2018/05/13

vol.9寄稿者&作品紹介13 武田砂鉄さん

先月(2018年4月24日)、新刊の「日本の気配」を上梓した武田砂鉄さん。初の単著「紋切型社会──言葉で固まる現代を解きほぐす」が2015年の4月25日で、その後2016年8月15日に「芸能人寛容論:テレビの中のわだかまり」、「コンプレックス文化論」が2017年7月14日と、ほぼ年1冊ペース(しかもサイクルが短くなりつつ)で本を出しています。「日本の気配」...上島竜兵的スタンスにしなやかさ、坂上忍的スタンスに硬直性を見出した書き下ろし作<「笑われる」気配>での言説が、全編を貫いているように感じられました。<あとがき>にある「個人が帳尻を合わせようとすれば、力のある人たちに社会を握られる」という警句をときおり自身にも向けつつ、武田さんは世の中と対峙し続けています。

そんな武田さんの今号寄稿作は、前々号、前号に続き「クリーク・ホールディングス 漆原良彦CEOインタビュー」。漆原さんって誰? なんて訝しがらず、ぜひフラットな心持ちで読み始めてほしい一篇なのですが...しかし生真面目な人だと、途中で迷宮に陥って脳味噌が複雑骨折したように、立ち止まったりしちゃうのかも!? いやいや、頑張ってコンプリートしてみてください。最後の数行まで辿り着けば、それまでの濃霧が清涼な空気のように心地好く感じられ、妙なおかしさが込み上げてくるはずですので。

今作は武田さんが日頃他媒体で書いていらっしゃるものに比べると、かなり変化球的(魔球的)な展開ではあります。しかし球道をじっくり見てみると、前述の「日本の気配」にもあった、自問自答のスタンスが共通しているように思われなくもなく。たとえば漆原さんは<自分の考えよりも、相手に何を言えば反応してくれるのかを探る姿勢は大切>としながら、でも<私はそこで、個人も企業も、こちらから何かを届けるという基本的な態度を忘れてはいないだろうかと、当たり前のことを思った>と自省していたりしていて。なにを言ってるのかちっともわからない漆原さんなんだけれど、なにかを言うときの脳内経路に、創作者の片鱗が宿っている(スイマセン、ちょっとこじつけっぽいです...)!?

自らの決断で創刊した「クリーク・ジャーナル」というオウンド・メディアが伸び悩み、やや弱気な一面を垣間見せる漆原さん。インタビューの後半で飛び出した<シンパシーをシンパシーしていてはシンパシーできない>という一節に、私はやられました。これはいったいどういう意味なのか? ぜひとも小誌を入手して、この含蓄のある言葉を噛みしめていただきたいと願っています!



──「シンパシーレス」なんてフレーズもしょっちゅう聞くようになった。
 まったく勝手な連中だなとは思うけれど、説得力がないわけではない。シンパシーの連鎖が何を生んだかと言えば、シンパシーを得られなかった人や状態に対する苦手意識の増幅だからね。人は皆、なぜ自分のことをわかってくれないのか、という悩みを抱えている。これは人間の根源的な病だと言ってもいい。解消などできないものですよ。私はビジネスをする上で、その根をいじくりまわしてはいけない、と考えてきた。先代からの教えでもある。先代は口数の少ない人だったけれど、時折、「良彦、人間を舐めるなよ」と言っていた。人間を理解した気になるな、理解したと安堵したところから崩れていく、と口を酸っぱくして言われたものです。「共にあること」とは、決して「理解すること」ではない。私は、そのさじ加減を誤っていたのかもしれない。

ウィッチンケア第9号「クリーク・ホールディングス 漆原良彦CEOインタビュー」(P084〜P089)より引用
goo.gl/QfxPxf

武田砂鉄さん小誌バックナンバー掲載作品
キレなかったけど、キレたかもしれなかった」(第6号)/「クリーク・ホールディングス 漆原良彦CEOインタビュー」(第7号)/「クリーク・ホールディングス 漆原良彦CEOインタビュー」(第8号)

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Vol.14 Coming! 20240401

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