2013/05/22

vol.4寄稿者&作品紹介19 小川たまかさん

「僕は痛みを表に出さずに笑ってる人の方が好きだ。出会って数ヵ月の人間に話せる時点で、それ大したことじゃねえよ。」

今号ではぜひ下北沢をテーマにした作品を掲載したかったのでした。でも、ナフタリン臭ツイード肘あてジャケットが似合いそうな男の町散策エッセイ(たとえば「○○にて●●を食す」みたいな文章を書くタイプ/「○○で●●を食べた」でいいじゃんw)は絶対嫌! と思っていて...できれば物語がよいのかなぁ、と。それも自分とは世代の違う方によるものが(私と同世代では本多劇場すらない時代を語りそう)...って、めちゃくちゃ弛緩した文章はここまで。「シモキタウサギ」を寄稿してくれた小川たまかさんは、下北沢駅北口近くの(株)プレスラボに勤務。「下北沢経済新聞」編集長として多忙な毎日を送っています。同新聞読者の私は、小川さんの他媒体への寄稿記事も何度か読んでいまして、ふと、ふだんとは違うスタイル/スタンスで彼女に下北沢を書いてもらったら面白いのではないか、と...。大正解でした!!

「シモキタウサギ」の主人公の女の子に対して、私は意見したくないです、っていうかいまの世の中で「女の子」とか「女子」になにかモノ申すなんて、想像しただけで鳥肌が立ちます。本作内の「僕」は「女の子なんて誰でも傷つきやすくて、誰でもずるい。」と語っていまして、私も陰から「そうだそうだ!!」とか言いたくなるような状況を体験したこと少なくはない...じゃなかった、「女の子」「女子」はいつでもどこでも絶対圧倒的に正しい。私はつねに応援しています。もちろん、その人が私にとって「女の子」「女子」と認識できる場合に限って(これだけが大事!)。...しかし、それにしてもある種の「女子」による「私の話を聞いてほしーの」は、なんとかならんのか!? 人間関係の悩み、とか散々知らない人の悪口聞かされ、でもそのすぐあとにその仲間同士で互助会のようにしれっと褒め合い続けているSNSとか、もう〜、勝手にしやがれw。

有給休暇というものは、休んだ分に応じて消化されていくもので、君はすでに3週間休んでいるし、これまでもしょっちゅう「具合が悪い」とか「伊勢神宮が私を呼んでいます」という理由で会社を休んでいたから、もう残っていないんだよ。そう説明しても良かったがやめた。スタッフの出勤管理を記録に残していなかったし、彼女が休んでいた分の仕事が山積みで、僕たちはそれを片付けなければならなかった。スタッフのひとりが「あの子、○○さんからアシスタントになれって言われてたらしいです」と明かした。○○さんとは、ある出版社の少し有名でそれと同じぐらい評判の悪い編集者だった。

 下北沢の街から若い女の子がひとりいなくなるのなんて、大したことじゃない。駅前食品市場にあるバーで雇われ店長をしていた女の子だって、一番街商店街の古着店で美人と評判だった子だって、ある日突然いなくなった。彼女たちはみんな思ったんだろう。「私を特別な子だとわかってくれる人はここにはいない」と。
 残された者たちは、彼女たちがいなくなった穴を埋めて平地にする。何にもなかったようにすることで彼女たちにわかってほしいのかもしれない。誰にも帰る家はあるし、誰にも帰る家はないと。君が下北沢にいようと思えば、街は君を受け入れる。決めるのは君であって街じゃないし、ましてや誰かでもない。

ウィッチンケア第4号「シモキタウサギ」(P108〜P115)より引用
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Vol.14 Coming! 20240401

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