「音楽同様に多様化し、華々しさのあるブーランジェリーが街を彩る中で、今時珍しく、極めてミニマムスタイルを貫くお店である。」
ウィッチンケアは文芸創作誌と名乗っていまして、実際誌面には小説/評論/エッセイなどの書き下ろし創作文芸が掲載されていますが、しかし各作品のテーマについては特徴というか癖というか偏りというか、みたいなものがありまして...それは発行人の音楽的嗜好が臆面もなく反映されている、という。前号ではPrefab SproutとThe Blue Nileという英国グループについての寄稿を「ぜひこの人に!」とお願いしましたが、今号ではレイ ハラカミについて書いてくださる方をWebであちこちあちこち...そして辿り着いたのが、山田慎さん主宰・sweetmusic内の「レイハラカミさんのCD作品まとめと音楽について思うこと」という一文。読み終えてすぐ、ああ、なんとか山田さんと連絡をとらねば、と思いました。
ここ数年、一番好きなレイ ハラカミのアルバムは「暗やみの色 Colors of the Dark」。とくに「sequence_02」という曲が気に入っていまして、私はなんだかこの艶のあるメロディラインに、仄かに乳製品っぽいエロさを感じているかもしれません。それはまるで小麦粉と微妙にマッチングするバターの香り...そう、ペリカンのロールパンのような...って、ちょっと無茶! レイ・ハラカミの音楽とロールパンの関係については、私の与太話ではなく、ぜひ山田さんの作品をお読みください。そして山田さんはsweetmusic内で、今回の寄稿依頼に至る経緯、また小誌のこれまでの歩みについてもまとめてくださっています。それって本来、私がもっとサクサクやらねばいけないことなのに...ほんとうにありがとうございます。さらに山田さんとお知り合いになったことで、私は最近tofubeatsという新しい音楽にも巡り会ったりして...音楽が縁になり世界が拡がるのって、楽しいですね!
ペリカンのロールパンは小麦粉、砂糖、食塩、バター、イースト、卵、ビタミンCのみを使ったシンプルなパンである。見た目はどっしりと構えているのだが、クラストはロールパン本来の柔らかさがある。掌に触れた表面からは少しだけざらつきを感じ取れる。そのロールパンをゆっくりと噛み締める。丁寧に詰まったクラムを歯で感じ取る。すると小麦の味がしっかりと口に広がり、それがほろっと溶けてゆく。バターの香り、そして静かに広がる甘さ。自然体というか、生活感のある味なのだ。ああ、やはりこれはレイ・ハラカミの音楽とそっくりだと感じた。
レイ・ハラカミのリミックス・ワークである『あさげ』と『ゆうげ』のジャケットを眺める。それらは家族が食べるご飯たちである。特に飾りっ気はないのだが、なんだか家庭的な味がする。白飯が進みそうなおかずもいい。レイ・ハラカミは豪華絢爛な料理よりも味噌汁のある食事が好きだったんだと思える、印象的なアートワークだ。やはり生活と音が並行している。
ウィッチンケア第4号「レイ・ハラカミの音楽とペリカンのロールパン」(P102〜P107)より引用
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Vol.14 Coming! 20240401
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