中野純さんの著書には<闇>付きのタイトルがいくつかあります。『闇を歩く』『東京「夜」散歩ー奇所、名所、懐所の「暗闇伝説」』『闇と暮らす。:夜を知り、闇と親しむ』。他にも<夜>や<月>といった、闇を連想させる言葉入りのタイトルもあって...そんな中野さんが小誌今号のテーマとして取り上げたのは、闇スポーツ。あっ、プロ野球のナイターとか、ああいう照明をガンガンにしたのではありませんよ。闇を照らすのは月と星、あと街の灯りは許容されているようですが、そんな状況でのスポーツを楽しんでみよう、という提案。じつに生粋のホモルーデンスである中野さんっぽい、遊び心に満ちた一篇です。
作品の前半はナイトラン、つまり夜に走ることについて、実体験も交えて語られています。そんな、忍者とか泥棒とかしかやらなそうなことを...などと思ってはいけません。中野さん自身も体験してみて、<夜、暗い中で走ると昼にはない疾走感を味わえる>と仰っています。私は夜どころか昼間だって、たとえば乗ろうとしている電車やバスが出発しそうでもない限り走りませんが(だって呼吸が乱れたり汗をかいたり、いろいろめんどくさそう)、読んでいるうちにだんだん試してみようかな、という気に。但し、中野さんからの<よい大人は入念に準備して慎重に真似しよう。いきなり全力疾走すると、私のようにもう若くない人は確実に足を痛める>との注意書きもありますので、トライする際にはくれぐれも怪我などせぬようにお願いします!
中盤では走ったり跳ねたりだけではなく、球技についても熱く語られています。百均の定番商品である<光るブレスレット>を使っての、キャッチボールならぬキャッチライト。これは体験ずみで<ほんとうに人間とやっているのかわからない中でやるのがおもしろい>とのこと。...しかし、そこから先のしばらくは、これは中野さんが本気で推奨しているのか、あるいは可能性を想像して楽しんでいるだけなのか、ちょっと真偽不明な展開に。「やってみたい」なのか「それはない」なのか、ぜひ本篇を読んで判断してくださいね! わたしはこのあたりを読んでいて一番どきどきしましたです。
<昔の祭りは宵宮こそがメイン><祭りは、スポーツ大会に近いものだった>と中野さんは書いています。なるほど、たしかに。...聞けば2020年の東京オリンピック、マラソンは8月上旬の朝7時台からのスタートだとか。暑さ対策だって言うんなら、いっそ夜。それもコースに面した街灯などは消して、人類史上初の闇マラソンにしてみれば、と思ってしまいました。選手が闇の疾走感に高揚して、2時間を切る記録が続々と生まれたりして。
以前は、街のランニングといえば早朝のイメージだったが、考えてみれば朝でなければいけない理由はない。夜も治安のいい日本なら、暗い夜道をひとりで走ってもまず問題ない(歩くより走るほうが防犯的にはるかに安全だし)。夜のほうが人に見られる恥ずかしさも感じにくいし、さらにナイトランの目くるめく疾走感を体験すれば、今までなんで辛い思いをして朝に走っていたんだろう、という気持ちになる人は少なくないだろう。
その後私は、ナイトランだけでなくナイトスキップ、夜の全力疾走だけでなく全力疾跳も推奨するようになった。詳細は『ウィッチンケア』第七号収載の拙文「金の骨とナイトスキップ」を読んでほしいが、夜の全力疾跳は疾走感に加えて浮遊感が強く、飛ぶ夢の気分を楽しめる。「男子100mナイトスキップ」などの徒競跳をぜひ普及させたい。
ウィッチンケア第9号「全力闇─闇スポーツの世界」(P044〜P049)より引用
goo.gl/QfxPxf
中野純さん小誌バックナンバー掲載作品
「十五年前のつぶやき」(第2号)/「美しく暗い未来のために」(第3号&《note版ウィッチンケア文庫》)/「天の蛇腹(部分)」(第4号)/「自宅ミュージアムのすゝめ」(第5号)/「つぶやかなかったこと」(第6号)/「金の骨とナイトスキップ」(第7号)/「すぐそこにある遠い世界、ハテ句入門」(第8号)
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Vol.14 Coming! 20240401
- yoichijerry
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