(二度と開けないようにと閉まった記憶)を追体験してみてください。

そうだ、長田さんとは、昨年末に下北沢のモアカフェで打ち合わせをしたのでした(まさか閉店してしまうとは知らずに/残念...)。そのときの雑談で出身地・静岡の話も少し伺えたのですが、本作では東京で暮らし始める前のことにも触れていて、とくに<どこへ行くにも徒歩で20分以上><歩くことは移動手段の中では真っ先に排除され、車もしくは自転車での移動を余儀なくされていた><散歩という概念がそもそもなかったのだ>というくだりが、個人的にズシンときました。というのも、下北沢からアップダウンが厳しくてクルマ社会の町田郊外に引っ越して、そろそろ5年...最近、散歩しなくなったなぁ、やっぱり街が途切れない感じでなだらかなところを歩くのが楽しいよなぁ、と。



 猫と暮らし始めてからインドアな生活に拍車がかかった気もしているが、この穏やかな生活を「心の隠居生活」と呼び、ひっそりと楽しんでいる。
 この「心の隠居生活」は、周りから見るとただの引きこもりではないか、と思われてしまうことも少なくないが、時間と暇さえあれば積極的に外に出てやっていることが一つだけある。それは散歩だ。言葉だけを聞くと、また穏やかな印象を受けるが、この散歩をなめてはいけない。私は狂おしいほど散歩が好きで、時間と暇さえあれば歩き、ひどい時は一日に15キロ以上歩き続けることもあるほどの、散歩好き、いわば散歩狂だ。
 この散歩には暗黙のルールが存在する。気分で目的地を定め、不安になるまで極力地図は見ず、なるべく知らない道を選んで歩くことだ。もちろん本気で道に迷うこともあるが、その一瞬で自分がどこにいるのか分からなくなることが猛烈に楽しい。住宅街や細い路地へと入り込むとそこは天然の迷路だった。

ウィッチンケア第9号「八春秋」(P026〜P030)より引用
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Vol.14 Coming! 20240401

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