書き下ろしの新刊「21世紀アメリカの喜劇人」が出たばかりの長谷川町蔵さん。寄稿作「ビッグマックの形をした、とびきり素敵なマクドナルド」で、マサキくんはそう発言し、主人公である「あたし」を困惑させます。なぜ「あたし」が困ったのかは、ぜひ本編でお確かめください(ネタバレしませんともw!)。初めて長谷川さんと会った昨年の秋。じつは私、「文化系のためのヒップホップ入門」を読んで勝手に「どんなヒップホッピーな風貌のガイが現れても驚かないぞ」と覚悟してたんですが(恥!)...実際の長谷川さんは、私の「これまで商業媒体に書いたことがないような作品を」という無茶なお願いに面白味を感じてくださる、まさにナイスガイでした。
マクドナルド...。高校生の頃、2人で007の映画を観た女の子と、新宿の歩行者天国でビッグマックを立ち食いした記憶があります。お洒落してきてたせいかとても食べにくそうで、次のデートはなかったですね。でっ、最近は滅多に食べませんが、食べると一食抜いてもいいかな、という胃もたれ。でも、本格的なアメリカンスタイルのハンバーガーを食べると、二食抜いてもいいかな、というさらなる...。なんだか最近の外食は「なにを食べたいか」ではなく「なにを食べなければ我が身を守れるか」になってないか、自分。
だから今、あたしは銀座三越に来ている。学校が春休みだからマサキも一緒だ。マサキは生涯初銀座のはずだ。田園都市線は平日の昼間でもすごく混むので、マサキは鷺沼あたりからずっとグズっていて、ここまで来るのもひと苦労だった。でも今回の体験をきっかけに銀座が素敵な街であることを知るだろう。そうなれば、来たるべき対ダンナの〝豊洲住み替えバトル〟の第2ラウンドで大きな戦力になる。
最初に向かったのは、みのる食堂だった。9階とは思えない豊かなグリーンに囲まれたテラス越しに有機野菜で作られたキッズメニューを食べる。銀座に親子で来たからこそ味わえるイベントだと思った。
でもいざ行ってみると気が引けてしまった。店の中にいるのは、生成りやダンガリー色のシャツドレスに身を包んで、渡辺満里奈的なこざっぱり感を漂わせていたママさんたちと、シンプルだけど上質そうな服を着た子どもたちばかり。きっとみんな豊洲に住んでいるんだ。キャナリーゼとその子どもたち。入り口にズラっと停車したバガブーのベビーカーの大群が、あたしの豊洲上陸を阻むテトラポットのように見えた。あたしはいつか豊洲に住む。でも今はまだその時じゃない。
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