2018/05/12

vol.9寄稿者&作品紹介12 多田洋一(発行人)

今年もまた多田洋一さんの寄稿作を多田洋一が紹介するという展開になりまして、さすがに最近は「えっ!? 多田さんも書いてるんですか!」みたいなことは言われなくなってきましたが(小誌創刊の動機の半分以上は「自分が書きたい」だったんですよ、いまさらですが)、あっ、この件に関しては第7号の紹介文の最後のほうにねっちり書いたんですが、今回も繰り返します。ある寄稿者が自撮り写真の連載コラムについて何度「自撮りです」と言っても「おもしろいですねー、誰があの写真撮ってるんですか?」と訊かれると仰ってまして、その気持ち、痛いほどよくわかります。

今作「銀の鍵、エンジンの音」を書き終えてから校了までのあいだに、マクドナルドにいってみました。たぶん6年ぶりくらい。私はわりと朝にしっかり白米を食べる生活をしていて、そうするとお昼が一人のときは、麺類かなんかでささっと。そうなると、夜マックっていうのもどうなの!? 若い頃は2時間に1度くらいなんか食べてましたが、いまは「1日2食でも大丈夫かも」な感じでして、そのわりには体重が微増していく(なんとかならんか)。そんなわけで気がついたらずいぶん疎遠になってしまった、と。ただ、中学生の頃に初めてマックシェイクを飲んで「世の中にこんなおいしいものがあったのか!」と感動した記憶は強固なので、それで今回も注文したんですが、早々とフィレオフィッシュとチーズバーガーがなくなり、残った冷えて柔らかいポテト&薄ぬるいシェイクをコンプリートってのは、キツかった。

作中に<最近8ビートのロックは全部プレイリストから外しちゃってもいいかな、と思っている>という一文があります。実生活での私は、いまでも80GBのiPod classicを持ち歩いていまして、まあいまのご時世だといろいろ難はあるんだけれども、でもなにからなにまでアイフォーン頼りというのもどうかな、とい気持ちが抜けきれず、音楽再生専用として使い続けています。あっ、でも遠くない将来、貯め込んできた音源をクラウドに、あるいはサブスクリプションへの移行とかも考えなければいけないだろうな、と。レコード→CD→MP3に続く、大きな引っ越し?

SNSのDMで<「やっぱりこっちではエネオスって、ネにアクセント置くんですかね」とドライバーに話しかけたらあっさり無視されて>という箇所に反応してくれた方がいて、作者としては嬉しかったです。<僕>の頭のなかにある枚方近辺に住む人は「えネぉす」みたいなアクセントで喋っている、ということなんですが、もし小誌を手にとって「それは違う」と思ったら、ぜひ正解を教えてください〜。あと、ジャミラ・ウッズはとても素晴らしいので、ぜひ聴いてみてくださいね!



 マクドナルドは、自分の意思で最後に入ったのは……心ならずも「オレに惚れてますか?」みたいな女の笑顔と指ハートに惹かれて、ふらふら。えびフィレオってやつをいろいろ、何度か。えびの数だけ幸せにって惹句に惑わされ、ごまもきのこも食べてみたが、とくに生活が華やいだような実感は得られなかった。あっ、でも、あのころ住んでいた町の駅前店で、あの笑顔のポスターを見ると、浮き世の憂さを少しのあいだ忘れられたかもしれない。
 横浜を過ぎると船のホテルが突発したりして、それはなんだか葛西〜浦安あたりの風景にも似ているようで、あの遊園地にはジョージ・ルーカスがきたときに仕事の立ち会いでいかされた記憶が残っている。連れ込みが周囲から消えると視界も開いて、丹沢が富士の稜線にせり上がっていく。

ウィッチンケア第9号「銀の鍵、エンジンの音」(P072〜P078)より引用
goo.gl/QfxPxf

多田洋一(発行人)小誌バックナンバー掲載作品
チャイムは誰が」(第1号)/「まぶちさん」(第2号)/「きれいごとで語るのは」(第3号)/「危険な水面」(第4号)/「萌とピリオド」(第5号)/「幻アルバム」(第6号&《note版ウィッチンケア文庫)/「午後四時の過ごしかた」(第7号)/「いくつかの嫌なこと」(第8号)

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Vol.14 Coming! 20240401

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