現在、東京・広尾のEMON PHOTO GALLERYにて個展「On Labor」を開催中(6/27まで)の吉田亮人さん。5/27のライター・石井ゆかりさん(星占いの!)とのトークショーは告知即満席で大盛況、そして、4/15~5/14に開催されたKYOTO GRAPHIE(京都国際写真祭) 2017で発表された「Falling Leaves」は、メディアでも大きな反響を呼びました(「祖母と生き、23歳で死を選んだ孫。二人を撮った写真家は思う」〜BuzzFeedNEWS)。同展で吉田さんと対談した作家・いしいしんじさんの日記には<吉田亮人さんの作品には、どんなものでも早めに触れておいたほうがよいです(4/22日付)>という一節があり...じつは《note版ウィッチンケア文庫》では3/18より小誌初登場となった「始まりの旅」を掲載させていただいておりますが、そのアクセス数も急増中でして、ビッグ・ウェーヴの予感がひしひしと伝わってきていました。
そんな吉田さんですが、3月に送ってくださった今号掲載作では、少しぼやいていました。写真集のための持ち込みで出版社をまわり、ある人から<今が80年代だったら吉田君、出版社からたくさん写真集を出せただろうし、取材の予算も組んでもらえただろうね>と言われ、<この時代に写真家になったことを呪え、と言わんばかりの編集者の言葉はショック>だったと...。私はその80年代末に出版業界に紛れ込んだ人間なので、吉田さんの気持ちもわかる、でも、編集者の言葉も...〝編集者個人の裁量ではいかんともしがたい状況〟であることはわかる。。。
あっ、もちろん今作での「ぼやき」は「前フリ」のようなもの。上記の逸話を受けて、吉田さんは「それなら自分でやる」と一念発起(1人出版者の私は甚く共感!)。友人で装丁家の矢萩多聞さんとともに、自費出版の写真集づくりに着手します。手縫い製本の初作品集「Brick Yard」のメイキング・ストーリー...本製作の過程でいろいろな人に出会い、アイデアが別のアイデアを生み、そのたいへんさと楽しさが、飾らない言葉で語られています。
「Brick Yard」で身につけたノウハウを発展させ、2人はさらに大胆な次の写真集づくりへと。バングラデシュの皮なめし工場の労働者を2年間に渡って撮影した「Tannery」の表紙(ブックケース)には、なんと現地の皮が使われているのです。撮影ではなく、皮の買い付けと加工依頼のためにバングラディッシュを再訪した吉田さん...この続きは、ぜひ小誌を手にとってお楽しみください(そして、2冊の写真集づくりを通じて実感した<いい写真集、とは一体なんだろう>という、吉田さんなりの問いかけにも...刮目!)。
編集構成、表紙デザイン、タイトルフォント、紙選び、全てが僕にとって初めてのことだったが、多聞さんの豊富な知識と経験に助けられながら二人三脚で何とか仕上げ、印刷所に入稿することができた。ここまでに予算の大半を投入し、もうほとんど使えるお金など残っていないという時に問題が起きた。
「吉田さん、製本をどうしましょう。業者に頼んでやってもらうと、かなりの予算オーバーになっちゃうんだよねえ」
多聞さんが申し訳なさそうに言いながらこう続けた。
「それで僕考えたんだけど、製本は自分達でやらない? 手縫いで」
手縫い? 手縫いって言ったって、200部もあるそれを2人でやるなんて、あまりにも気の遠くなる作業だ。しかし予算のない僕に残された選択肢は、それ以外にはないも同然だった。
「2人でやるのは現実的じゃないから、製本やってくれる有志のボランティアを集めてやろうよ」
僕の心を見抜いてか、多聞さんが言った。
「やりましょう」
ウィッチンケア第8号「写真集を作ること」(P182〜P187)より引用
https://goo.gl/kzPJpT
吉田亮人さん小誌バックナンバー掲載作品
「始まりの旅」(第5号&《note版ウィッチンケア文庫》)/「写真で食っていくということ」(第6号)/「写真家の存在」(第7号)
http://amzn.to/1BeVT7Y
Vol.14 Coming! 20240401
- yoichijerry
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