前号での寄稿者&寄稿作品紹介。私は東間嶺さんについて『小誌第9号で東間さんを紹介したさいに「いつもリアルタイムな現実に沿った小説作品を寄稿」する人、みたいなことを書きましたが、』と書きましたが、そのスタイルは小誌の「一回休み」を経た2021年の寄稿作でも不変。ちょっと嬉しかったのは、前々寄稿作〈セイギのセイギのセイギのあなたは。〉に登場したサイトウマナミ〜次作でのカナ、の流れが今号への寄稿作〈パーフェクト・インファクション──咳をしたら一人〉でも引き継がれている感じ...なんか、「地球星人カナ」として、連作内で〝成長〟(←この言葉はポリコレ的にOKなのか?)していることでした。そうだ、私は最近までYouTuberの動画を見たこと、ほとんどなかったのですが、先月朝日新聞で須藤靖さんが「のけぞってしまった」と紹介していた酒村ゆっけ、を書評に釣られて見にいってほんとにのけぞりまして(さらにその動画の BGMが群馬電機株式会社の「呼び込み君」のNo.4だという雑学も某所で身につけて)、そのとき東間さんの作品にあらためてリアリティを感じたこと、告白しておきます。
今作の前半で描かれている、渋谷のダイニングバーの風景(私が最後に渋谷で酒を飲んだのは去年の2月だったかも)。かなりダウナーな描写が続きます。「得体の知れない」コロナのせいで誰もが疑心暗鬼になってるという雰囲気で、いまよりもギスギスした状況っぽい。対して、カナが語り部となる後半は「感染」をキーワードにした観念的な内容っぽく。「わたしは、おかしくなっているのだろうか?」...ちょっと、このへんはもう少し拡げた感じの東間さんの続編(!?)を待ちたい気分です。
あっ、そうだ。東間さんがEn-Sophのブログで予告していた〝『パーフェクト~』は対として構想されていて、〈乗客〉の側から画面のむこうの〈乞食〉に投げかけられる視線を扱った『ビューティフル・ビューティフル・ビューティフル・マンデイ』〟は、もう完成している? カナさんの人物設定が魅力的なので、一連の作品の、さらなるのけぞりそうな展開を期待したいと思います。
地球星人のリスナーたちから次々にコメントが入る。数年前に「脱サラ」したあと引きこもり系You Tuberの人気者「地球星人カナ」として生計をたてるわたしは、月に何度か「視察」という設定で外から配信をしていたのだけど、新型コロナウイルスが首都圏に蔓延するようになってからはその頻度も大きく減っていて、この日は数か月ぶりの外配信だった。地球星人なら、危険を冒してでも緊急事態宣言下の地球を偵察しないわけにはいかない。ちなみに「地球星人」とは、学生の頃から読んでいた村田沙耶香の近作から借りた言葉で、わたしが中学生のとき小倉優子が「コリン星人」と名乗って芸能界で注目を集めていた手法から思いついたものだ。
〜ウィッチンケア第11号〈パーフェクト・インファクション──咳をしたら一人〉(P146〜P150)より引用〜
東間嶺さん小誌バックナンバー掲載作品:〈《辺境》の記憶〉(第5号)/〈ウィー・アー・ピーピング〉(第6号)/〈死んでいないわたしは(が)今日も他人〉(第7号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈生きてるだけのあなたは無理〉(第8号)/〈セイギのセイギのセイギのあなたは。〉(第9号)/〈パーフェクト・パーフェクト・パーフェクト・エブリデイ〉(第10号)
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