2018/05/28

vol.9寄稿者&作品紹介32 松井祐輔さん

松井祐輔さんの小誌今号への寄稿作、タイトルの<平本>は「へいぼん」と読みます。松井さんは東京都台東区蔵前でH.A.Bookstoreという書店を営んでいますが、作品内ではここ40年ほどの出版業界の変遷が、本の擬人化インタビュー形式で語られています。電子書籍...小誌が創刊した2010年頃はたしか「黒船がきた」なんて言われていた記憶が。この一篇の主人公も電子書籍という現実と対峙しているのですが...その結末は、ぜひ本誌を手にしてお確かめください!

作中の<その頃有名になっていた大手の転職エージェントから声がかかりまして。ほら、あの黄色い看板の>...これはブックオフのことかな? ググってみると、1990年5月に直営1号店(神奈川県相模原市)が開店した、と。拙宅から数十メートルのところにも一時期あったんですけれど(なんと地元書店の斜め向かいという場所に!)、いまはペットショップになってしまいまして、月日の流れ、感じます。

<ところがインターネットの登場で全国どこでも、どういう人材がいるかがわかりヘッドハンティングされやすくなり、相対的に人材価値も下がっていきました。その分、再就職もしやすくなったという意味では良かったのかもしれませんが>という一節も、実感がこもっているように思えました。とくに<相対的に人材価値も下がっていきました>というのが...ブックオフ登場よりもさらに以前って、本やレコードってお店で「見かけたことが縁」みたいなところがあって、よほど高価でない限りは「とりあえず買っとけ」だったよなぁ。いまは...なにか「おっ!?」ってのを見かけたら、とりあえずiPhoneでアマゾンチェック...ってウソついてすいません、それを最後にしたのもセンター街にHMVがあった2010年頃、月日の流れ、感じます×2。

じつは私は、あいかわらずいまだに電子書籍には馴染めず...なんか、目につくところにゴロゴロしてないと、本の存在を忘れてしまうんで(...そういえばグラビア界の黒船・リア・ディゾンはいま何処?)...といっても、いまこれを書いている机のまわりは目につく限り本とCDの背表紙でして、しかも現在稼働中(積ん読含む)の本以外は、ほぼ居座ってるだけの存在でして、ときどき「ああ。これがなかったらどんなに部屋が広々するか」なんて考えてしまうんですが...。



──そんな中で、転職はうまくいったんですか?
 はい、なんとか。実はまた別のエージェントからヘッドハンティングされたのです。「せどり」というのでしょうか? 業界用語で。彼が私に合った就職先をすぐ紹介してくれる、と。なんだか怪しい取引のような気もしましたが、藁にもすがる思いでお願いしました。詳細はよくわかりませんでしたが、紹介してもらった就職先はとても良いところでしたね。そこにも10年ほどお勤めさせていただきました。
──すばらしいですね。その後の転職はうまくいったんですか。
 ええ。今回のオーナーとの関係はずっと円満だったのですが、どうも社員が増えすぎてしまったようで、私もリストラの対象になってしまったのです。ただせめてもの気持ち、だったのでしょうか。とても良い転職エージェントを紹介してくださいました。そこは小さいながらも何十年もやっている老舗で、私の技能を活かしながら、じっくり長く就職先をさがしてくれました。

ウィッチンケア第9号「とある平本な人生の話」(P200〜P205)より引用
goo.gl/QfxPxf

松井祐輔さん小誌バックナンバー掲載作品
出版流通史(編集中)」(第8号)

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Vol.14 Coming! 20240401

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