2018/05/26

vol.9寄稿者&作品紹介29 木村重樹さん

昨年11月、下北沢の気流舎にて木村重樹さんとトークイベントを開催しました。タイトルは「屈折する〝ニッポンのサブカルチャー〟……対抗文化から地下アイドルまで」という壮大なような局所的なような、とにかく...私には学者肌と感じられる木村さんの、サブカルチャーに対する多識/愛情(愛憎!?)/知見、諸々もろもろおかを伺ってみたいと思ったのです。

サブカルチャーの本、最近けっこうたくさん出ているように感じられます。ってことは「顧みられるもの」になった? いやいや、研究分野としてのステイタスが確立された? あっ、そうだ、今号の締め切りの頃は「サブカルの想像力は資本主義を超えるか」というものすごいタイトルの本を読んでいましたが、内容は著者が大学で近年話題になった映画やアニメを題材に喋った講義録で、まあ、セカイ系のパロディのつもりなのかも? 私は木村さん渾身の、でも等身大の視点で語られたサブカルチャー論を、ぜひ読んでみたいと思っているのです。

木村さんの小誌今号への寄稿作は、自身がサブカルチャーに関わりを持つようになったきっかけ、とくに「精神世界の本」にまつわるノスタルジックな一篇。作中に登場する固有名詞の数々...1970年代なかごろにあった「オカルト・ブーム」を回顧したくだりには<魔女狩りや吸血鬼伝説からシュルレアリズムやファンタジー&SFに至る〝あやしいカルチャー〟のナヴィゲーター/水先案内人として、澁澤やウィルソンが果たした役割は小さくなかった。いや、少なくとも自分の場合は、まさにドンピシャだったのである>とあり、テレビでユリ・ゲラーがスプーン曲げたのを「ウソだぁ」くらいで見た記憶しかない私(「表層的」のひとことでバッサリ斬り捨てられてる...)は、えっ、そんな時期にすでに澁澤龍彦読んでたの!? と驚愕してしまうのでした。

後半では<特記すべきトピック>として<〝神秘学〟の興亡>、その<キーパーソン>として高橋巌と荒俣宏について語られます。<荒俣や高橋が志向した〝神秘学〟とは、「魔女と黒魔術とか社会・風俗レベルの異端、あるいは呪いや妖術といった分野」に偏りがちだった(いわゆる70年代以前の)オカルティズムから、さらに数歩前進したところをめざしていたことが伺えよう。と同時に、当時大学生だった自分もまた、それに限りなく期待を膨らませていた>...クイズ番組の回答者くらいにしか荒俣さんを知らない私はこの一文にも、木村さんの抱えている深遠なワールドに畏敬の念を覚えてしまうのでした。みなさま、ぜひ小誌を手にして、木村さんとともに精神世界の変遷をタイムトラベルしてみてください!



 時は1974年、ここ日本でもオカルト・ブームが大ブレイクした。ちょうどその1年前の73年、その名もズバリ『オカルト』なる著書をウィルソンは発表し、ベストセラーを記録した。また澁澤は澁澤で60年代初頭から(つまり、オカルト・ブームに10年以上も先駆けて)、魔術や占星術、錬金術といったヨーロッパ精神史のダークサイドをモチーフとしたエッセー集「手帖シリーズ」(『黒魔術の手帖』、『毒薬の手帖』、『秘密結社の手帖』)を発表。70年代にはすっかり、その筋の第一人者だった。
 とはいえ、ウィルソンと澁澤、それぞれの人となりをよく知っている愛読者ならば、双方の相違点も無視できなかろう。また、今の見地から70年代ニッポンのオカルト・ブームを冷静に振り返ってみると、その内実もまた(いわゆる澁澤/ウィルソン的な「影の精神史」もさることながら)表層的に持てはやされていたのはどちらかというと、『エクソシスト』や『ヘルハウス』といったホラー映画、つのだじろうの『うしろの百太郎』や古賀新一の『エコエコアザラク』に代表されるホラーコミック、テレビ局主導の超能力者やUFO/UMAにスプーン曲げ騒動、時の海外ロック・スターたちのサタニズム趣味……こうした一連のサブカルチャー的要素がごちゃまぜになって熟成されたものだったことを、再認識されるだろう。

ウィッチンケア第9号<古本と文庫本と、そして「精神世界の本」をめぐるノスタルジー>(P182〜P187)より引用
goo.gl/QfxPxf

木村重樹さん小誌バックナンバー掲載作品
私が通り過ぎていった〝お店〟たち」(第2号&《note版ウィッチンケア文庫》)/「更新期の〝オルタナ〟」(第3号)/『マジカル・プリンテッド・マター 、あるいは、70年代から覗く 「未来のミュージアム」』(第4号)/『ピーター・ガブリエルの「雑誌みたいなアルバム」4枚:雑感』(第5号)/「40年後の〝家出娘たち〟」(第6号)/「映画の中の〝ここではないどこか〟[悪場所篇]」(第7号)/<瀕死のサブカルチャー、あるいは「モテとおじさんとサブカル」>(第8号)

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Vol.9 Coming! 20180401

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