2021/05/24

volume 11寄稿者&作品紹介29ふくだりょうこさん

ふくだりょうこさんは今月開催された第三十二回文学フリマ東京にも「ものくろからふる」として出展されていたようで...いやあ、「一回休み」後のウィッチンケアなんて、まさにしっかり準備して臨むべきイベント、だとは思っていたのですが、正直、開催できないかなと思ってた。ここ数日の世間の風向きだと、どうやらオリンピックも「あり」で動いているようにも感じられて、ふくださん、さぞかし準備などたいへんだったことでしょう(祝!! 『文芸誌Sugomori vol.1』発刊)。...そんなふくださんの小誌今号への寄稿作〈知りたがりの恋人〉は、語り手である「俺」の恋人の、「最近思うんですけどね」というひとことから始まります。適当にあしらったりするとたいへんなことになる、と過去の経験から知っている「俺」は、スマホをテーブルに置いて恋人の言葉に耳を傾けると...。

物騒な話題が続きます。「人を殺すってとんでもない愛を感じますよね」「相手を殺してから自分も自殺をするという話をも聞きます。それは、殺すことで相手を独占し、あの世で一緒になりたいという欲求では? あの世があるかは知りませんが」...「俺」、まあ、耳を傾けてはいるんですが、なぜ恋人がこんなダウナーな話を続けているのか、ピンきてはいない様子。あくまでも世間話という認識で、「自分のものにならないから殺すってすごくエゴじゃないか? というか、ワガママ?」とか、持論を展開しちゃったりして(その根拠レスな自信はどこからきているのか?)。 おー、フラグ立ってる! このままで終わるとは思えない...と、読んでいるこっちまで不安になってきたタイミングで、でも恋人は意外な言葉を口にします。そこからの怒濤の展開...おっと、これ以上は、読んでみてのお楽しみ。

後半の流れは恋愛小説というより、ちょっとホラーっぽかったりもして。この一篇はタイトルも含めて、あくまでも「俺」目線なんですよね。ふくださんならきっと「恋人目線」でも、同じ物語を成立させられそうで、その場合はおそらく探偵小説っぽくなったりするのかもしれないなと思いました。



一度、スマホをいじりながら適当に相槌を打っていたら、その後一週間、口をきいてくれなかったし、メッセージも返してくれなかった。確か、「自分で作るサンドウィッチに入れるのは両面焼いた目玉焼きがいい。カットしたときに切り口が美しいから」という話だったと思う。あのときは参った。同じ学科の恋人。授業を受けているときの横顔が美しくて、どうしても欲しくなって、俺から告白した。何度もフラれたけれど、一年口説き続けた。大学二年の夏から付き合い始めてもうすぐ半年。その中で学んだ教訓だ。

〜ウィッチンケア第11号〈知りたがりの恋人〉(P178〜P183)より引用〜

ふくだりょうこさん小誌バックナンバー掲載作品:〈舌を溶かす〉(第10号)

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Vol.14 Coming! 20240401

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