九龍ジョーさんとの出会いは昨年5月、文フリ東京36の会場にて。私は第2展示場Fホール[か-71~72]で《ウィッチンケア書店》を営んでおりましたが、通路を挟んだ対向ブースが《エランド・プレス》さんでして、自席のパイプ椅子に座っていると、なんだか正面にいらっしゃる、きちんとジャケットを着用した男性と、ときどき目が合ったりするのでした。でっ、だんだん場も和んできて、たぶん私が「Didion 3」を購入したさいにその男性(私は九龍さんの顔と名前が一致してませんでした)と言葉を交わしまして...とにかくそのご縁がきっかけで、今号への初寄稿へと至ったのでありました。そして、届いた小誌への初寄稿となる作品が「ウルフ・オブ・丸の内ストリート」。スコセッシ/ディカプリオのあの映画をご存知の方は〈もくじ〉を見て、タイトルだけでニヤリとするかも!? ...じつは私、本作を自伝的小説(フィクション)と捉えて、そのようなレイアウトで配してしまったのですが、九龍さん曰く「エッセイ」とのこと。失礼致しました! それで、いまの私がこの一篇を簡潔に表すと、「2024年のリアルなサクセスを描いた!」とか、かな。とにかく、語り手である「私」の成り上がり感──いや、この言葉だと昭和臭(というか矢沢臭)が強いので──のしあがり感が、颯爽としていて気持ちいいです。自己啓発的な因子なんぞ微塵もなしなのに、「くそー、俺の人生、仕切り直してぇ」みたいな人には、効果覿面かも。背骨がシャキッと鳴りそう。
SNSによると、4月17日に発行された『永遠なる「傷だらけの天使」 』という新書は九龍さんが企画した1冊、とのこと(あのドラマ、第16話《愛の情熱に別れの接吻を》での高橋洋子の綾取りみたいな指先にリアルタイムで殺されました)。でっ、私事で恐縮ですが、私が次回文フリにも持っていこうとしている小説集「幻アルバム+α」の表紙は、あのペントハウスがあった代々木会館の階段なんですよね...って、それはともかく、みなさま、ぜひ九龍さんの小誌でしか読めないエッセイをお楽しみください!
カネが大事だ。
とにかくカネに困りたくない。
アルバイトは児童相談所の夜間指導員、それから脳性マヒ者団体の介助。どちらも時給がよく、泊まり手当があり、朝夕の食事もついた。夜、シャワーまで浴びることができた。学生にしては十分すぎる収入を手にすることができた。
就職氷河期世代、ど真ん中。就職活動はハナから放棄したが、運よくテレビの番組制作会社に潜り込むことができた。会社の所在地が、いまや銀行の不良債権と化した私の家がある場所だったため、その話をすれば採用されるだろうと踏んだ。案の定うまくいった。だが、仕事は一年しか続かなかった。以降、築地市場、広告代理店、アダルトビデオのモザイク掛け……など職を転々とし、時にニート生活を送ることになる。
二十代も後半に差し掛かった頃、辿りついたのが、コアマガジンというエロ本出版社だ。
~ウィッチンケア第14号掲載〈ウルフ・オブ・丸の内ストリート〉より引用~
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