2013/05/28

vol.4寄稿者&作品紹介27 岡倉大恭さん

「皆、もっと面白い人生を送れ、それが出来なくても未来永劫語り継がれるようなことを考えてみろ。」

「職務規定通りに」と「規則なので……」。いずれも岡倉大恭さんが寄稿してくれた<「墓読み」の生活>内での「しゃべり言葉」なのですが...これをわざわざ声として表現するあたりに、岡倉さん独特の「地の文ワールドにずぶずぶ嵌められてしまいそうな」作風の秘密があったり!? あいや、そのへんはもっと体系的に小説を読むスキルを持った方々にお任せするとしましょう。京都在住で、「季刊メタポゾン」などにも作品を発表している岡倉さん。作品内の「墓読み」という職業から、私は出版・マスコミ業界の気配を感じ取りましたが...まあ、そんな読み方もベタで野暮。そして私は年齢的に、そろそろ読む側より読まれる側のほうが身近に感じられますが、さて私の人生を面白がって読んでくれるような人って...しょんぼり。

そして、岡倉さんの作品を読んでいまして、私は何度か登場する満員電車という言葉に、自分の暗い過去を照らし合わせてしまうのでした。いやあ、あれは私、苦手で...けっこう、かつて勤め人を辞めた最大の理由は「毎日満員電車に乗りたくないから」だったかもしれない。会社の将来性とか社内の人間関係とか、そういうことよりもまず、家から身につけてきた服や靴がいきなりぐっちゃぐっちゃにされて、人の隙間から見える中吊り広告にはほとんど興味ないし...みたいなあの空間にいることが好きじゃなくてねぇ。アホかと言われそうですが、私、会社員の末期、スーツやブレザーの襟が二つに折り返されている部分(首から胸にかけて)が、やけに重たく感じられてウツでした。でっ、もし私が「墓読み」のように周囲の人の人生を読めたら...ちょっと、自分のことで精一杯なので、読む前に途中下車するかもw!

妻とは会話が減ったし、夜の営みなどほとんどない。それにまだある。こう不景気だと年金は大丈夫なのか。貰えたとしても、我々の上の世代よりも金額が少ないのではないかと。これでは働いているのがバカバカしい。自分の墓を読んでもらいたい墓読みは、そのとおりだと相槌を打つが、このあたりの話になると、自分の目的を忘れて話に加わる。最近の墓についての議論が始まる。最近は同じ墓が多くなった。だが、それは墓の形が同じという意味ではなく、読みとる内容、つまり人々の人生が同じなのだと。墓読みとて、波乱万丈の人生を送った墓や、生活は派手ではなかったにしろ深遠な思想を持った墓を読みたい。そういう墓を掘り出しもののように見つけるのが楽しみの一つなのだが、そういう墓はとっくの昔に読まれているか、早い者勝ちでなかなか見つからない。だから、紋切り型の墓ばかりを読むことになる。だが、人々の人生は墓読みではどうすることもできない。この結論に達するとお開きになり、また飲もうと言ってそれぞれの電車に乗る。墓読みは話に満足して、依頼のことなど大抵忘れている。

ウィッチンケア第4号<「墓読み」の生活>(P160〜P163)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/46806261294/4-witchenkare-vol-4-4

Vol.14 Coming! 20240401

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