2018/05/11

vol.9寄稿者&作品紹介11 矢野利裕さん

小誌第9号が正式発売となった4月1日、矢野利裕さんがスーパーモリノさん、ハシノイチロウさんと開催した「LL教室の試験に出ない90年代J-POP[1991年編]」にいってきました。場所は荻窪ベルベットサンで、当日のゲストは星野概念さん。矢野さんの今号寄稿作の冒頭に<ポピュラー音楽の歴史みたいなものに関心がある>との一文がありますが、このイベントは、その実践編と言えるのかな。個々の嗜好はともかく、各年代に流行ったポピュラー音楽をきちんと検証しようという試みは、とても有意義だと思いました。個人的には、この日初めてASKAの歌をちゃんと聞いた(もう一生分/おなかいっぱい)。前世紀、知人の結婚式の二次会で歌詞カードが回ってきて「SAY YES」歌わされて以来のASKA体験...。あっ、次回「「LL教室の〜」は7/1開催予定とのことです。

ご自身が教員でもある矢野さんは今回、<学校空間に流れる音楽について>の一篇をご寄稿くださいました。ぱっと思いつくのは、たとえば合唱コンクールの歌やスポーツでの応援曲。私が高校性のとき(1970年代半ば)はたしか赤い鳥の「翼をください」とチューリップの「青春の影」だったような記憶が...どんな経緯で決まったのかも覚えていませんが、その2曲は当時の自分(たち)にとって「比較的新しめ」で「それほど押しつけられた感はない」選曲だったと思います。あの頃の夏の甲子園、バンビ坂本が活躍したときのブラバン、どんな曲を演奏してたんだっけかな? まったく記憶から抜け落ちてる。。。

読んでいると、現在の学校内でどんな曲が生態系をつくっているのかがわかりおもしろいです。<現在はJポップの曲はすぐに合唱用のスコアになって、生徒たちは自分たちが歌いたい曲をネットなどから探してくるらしい>...そんな時代なんだ(『平凡』『明星』付録の歌本の進化形?)! そして、矢野さんが挙げている曲のバラエティ豊かなこと。坂本九から星野源までが、独自のセレクト基準で継がれている(く)空間なのだ、と。

作品の後半は、タイトルにもなっているアンジェラ・アキの「手紙〜拝啓十五の君へ〜」がいかに素晴らしいかの、渾身の分析(矢野さんの本気度が熱いです!)。ぜひ小誌を手にして、じっくり読んでみてください。<音楽というのはなにも単体で存在しているわけではなく、どこで‒ 誰と‒ どのように‒ 歌われるか、という場や状況と結びついている>という一節の意味が、筆者の実感とともに伝わってきます。



いわゆる音楽史にのぼらずとも、例えば応援歌として、口から口へ伝わっていくような音楽のありかたがある。これこそ、柳田國男が言っていたような意味で「民謡」的ではないか。このような、「民衆」の生活のなかで独特のかたちで音楽が残っていくような光景が好きだ。世の中には、ステレオやヘッドフォン以外から流れてくる音楽というものがあって、学校空間に流れる音楽もそういうものとしてある。もちろん、ニュースタンダードも生まれつつある。放課後、吹奏楽部が、星野源の「恋」や「SUN」などを練習していたりすると、星野源ファンとしてはとても嬉しくなる。遠い未来、「星野源って誰?」ってなった以後も、「恋」は演奏されているだろうか。

ウィッチンケア第9号「学校ポップスの誕生──アンジェラ・アキ以後を生きるわたしたち」(P060〜P065)より引用
goo.gl/QfxPxf

矢野利裕さん小誌バックナンバー掲載作品
詩的教育論(いとうせいこうに対する疑念から)」(第7号)/「先生するからだ論」(第8号)

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Vol.14 Coming! 20240401

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