「しかし、『おせちはやはりツマミであった』と、三十歳を過ぎた頃から考えをあらたにした。」
ウィッチンケア第4号に「酒のツマミとしての音楽考」を寄稿してくれた「生活考察」主宰者・辻本力さん。同誌と小誌は、創刊日が2010年4月1日と一緒(昨年は西荻BMさんのご厚意でイベントも開催)。といっても、創刊号からすでにスタイルを確立していた「生活考察」に比べると、小誌は「歩きながら考える」というか「いきあたりばったり」というか。とにかく、<「生活」の面白さを前面に出したインディペンデント・マガジンの魅力を探る──(後略)>という辻本さんのインタビューを読むと、前キャリアから継続して自身の中に揺るがぬ「つくりたい本」があったのだとわかります。最新号(Vol.04)でもまったくぶれず、コンテンツはさらに深化。ほんとうにすごいと思います。今後は「生活系編集者」と名乗る辻本さんの活躍分野が、どのように広がっていくのかも楽しみ!
さて、私は書き手・辻本力さんの作品を読むことも長らく好きなのでした。「ああ、けっきょく発行人のこのような思考回路にシンクロした人がエッセイを寄稿するのか」と思えるほど、「“ある種の”ライフスタイルマガジン」という、「生活考察」に冠されたよくわからない惹句(失礼/褒め言葉!)を実感できる内容だからです。...そして、好きな書き手にはまず寄稿依頼する私は辻本さんに書き下ろしをお願いしまして、いかにも「生活考察」さんらしい新作が掲載できたこと嬉しい限りです。ある意味でセッションというかアウエイというか、辻本さん、自分の雑誌でよりはリラックスして書いてくださったのでしょうか? 「おせちは持久戦向きのツマミ」と開眼するに至るあたりの、なぜそこまで考察したいのか、という畳み掛けるような展開(私にとってツボ!)...それが良い方向に出て新たな読者が辻本さんや「生活考察」に興味を持つきっかけとなれば、発行人として本望です!
ドゥーム・メタルというのは、ヘヴィメタルにおけるサブジャンルのひとつで、doomという単語が「終末」「破滅」を意味することからも想像がつくように、極めて暗い音楽だ。まあ、このジャンルのなかにもさまざまなスタイルがあるため、一括りにするのは難しいのだが、ざっくりといえば、「暗い」だけでなく、「極端に遅い」「極端に重い」という特徴が挙げられる。場合によっては、アーティストやそのアルバムにもよるが、さらに一曲一曲が「長い」という要素も加わる。暗い・遅い・重い・なんだか長い……これが人間だったら、積極的に友達になりたいタイプではないだろう。しかし、酒の友としてはなかなか付き合えるヤツなのだ。ここ半年ほど頻繁にドゥーム・メタルとの酒の席をもったことで確信した。
ドゥーム氏との飲みは、仕事帰りに立ち飲み屋で一杯、みたいなものにはならない。腰を据えて、本格的に飲むことになる。長っ尻になる。そのへんは覚悟して臨まなければならない。酒も強いものが望ましい。ビールをチェイサーにウィスキーくらいはいきたい。そして、向こうのペースで、ズブズブと沈み込むように飲むのである。
ちなみに、ドゥーム氏には、とにかく同じ話を繰り返す、という酔っ払いの典型みたいな酒癖がある。その傾向は、スリープというバンドの『Dopesmoker』というアルバムを聴くとよく分かる。収録曲は一曲のみ、驚異の六十三分一本勝負。しかも全編にわたって同じようなリフが延々繰り返され(歌詞はハッパがらみ)、いつ終わるとも知れない。
ウィッチンケア第4号「酒のツマミとしての音楽考」(P076〜P081)より引用
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Vol.14 Coming! 20240401
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