小誌創刊号からの寄稿者・我妻俊樹さん。noteのプロフィール欄には《歌人。怪談作家。小説家。川柳作家。》と記されていまして、昨年3月には初の短歌集「カメラは光ることをやめて触った」を上梓、また11月には平岡直子さんとの共著「起きられない朝のための短歌入門」も、と短歌でのご活躍が目立ってきて、それに伴うイベントにも登壇...これって、いわゆるブレイク状態なのではないでしょうか! そんな我妻さん、小誌では一貫して《小説家》スタンスでの作品をご寄稿くださってきましたが、第14号掲載の〈ホラーナ〉は、ちょっと《怪談作家》としての要素/成分が強めな作品だと受け取りました。ご自身もSNSで「yuri horrorの側面をもつ小説」とつぶやいて(いまは「ポストして」と書いたほうがいいのか?)いるので、私の認識は間違いないだろう、と。結果、第13号掲載の「北極星」と比較すると、格段に「いかれ」てない(こういうときの「いく」こそ「逝」という字を使いたい気分)一篇となりました。
どうするんだろ。いいところってこの穴のことなの? それとも中にあるのかな。どっちみち入らなきゃならないんだろうな。
思っていると、彼女はいつのまにかまた新しい飴玉で頬をふくらませ、にやにや笑ってる。
「あのね」
と言ったとき見えたのは、月みたいな黄色の飴だ。
「けいちゃんと仲良くなって何年くらいたつ?」
二年、じゃなくて三年かな。ううん四年かもしれない、とわたし。
「四年前からずっと思ってたんだよね、いつか見せてあげたいなって」
えっ何を? すると答えるかわりに彼女は洞窟におりていく。
入口はけっこう斜面になってて、だから「おりていく」なんだけど、沈むように消えていく彼女にしかたなくついていくと、平らになったところで待ってる彼女の手で懐中電灯が光ってる。
どうするんだろ。いいところってこの穴のことなの? それとも中にあるのかな。どっちみち入らなきゃならないんだろうな。
思っていると、彼女はいつのまにかまた新しい飴玉で頬をふくらませ、にやにや笑ってる。
「あのね」
と言ったとき見えたのは、月みたいな黄色の飴だ。
「けいちゃんと仲良くなって何年くらいたつ?」
二年、じゃなくて三年かな。ううん四年かもしれない、とわたし。
「四年前からずっと思ってたんだよね、いつか見せてあげたいなって」
えっ何を? すると答えるかわりに彼女は洞窟におりていく。
入口はけっこう斜面になってて、だから「おりていく」なんだけど、沈むように消えていく彼女にしかたなくついていくと、平らになったところで待ってる彼女の手で懐中電灯が光ってる。
~ウィッチンケア第14号掲載〈ホラーナ〉より引用~
我妻俊樹さん小誌バックナンバー掲載作品:〈雨傘は雨の生徒〉(第1号)/〈腐葉土の底〉(第2号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈たたずんだり〉(第3号)/〈裸足の愛〉(第4号)/〈インテリ絶体絶命〉(第5号)/〈イルミネ〉(第6号)/〈宇宙人は存在する〉(第7号)/〈お尻の隠れる音楽〉(第8号)/〈光が歩くと思ったんだもの〉(第9号)/〈みんなの話に出てくる姉妹〉(第10号)/〈猿に見込まれて〉(第11号)/〈雲の動物園〉(第12号)/〈北極星〉(第13号)
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