今年2月に初の著書「しゃにむに写真家」(亜紀書房)を上梓した吉田亮人さん。京都を活動拠点にする吉田さんとは、2017年夏の「リマインダーズ・フォトグラフィー・ストロングホールド」(墨田区向島)での個展以来、なかなかお目にかかる機会もないままでした。しかし小誌今号が完成した3月20日過ぎ、営業でマルジナリア書店(府中市分倍河原)に伺ったさい、小林えみさんを介して生活綴方(横浜市港北区妙蓮寺)の中岡祐介さんと知り合い、さらに中岡さんから「当店で27日から『しゃにむに写真家』刊行記念展をやります。吉田さんのトークショーもありますよ」と教えていただき、これはなんとか時間を都合つけて、ということ26日の午後、展示設営中の吉田さんを訪ねたのでありました。短い時間でしたが、ご寄稿の御礼、そしてサイン入りの「しゃにむに写真家」も入手できてよかった!
小誌今号への寄稿作〈対象〉では、このコロナ禍──とくに最初の緊急事態宣言が発令されてからの数ヶ月──を写真家である吉田さんがいかに過ごしていたか、率直に語られています。「普段、人物にフォーカスしたドキュメンタリー作品を国内外様々な場所に出かけて撮ったり、写真展を行ったり、人物撮影の依頼を多く受けている僕」「これら全ての活動が新型コロナウイルスによって著しい制限を受け」...ホントにきつかっただろうと思います。じつは今回、寄稿依頼のさいに敢えて「ディスタンス」という言葉を出して原稿をお願いしてみました。こんな状況下、写真家にとっての「被写体との距離」について、あらためて考察してみませんか、と。届いたのは、吉田さんが1歳の娘さんとの交流を経て再発見した、「見る」ことの大切さについての一篇。
「小さな靴を履かせ、春の匂いが充満する誰もいない町内を娘と手を繋いで近くの神社まで行くのだが、その途中娘はありとあらゆるものに興味を示しては立ち止まるのだ」...そんな娘さんの仕草に合わせた吉田さんの目に映ったものとは? とても美しい描写なので、ぜひ小誌を手にってお楽しみいただければ幸いです。
写真というものが発明されてから連綿と続く撮影方法というのは、撮影者と対象者・対象物との対面と対峙によって行われてきた。僕もその基本に則りながらこれまで撮影行為をしてきた。
しかし写真が持つそのような特性によって、撮影自体がしにくくなっている今、写真家が考えるべきことは一体なんだろう。
対象者や対象物との具体的で実際的な関わりから一歩も二歩も引き離された状態から、僕たちは対象とこれからどう向き合い、深化させていけばいいのだろうかなんてことをボンヤリと夢想していた。
〜ウィッチンケア第11号〈対象〉(P174〜P177)より引用〜
吉田亮人さん小誌バックナンバー掲載作品:〈始まりの旅〉(第5号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈写真で食っていくということ〉(第6号)/〈写真家の存在〉(第7号)/〈写真集を作ること〉(第8号)/〈荒木さんのこと〉(第9号)/〈カメラと眼〉(第10号)
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