「そうしているうちに男性店員が私のところにやって来て、救急車をお呼び致しましょうか、と覗きこむように私に言う。」
「水商売、時々、物書き」...というのは、小誌に掲載した橋本浩さんの、プロフィールの一部。なんか、個人の美学を漂わせているフレーズで、私には真似できないや、と脱帽します。「水商売」も目を引くけど「時々」を挟むと「物書き」もぐっと際立つような言葉の並べ方。私は自分のプロフィールに関してはまるきしダメダメなのですが(それを語り出すと長くなるのでやめときますが...)、でも人のプロフィールを読むのはものすごく好きでして...とくに「これってごく普通にとればいいのか? あるいは戦略的なのか?」と立ち止まりたくなるようなのが好きでして。正確には思い出せませんが、某文芸評論家の雑誌プロフィール欄に「デッド・ケネディーズの招聘で...」といったくだりを見つけたときは、これはネタでしょ! と思いましたが真偽は不明。っていうか、この固有名詞で単純に反体制/ハードコアパンクを思い浮かべて某氏と結びつけるから、まんまとしてやられるような(...そもそも招聘したのはジェロ・ブアフラ?)。そして橋本さんの「水商売」についても、じつは私、よく知りません。クラシアンに勤務経験あり、だったらどうしようw。
橋本さんの寄稿作「胸とパスタ」の主人公は困った悶絶男子ですが、しかし、私、この男が胸の中で呟いている「いやらしい」っての、個人に引き寄せるとけっこう共感できました(って、私に共感されてもこの男の“問題”は解決しませんが...)。高校生の頃、隣のクラスの超美人となんとかデートの約束をとりつけまして、原宿のブランコに乗ってお茶をする喫茶店に入りまして、その超美人がトイレにいってしばらく戻ってこなかったとき、なんかのはずみで妄想のスイッチが入ってしまい、ブランコで待つ私は考え得るすべての可能性で頭が膨張し、軽く痙攣しながら冷や汗を掻いていたという...単純に、女性には身だしなみに時間がかかる場合がある ということを理解していなかっただけなのだと思うのですが、あっ、でも次のデートはなかったですね。...そして、小誌掲載をきっかけに、橋本さんの創作活動がより自由で幅広いもになればいいな、と私は思っています〜。
私は微笑んでいる女の顔をひとしきり見る。女の口はもう動いていない。女が完全に咀嚼を終えているのを確認すると、私は視線を口から首、そして胸元へと移動させる。口腔内の咀嚼により唾液と混ぜ合わされ、細かく、そして柔らかくなった一塊のパスタが、食道を伝いそろそろ胃の内部に到着する頃合い。それは女の左乳房の少し下あたり、目視で正確にステーキだと確認できる肉塊の上に蓄積されている。ステーキが胃で消化されるまでに費やされる時間は約四時間。ステーキを食べ終えてから二時間も経てばそれは原形を留めていないはず。つまり女がステーキを食べ終えてから経過した時間は少なくとも二時間以内。いやらしい、と私は胸の中で呟く。なんていやらしい。
ウィッチンケア第4号「胸とパスタ」(P156〜P159)より引用
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Vol.14 Coming! 20240401
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