「僕がこの川崎さんの一番の秘密を誰にもしゃべらなかったことが『霊界対反原発運動の戦い』を複雑にするとは、さすがに気づかなかった。」
昨年は「ザ・ストーン・ローゼズ ロックを変えた1枚のアルバム」「ダンス・ドラッグ・ロックンロール ~誰も知らなかった音楽史~ 」、そして来月には「ダンス・ドラッグ・ロックンロール2 ~“写真で見る"もうひとつの音楽史~」と刊行が続いている久保憲司さん。自身の体験をベースに音楽シーンを解説する文章スタイルが私にはとっても心地好く、とくに昨年出た「ダンス・ドラッグ〜」には、音は好きだけれどどんなポジションにあるのかわからないバンドについても詳しく紹介されていて、とってもおもしろかったです。たとえばStumpとか、私はかなり後追いで聞いて好きになったんですが、久保さん、リアルタイムで「ヘア・スタイルの真似した」とか書いていて、びっくり。〝C85〟っていうムーヴメントがあっただなんて...輸入盤屋であてずっぽう買いしていた人間には、点が線になる箇所が盛りだくさんでした(ちなみにそのスタンプ、この「Buffalo」とかみたいにベースが癖になるバンド)。
さて、そんな久保さんは前号掲載作「僕と川崎さん」に引き続き、今回も川崎さんを主人公にした小説を寄稿してくれました。あいかわらず懐が深いというか、どこか達観しているというか...Twitterなどでもけっこうきわどいこと、発言のさいに勇気のいりそうなことを、クボケンさんはサラリと力強くアウトプットしちゃう印象がありまして、その独特の語感は本作でも同じです。なんというか、ウソかマコトかわからないような登場人物のエピソードが自分語りのような筆致でリズミカルに綴られ、読み進めるといつのまにか抜け出せなくなってしまう...。久保さんによると、この物語はまるっきりのフィクションでもないらしく、さらに、入稿後の数ヶ月に現実と小説がシンクロするような体験も多々あって、とのこと。ってことは、この物語はもっと奇想天外な方向へと続いていくのかな?? ぜひぜひ、継続希望です!
みんな楽しそうだ。松沢さんと川崎さんは昨日から蜂谷さんの家に泊まり込んで、カムジャタンを煮ている。もう36時間以上も煮ている。そして、オナニーやウンコやら反原発やヘサヨや風営法など、いろんな問題について話し合っている。
「中学生か」とツッコミたくなるが、これから調布住宅ではこのような会話が病原菌のように広がっていくのだろう。回覧板を持ってきた元高校教師のおばちゃんなんかも加わり、みんなで団地の回りを掃除する時にもこんなくだらない話をして、それが反原発運動へとつながっていく。調布住宅5万人の住人たちは、このカムジャタンのとんこつの匂いにやられたかのように、革命の闘志を燃やすのだ。そしてここが発火点となり、一度は燃えそうになったが消えてしまったアジサイ革命の火が、また燃え上がるのだ。そのためにも僕たちはカムジャタンを煮続けなければならない。くだらない話をし続けなければならない。そして、毎日の苦役よりも自由を楽しみたい若者たち、月に10万しか稼ぎたくない若者たちを、この調布住宅に入居させていかなければならない。
ウィッチンケア第4号「川崎さんとカムジャタン」(P138〜P143)より引用
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Vol.14 Coming! 20240401
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